Webで売るために――企業が理解すべき4つの購買ステップ:WebPRの仕掛け方(2/2 ページ)
WebPRは、マスメディアなどの第三者を介して戦略的に情報を伝える手法だ。今回は、Web上での情報波及のメカニズムと、企業がWebPRで成功するための4つのステップを紹介する。
購買ステップに沿った戦略作り
第1回目の記事では、インターネットを軸としたプロモーション活動「WebPR」が、企業の新たな広告・販売促進の手法として台頭していることを説明した。ここまでの説明で勘違いをしていただきたくないのは、WebPRはインターネットにおける情報の波及構造を生かして、ただやみくもに商品やサービスの認知を広めることではないということだ。消費者の心理や行動に沿って、適切なターゲットに、適切なタイミングで、適切なメッセージを発信することである。
これを実現するに当たり、消費者の購買行動のプロセスを理解しておくことは必須だ。Web上で消費者が商品を購買するまでの過程を「購買プロセス」と呼び、これは「気付く」「分かる」「比べる」「買う」という4つのステップに分類できる。各ステップ「Desire(喚起)」「Recognition(認識)」「Comparison(比較)」「Action(行動)」の頭文字を取って、「DRCA(ドルカ)モデル」と呼ぶこともある。このステップについて、WebPRを仕掛ける企業側の視点で簡単に説明しよう。
購買ステップ1:「気づく」
消費者の需要を喚起するプロセス。商品そのものを訴求する前に、市場の需要や消費者の生活スタイルを掘り起こし、商品を買ってもらうための土壌を作る。WebPRの初期に考えておくべき工程だ。
購買ステップ2:「わかる」
商品単体の認知と理解を促すプロセス。「気づく」のステップで市場を啓蒙(けいもう)しても、企業の商品に対する消費者の自体に関心が高まらなくては意味がない。そのために企業は、商品の特徴を伝達し、商品自体の興味を喚起する必要がある。
購買ステップ3:「比べる」
他商品と比べて、自社商品の優位性を訴求するプロセス。消費者は商品の特徴を理解した後に(ステップ2)、ほかの商品を見て、比較する。この際に企業は、消費者の購入の判断軸を把握し、それに沿って商品が持つ優位点をメッセージとして確実に届ける工夫が求められる。
購買ステップ4:「買う」
購入を促すプロセス。消費者が商品の特徴を理解し(ステップ2)、ほかの商品と比較して優位性があると認識しても(ステップ3)、すぐに購買行動に移るわけではない。企業は「今、買わなくてはいけない」「今、買うと良いことがある」など、消費者が思わず商品を買いたくなる状況を作り、そのメッセージを適切に伝えていかなければならない。
WebPRの実践に当たり重要なことは、このステップに沿って消費者の態度を変容させることだ。商品を買いたいと思っていない人に、「今、買わなくてはいけない」というメッセージを伝えても、それではまったく意味がない。
WebPRを成功させるためには、商品を届ける対象となる消費者の視点になって、「気付く」から「買う」までのストーリーを設計する必要がある。やみくもに商品の魅力を押し出そうとするのではなく、メディアを通じた情報発信で消費者を啓蒙(けいもう)しながら、適切な順序を踏んでアプローチしていく必要がある。
次回はこの購買プロセスを踏まえた「WebPRの戦略設計」について説明したい。
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著者プロフィール:太田滋(おおた しげる)
ビルコム 代表取締役兼CEO。PRの戦略構築から企画実行までを手掛けるPR会社としてビルコムを2003年に設立。2008年にはWebPR関連のサービスを提供しており、相模ゴム工業のWebキャンペーン「LOVEDISTANCE」なども仕掛けた。著作にはWebPRの実践手法をまとめた書籍「WebPRのしかけ方」がある。
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