HP vs. Cisco――対極的なデータセンター戦略(3/3 ページ)
ワンストップショップを目指すHPとパートナーとの提携による総合的なサービスの提供をうたうCiscoが、クラウドコンピューティング市場争奪戦を開始した。
HPは、強敵IBMと同様、プランニング、設計、アーキテクチャ関連サービスなど、顧客がデータセンターを数カ月で立ち上げるのに必要なものは、基本的にすべて提供できると考えている。HPの製品カタログの厚さを見れば、その点に異論を差し挟む余地はなさそうだ。
HPでは、汎用的なデータセンター構築技術を社内でひそかに培ってきた。これには、2008年に139億ドルでElectronic Data Systemsを買収したことや、米国市場で第2位のデータセンター設計・構築メーカーであるEYP Mission Critical Facilitiesを獲得したことが大きく貢献した。
これらの企業買収は、HPの統合データセンター戦略およびそれに基づく製品とサービスという成果をもたらした。サーバ、ストレージ、さらにはネットワーキングの各分野における同社の高い市場シェアは揺らぎそうにない。同社はこれらすべての分野において、全世界で忠誠心の高い顧客を抱えている。
HPのエンタープライズサーバ&ネットワーキング部門のデビッド・ドナテリ執行副社長は米eWEEKの取材で「これらすべての技術分野でIP(知的財産)を持っているのは当社だけだ」と語った。「提携を通じて統合アーキテクチャを実現することはできない。自力でゼロから作り上げていかねばならないのだ」
米Yankee Groupのデータセンターアナリスト、ズース・ケラバラ氏は、向こう数カ月および数年の需要動向を見極めるために市場を調査している。同氏はCiscoとHPのどちらのアプローチも優れているとしながらも、Ciscoのアプローチの方が多くの関心を集める可能性があると考えている。
「われわれの調査では、57%のITマネジャーが社内クラウド(プライベートクラウド)を好んでおり、31%がハイブリッドモデルを好んでいることが分かった。しかし今日市場に出回っているソリューションのほとんどはパブリッククラウドであり、これに対する企業の需要ははるかに少ない」とケラバラ氏は指摘する。
「理屈の上では、クラウドコンピューティングはエンタープライズコンピューティングを簡素化するはずだが、クラウドに至る道は複雑さに満ちており、企業は移行計画を策定したり、ベストプラクティスを学んだりする必要がある。クラウドコンピューティングに関心がある顧客にとって、Acadiaを柱とするVCE(VMware-Cisco-EMC)連合は、望ましいクラウドモデルに進化するための素晴らしい手段を提供すると同時に、配備にかかわるリスクを最小限にするものだ」(同氏)
Acadia設立は、一部のCisco UCSパートナーにとってうれしくないニュースだったに違いない。11月3日の発表では、Microsoft、Accenture、BMC Software、NetAppの名前が挙がることもなかった。
BMCは、Cisco UCS用およびVblockベンチャー企業のAcadia向けのすべてのデータセンター管理ソフトウェアを供給している。トゥッチ氏は11月3日の発表で、主要なソフトウェアを提供しているのはEMCだと語って人々を驚かせたが、実際には、EMCはBMCのソフトウェアのライセンスを受けているのだ。
NetAppがAcadiaの設立で蚊帳の外に置かれたのは、長年にわたる宿敵EMCの存在のせいだ。EMCが事業に参加できた背景には、自社のストレージ技術とVMware部門、そして前述の人脈がある。
NetAppのジェイ・キッド最高マーケティング責任者は、この合弁事業に対する同社の見解を素っ気なく述べている。「この発表は、EMCのインストールベースにUCSサーバを売り込むことを狙ったCiscoの巧妙な作戦だとみている」とキッド氏はeWEEKへの電子メールに記している。
「この発表は、仮想化されたダイナミックデータセンターに移行する企業が増えているという当社の現状認識を裏付けるものでもある。NetAppは、CiscoおよびVMwareとの緊密な提携を通じて、企業ユーザーがこの移行を実現するのを支援する取り組みの最前線に立ってきた。VMwareとの提携では、T-Systems、BT、Sprintといった顧客の大規模データセンターを仮想化し、数社のインテグレーションパートナーと共同でこれらのアーキテクチャを拡張してCisco UCSサーバを組み込んだ」とキッド氏は語る。
「仮想化されたデータセンターに移行する顧客が求めているのは、閉鎖的な連合ではなくオープンな提携だ」(同氏)
この話題については、今後もたくさんのニュースが入ってくるのは間違いない。
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