現在、日本にはホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキという4つの大手バイクメーカーが存在します。このうち最多のラインアップ数を誇るのがホンダで、排気量1800ccオーバーの「ゴールドウイングツアー」から、50ccの「スーパーカブ50」まで、実に幅広く取りそろえています。
四半世紀にわたってほぼ全てのホンダ車に試乗し、つい最近まで同社の750ccモデルも所有していた筆者が、各車に共通する特徴について紹介しましょう。
モーターサイクル&自転車ジャーナリスト。短大卒業後、好きが高じて二輪雑誌の編集プロダクションに就職し、6年の経験を積んだのちフリーランスへ。ニューモデルの試乗記事だけでもこれまでに1500本以上執筆し、現在進行形で増加中だ。また、中学〜工高時代はロードバイクにものめりこんでいたことから、10年前から自転車雑誌にも寄稿している。キャンプツーリングも古くからの趣味の一つであり、アウトドア系ギアにも明るい。
故本田宗一郎氏が本田技術研究所を開設したのは、今から70年以上も前の1946年のこと。場所は現在の静岡県浜松市です。
ホンダの名を冠した最初の自社開発製品は、“A型”と名付けられた自転車用の補助エンジンで、1947年に発売されました。現代の電動アシスト自転車のような存在と言ったらイメージしやすいでしょうか。1952年、このA型の進化版として登場した補助エンジンが“カブF型”で、このとき初めて「カブ(CUB)」という名称が使われたのです。
1958年に、カブF型を超える存在としてリリースされたバイクが「スーパーカブC100」です。誕生から65年が経過し、交通事情や環境対策などが大きく様変わりしたにもかかわらず、スーパーカブシリーズの基本設計は今も大きく変わっていません。本田宗一郎氏をはじめ当時の技術者たちの先見の明には感心しきりです。
スーパーカブシリーズは、2017年10月に世界生産累計1億台を達成し、世界一売れたバイクというギネス記録を持っています。そば屋の出前や新聞配達などのデリバリー業務だけでなく、近年は若い女性がカブに乗るために二輪免許を取得するなど、レジャー目的で選んでいるライダーも多いのです。
バイク専門誌では、スーパースポーツやアドベンチャー、ネオクラシックなど、カテゴリーごとに各メーカーのバイクを集め、比較試乗企画を頻繁に行います。その際、誰もが感じるのが「ホンダって乗りやすいよね」なのです。
スロットルを大きく開けずともグンッと力強く加速したり、操縦次第でスパッと旋回したりすると、刺激的で楽しいという印象になるのですが、ホンダ車は反応が優しいことが多いのです。
刺激的なバイクは楽しい反面、無意識に神経や体力を酷使してしまい、意外と疲れやすいのです。事実、比較試乗ロケは複数人のジャーナリストで臨むのですが、疲労がたまってくる後半になるほどホンダ車の取り合いとなります。
ホンダ車は、どんな操縦でも車体を傾けてさえしまえばコーナーを曲がれるという安心感が共通しており、ロングツーリングでは特にありがたく感じます。
筆者は2016年1月にホンダの「NC750S」というモデルを新車で購入し、2021年1月までの5年間所有していました。千葉の自宅から北海道までキャンプツーリングに2度行ったこともありますが、トラブルらしいトラブルは一度も経験していません。
筆者はかつて沖縄本島で「スーパーカブ110」を丸3日間、宮古島で原付一種スクーターの「トゥデイ」を朝から夕方までレンタルして走り回ったことがあるのですが、この2台も問題は発生しませんでした。
「スーパーカブ110」の方は積算計が7000km未満だったので、レンタルバイクとしてはまだまだ新車というレベルですが、「トゥデイ」の方は、何と9万kmをオーバー。駆動系の摩耗によるものか、加速はやや鈍いと感じたものの、気になるような異音もなく、途中でゲリラ豪雨に遭いながらも宮古島を半周することができました。
こうした耐久性の高さは、初代スーパーカブの時代から徹底されています。例えばエンジンの定期的なオイル交換は必須ですが、東南アジアや南米では無交換のまま平気で走っていたり、粗悪なエンジンオイルが使われたりすることも珍しくありません。そんな過酷な使われ方でも致命的な故障にならないよう、さまざまなテストを繰り返して改良を加える。それがホンダなのです。
世界中で販売されている全てのホンダ車のエンジン、つまり最も排気量の大きい「ゴールドウイングツアー」から最も小さな「スーパーカブ50」まで、“G1(10W-30)”という一番グレードの低い鉱物油の純正オイルをベースに開発されています。
だからこそ、どんなエンジンオイルを入れても壊れにくいのです。もちろん、他メーカーのエンジンが壊れやすいというわけではありませんが、品質において一歩も二歩もリードしているのがホンダなのです。
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