メディア

「芥川賞受賞作品」おすすめ5選 第167回受賞作『おいしいごはんが食べられますように』を含む、歴代の受賞作をピックアップ!【2022年最新版】

» 2022年07月27日 13時58分 公開
[Fav-Log]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 7月20日、第167回芥川賞受賞作が発表され、受賞作は高瀬隼子氏の『おいしいごはんが食べられますように』に決定。今回の2022年上半期の芥川賞は、受賞作も含めた候補のすべてが女性作家の作品となっており、これは約90年の歴史を誇る芥川賞においても初めてのことで、大変話題になっています。

「芥川賞受賞作品」おすすめ5選 第167回受賞作『おいしいごはんが食べられますように』を含む、歴代の受賞作をピックアップ!【2022年最新版】 高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』(講談社)(出典:Amazon

 今回は、そんな話題沸騰中である芥川賞の最新受賞作や、歴代受賞作のおすすめ作品をピックアップしました。基本的に、芥川賞に選出されるのは純文学のジャンルに該当するもので、かつ芸術性に優れているものとなっています。

 この機会に純文学を手に取り、その卓越した表現や人間の真理に迫るような描写に酔いしれたり考えを深めたりしながら、文学の世界に浸ってみてはいかがでしょうか?

芥川賞受賞作品:高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』(講談社)

 第167回芥川賞受賞作。作者の高瀬隼子氏は2019年に『犬のかたちをしているもの』でデビューを果たし、2021年『水たまりで息をする』で初の芥川賞候補作に選出され、今回2度目の選出で芥川賞を受賞しました。

 本作は食や仕事、恋愛をテーマにして描かれた物語となっています。話し言葉に近い文体で書かれており、比較的読みやすいのが特徴の1つ。初めて純文学に触れるという人にもおすすめの1作です。

『おいしいごはんが食べられますように』 高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』(講談社)(出典:Amazon

 物語はラベル・パッケージ会社の支店で働く二谷、芦川、押尾の3人の人間関係を中心に展開していきます。あらゆることをそつなくこなし、正解を選択し続ける二谷。心身ともに繊細で早退や欠勤が多いものの、皆から大切にされている芦川。そして、そんな繁忙期でも残業しないことを許されている芦川を良く思っていない、仕事ができる押尾。

 そんな3人の関係が押尾の「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」という提案から変化することになり……。職場の中で多くの人が感じる、合わない人に対するイラつきや理不尽さなど、ままならない人間関係を表現した1作です。

芥川賞受賞作品:宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)

 第164回芥川賞受賞作。作者の宇佐見りん氏は、第57回文藝賞受賞のデビュー作『かか』にて史上最年少で三島由紀夫賞を受賞し、第2作の本作にて史上3番目の異例の若さ(21歳)で芥川賞を受賞した、新進気鋭の作家として知られています。

 本作『推し、燃ゆ』では、生きづらさを抱えている高校生・あかりが、推しのアイドルを応援し、追いかけ、解釈する姿が描かれています。現代の若者が心血を注ぐ推し活と、その裏にある現実との相いれなさを、若手作家ならではの視点で表現した1作となっています。

『推し、燃ゆ』 宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)(出典:Amazon

 何かとうまくいかない日々を送っているあかりは、推しのアイドル・上野真幸の活動を追いかけることにエネルギーを注いでいました。そんなある日、「推しがファンを殴った」というあかりにとって衝撃のニュースが出回り、推しが炎上してしまう事態に……

 作中には、誰かを追いかけることの魅力や、推しを失うことの辛さなど、推しているものがある人には刺さる内容が、そこかしこに散りばめられています。一度でも推し活をしたことがあるなら、共感すること間違いなしの1作です。

芥川賞受賞作品:羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』(文春文庫)

 第153回芥川賞受賞作。作者の羽田圭介氏は、明治大学付属明治高等学校在外中に『黒冷水』で文藝賞を受賞しデビューを果たした、いわゆる早熟の天才です。

 『走ル』『ミート・ザ・ビート』『メタモルフォシス』で芥川賞候補に選出され、2015年に本作で芥川賞を受賞。小説家として活躍する傍ら、旅番組やバラエティー番組などにも出演し、その独特なキャラクターで人気を集めている作家でもあります。

『スクラップ・アンド・ビルド』 羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』(文春文庫)(出典:Amazon

 本作では、誰にでも訪れる可能性のある「介護」という身近な社会問題にスポットライトが当てられています。28歳無職の青年・健斗が、「早う死にたか」と毎日のようにぼやく祖父を介護しながら、1つの計画を思いつくという物語です。

 年を重ね体が衰えていく中で、死にたくても生きてしまうことの辛さ、それを支える家族との関係などが丁寧に描かれています。先の見えない苦しみとどう向き合うのか、考えさせられる1作です。

芥川賞受賞作品:又吉直樹『火花』(文春文庫)

 第153回芥川賞受賞作。作者は吉本興業のお笑い芸人として、ピースというコンビとして有名で、バラエティー番組を含め多方面で活躍している人物。2015年に芥川賞を受賞すると、それ以降も『劇場』『人間』などの文学性の高い作品を次々と発表しています。

 本作『火花』は発表されるや否や大きな注目を集め、単行本・文庫本の累計部数300万部超えの大ベストセラー作品となりました。その人気もあり、2016年には動画配信サービス・Netflixにてドラマ化され、2017年には映画化もされ、社会現象になった作品です。

『火花』 又吉直樹『火花』(文春文庫)(出典:Amazon

 物語は、売れずにくすぶっている芸人・徳永が、決してまわりに媚びない先輩芸人・神谷と出会うところからスタート。熱海の花火大会にて漫才中に観客に「地獄! 地獄!」と指差していく神谷の姿に徳永は感銘を受け、神谷に弟子入りを申し出ます。

 無事、弟子入りを果たした徳永は神谷と行動を共にしながら、その生き方や笑いの哲学を吸収しようと奮闘。しばらくして、徐々に売れ始める徳永だったが、その一方、師匠の神谷は一向に売れることなく借金にまみれ、徐々に落ちぶれていってしまう……

 何かを目指しているときの美しさ、逆に売れる・成功することで失ってしまうものなど、純粋過ぎるがゆえに感じる喜びや、抱えてしまう葛藤について丁寧に描かれています。夢を追いかけている人、追いかけたことがある人にとっては、涙なしには読めない1作です。

芥川賞受賞作品:村上龍『限りなく透明に近いブルー』(講談社)

 第75回芥川賞受賞作。作者の村上龍氏は、本作『限りなく透明に近いブルー』で群像新人文学賞を受賞しデビューを果たし、そのデビュー作でいきなり芥川賞を受賞。その後も、コインロッカーに捨てられた孤児の復讐劇を描く『コインロッカー・ベイビーズ』や、北朝鮮の武装コマンドが日本でテロ活動をする『半島を出よ』など、社会問題や世界情勢を反映した作品を次々と発表し続けています。

 作家としてはもちろん、経済トーク番組「カンブリア宮殿」で司会を務めるなど、幅広い分野で活躍している人物です。社会や人間の暗部に容赦なく切り込んでいくスタイルが特徴的で、本作も発表当時その過激さから賛否両論が飛び交うことになりました。

『限りなく透明に近いブルー』 村上龍『限りなく透明に近いブルー』(講談社)(出典:Amazon

 本作の舞台は、米軍基地を抱える東京の街・福生。元・米軍住宅地の福生のハウスには、ロックやジャズの音楽が響き渡り、その中では若者たちによる、ドラッグや性交、暴力が繰り広げられ、退廃そのものの景色が広がっていました

 そんな激しくて空虚な風景を、主人公・リュウの視点から淡々と描き出していく作品となっています。人の醜悪な面を徹底的に描くからこそ見える、わずかだけれども確かな希望。そして、読み終わった後に、タイトルの『限りなく透明に近いブルー』の意味が理解できるような作りになっています。問題作や衝撃作といったタイプの作品が好みなら、間違いなく忘れられない1作となるでしょう。

こちらの記事も要チェック!

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセスランキング
  1. 【付録】キティちゃんの「50周年限定デザイントート」がカワイイ! ノートパソコンも入るシックなバッグが登場
  2. 【付録】超スピード完売した「モンベルキャンプツールBOX」が限定ロゴ&カラーで復刻! アウトドアで活躍間違いなし
  3. 【付録】機能的な「付録黒バッグ」4選 コールマンの“1000円台はっ水バッグ”は要チェック【2024年5月版】
  4. ワークマンの「歩きやすいシューズ」3選 長時間歩くときに履きたい、“快適スニーカー”は要チェック
  5. オフィスで使える「レザースニーカー」おすすめ4選 ビジネスシーンで使いやすい黒アッパー、黒ソールのモデルをピックアップ【2024年5月版】
  6. 今売れている「G-SHOCK」おすすめ&ランキング 「GRAVITYMASTER」新モデルやマンガっぽいG-SHOCKが登場【2024年5月版】
  7. 登る人と下る人はどちらが優先? 登山で押さえておくべき「暗黙のルール」3選【2024年4月】
  8. 今売れている「PS5のソフト」ランキング 1位は「Stellar Blade」【2024年5月6日】
  9. 【ワークマン】買って正解! “ガバッと開くリュック”は使い勝手抜群 丈夫&軽量だからアウトドアでも活躍
  10. 防水「ゴアテックススニーカー」売れ筋ランキングトップ10&おすすめ 1位はリーガルのコート系スニーカー【2024年5月版】