全業務システムをAzureで刷新――“フルクラウド”で改革に挑む国士舘大:クラウド最前線(2/2 ページ)
国士舘大学は、全業務システムをWindows Azure Platformを使って刷新。また、クラウドを活用した学生向けサービスなども提供するという。プロジェクトを主導した同大学附属図書館の植田事務部長に、取り組みの背景と今後について聞く。
学生・教員・卒業生向け新サービスも
クラウド化が解決した問題はコスト面だけにとどまらない。学生の“多様化”が進む現代において、さまざまな学生に対応するための情報活用基盤の整備が求められていたと植田事務部長は話す。
「例えば退学者を減らしたいという思いがあった。今の時代、学生の管理をしっかりすることが求められている。しっかり学んでもらうためにも、自律的な学習を促進する情報活用システムを作る必要があった」(植田事務部長)
そこで国士舘大がWindows Azureを活用して開発したのが、学内ポータル/SNS「kaede-i」や「パーソナルリポジトリ」などの新サービスだ。
kaede-iは、学生同士で授業受講者やサークル仲間などのグループを作ったり、個人の成績を確認したり、過去の就職実績や大学に届いている求人情報を閲覧したりできるポータルサイト。同大学の学生と教員はPCやスマートフォン、タブレット端末などからアクセスして利用でき、音声・テキストを利用したチャット機能なども使える。
パーソナルリポジトリは、さまざまな種類のファイルをWeb上の個人スペースに保存し、検索できる一種のオンラインストレージだ。学生や教員は同サービスを使えば、自分用のスペースにファイルを無制限にアップロードし、いつでもダウンロードできるようになるという。他のユーザーがアップロードした公開ファイルを検索してダウンロードすることも可能で、例えば教員がアップロードしたeラーニング用ファイルを学生がダウンロードして使う――といったこともできる。
将来的には、同大学の卒業生向けにも従量課金制でパーソナルリポジトリを提供していく予定という。これにより「学生は図書館を背負って卒業できるようになる」と植田事務部長は自信を見せる。
クラウド化は改革に向けた第一歩
少子高齢化が確実に進む日本。中でも大きな打撃を受けているのが、大学をはじめとする教育機関だ。40年後には国内の18歳人口が現在のおよそ半分になると言われており、いざ学生数が激減した際にどのように経営を継続するかが国士舘大でも課題になっているという。
「少なくとも10年後には、例えば学部の統合によって教職員の削減などにも着手する必要があるだろう」と植田事務部長。だがこうした組織改編を見込む上でも、従来のバラバラだった業務システムが大きな壁になっていたという。そこで今回、同大学は業務システムのクラウド化によって管理体制を一元化することで、改革に向けた第一歩を踏み出したというわけだ。
しばしば信頼性が疑問視されるクラウドサービスのセキュリティに関しては、植田部長は「クライアントサーバ方式よりもクラウド向けデータセンターのほうが、物理的にははるかに高度なセキュリティ対策を施している」とし、「心配する向きもあるが、リスクを恐れて使わないことには何も変わらない。セキュリティとクラウドは別次元の話として議論すべき」と話す。
また同大学は今後、パーソナルリポジトリをはじめとする新サービスを、他大学に展開していく計画もあるという。
「若年層人口の減少によって学習レベルや研究レベルが下がってきている中、今後は教育の“高度化”にどうチャレンジするかがテーマ。今はクラウド化の時代なので、国士舘のような小規模な大学でもこれだけ大規模なことができる。われわれは先駆者として引き続き先進的な取り組みを続けていく責任があるが、単独では限界があるので、今後は他の大学とのつながりを深めながら一緒にやっていきたいと考えている」(植田事務部長)
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