18歳以上で取得可能な「大型二輪免許」。この免許があれば排気量の制限がなくなり、どんなバイクでも一般公道で乗ることができます。ただし、普通二輪免許で乗れる400cc以下のモデルと比べると、車重もパワーも一気に増えることから、それなりにハードルの高さを感じることでしょう。
そこで今回は、大型二輪免許ビギナーでもすぐに楽しむことができ、操縦技術を磨くのにも適したモデルを紹介しましょう。
モーターサイクル&自転車ジャーナリスト。短大卒業後、好きが高じて二輪雑誌の編集プロダクションに就職し、6年の経験を積んだのちフリーランスへ。ニューモデルの試乗記事だけでもこれまでに1500本以上執筆し、現在進行形で増加中だ。また、中学〜工高時代はロードバイクにものめりこんでいたことから、10年前から自転車雑誌にも寄稿している。キャンプツーリングも古くからの趣味の一つであり、アウトドア系ギアにも明るい。
「ハーレーに乗りたかったから」「仲間とのツーリングで400ccの自分だけ遅れてしまう」「昔からビッグバイクに憧れていた」などなど、大型二輪免許を取得する理由はさまざまです。この免許を取得すれば排気量の制限がなくなるので、2000ccオーバーというとてつもなく大きなバイクにも一般公道で乗ることが可能です。
とはいえ、バイクは全身を使って運転する乗り物なので、排気量が大きくなるほど車重やパワーが増え、それに比例して操縦のハードルが上がります。日本では18歳以上であれば大型二輪免許の取得が可能ですが、EU加盟国ではこれに該当するAライセンスを取れるのは24歳以上。もしくは下位のA2ライセンスで2年以上の経験を積んでいないと取得できません。
ちなみにA2ライセンスの取得条件は19歳以上で、乗れるバイクは定格出力を47.6ps(35kW)以下に制限されたモデルのみ。このようにパワーの少ないバイクから経験を積ませることで、特に若いライダーの交通事故を減らそうという取り組みを行っているのです。
さて、このA2ライセンスに対応しているのは750cc前後のモデルに多く、EUのライダーはAライセンスにステップアップすると、晴れてA2制限キットを取り外し、愛車をフルパワーにすることができます。
このような事情から、車両メーカーはビギナーが乗ることを想定し、750cc前後のモデルをできるだけ扱いやすく仕上げているのが特徴です。大型二輪免許を取得したばかりで不安のある方は、この背景を頭に入れて乗る車種を選ぶとよいでしょう。
軽二輪クラスで売れに売れているホンダの「レブル250」。そのシャシーに471ccの水冷2気筒エンジンを搭載するのが「レブル500」です。
原付スクーター顔負けの690mmという非常に低いシート高は「レブル250」と共通で、最高出力は「レブル250」より20ps高い46psを発生。EUのA2ライセンス制限に準拠したため、パワー的にはビッグバイクと呼ぶには少なめですが、車重が200kgを下回っているのと、ライダーの視点が路面に近いこともあって、このスペックからは想像できないほどの力量感を楽しむことができます。
加えて、大人気の「レブル250」と車体がほぼ共通であることから、「レブル500」にも装着可能なカスタマイズパーツが市場に数多く出回っていることも見逃せません。女性ユーザーの比率が極めて高いことも「レブル250/500」の特徴で、小柄なライダーにおすすめしやすい1台と言えるでしょう。
EU市場では最高出力を47.6psに抑えたA2ライセンス仕様も用意されている、ヤマハのスポーツネイキッドが「MT-07」です。184kgという400ccクラス並みの軽量なシャシーに、73psを発生する水冷並列2気筒エンジンを搭載しているので、スロットルを大きく開ければ脱兎のごとく加速します。
その一方で、エンジンは270度位相クランクを採用しており、低回転域では粘り強く、高回転域にかけてスムーズに吹け上がるなど、回転域ごとに表情が変化するので飽きることがありません。
ハンドリングは、車体の傾きに対してナチュラルにフロントタイヤが切れるという扱いやすいもので、これは全ての速度域で大きく変わることがなく、ライダーを裏切りません。
そうしたイージーさを前面に出しつつ、操縦次第で高い旋回力が引き出せるので、ベテランが乗っても楽しめます。近年まれに見る傑作、それがヤマハの「MT-07」です。
ヤマハの「MT-07」とライバル関係にあるのが、カワサキの「Z650」。これをベースにかつての名車「Z1/Z2」のような外観を与えたレトロスポーツが「Z650RS」です。
401cc以上の小型二輪クラスにおいて、5年連続で販売台数ランキングのトップに君臨するのがカワサキの「Z900RS」ですが、車名からも分かるように、「Z650RS」のスタイリングはこの「Z900RS」とうり二つといっても過言ではありません。
180度位相クランクを採用する水冷並列2気筒エンジンは、最高出力68psを発生。「MT-07」よりも5ps低いのですが、レッドゾーンの始まる10000rpmまで力強くシャープに吹け上がることから、その差を全く感じさせません。
車両価格は「MT-07」よりも約20万円高く、ミドルクラスで100万円を超えることが選択時のネックになるかもしれません。しかしこれには「カワサキケア」という3年間の定期点検およびオイル&フィルター交換の費用が含まれており、愛車を大切に乗り続けたい人にとってはうれしいプラス要素と言えるでしょう。
最後に紹介するのは、ホンダの「CRF1100Lアフリカツイン」です。大型二輪免許ビギナーにリッタークラスのアドベンチャーモデルをすすめるのはちょっと……という声が聞こえてきそうですが、筆者が推すのはシリーズの中でも標準仕様のDCTモデルです。
大容量の燃料タンクを採用するバリエーションモデルに対し、標準仕様の車重は10kgほど軽く、なおかつ車高も低くなっています。シート高は2段階に調整することができ、低い方へセットすると810mmなので、上で紹介したヤマハの「MT-07」やカワサキの「Z650RS」とほぼ同じ高さになります。
しかも、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)モデルを選べば自動でシフトチェンジしてくれるので、エンストやシフトミスなどのストレスから解放されます。
ライダーエイドな電子デバイスが充実しているほか、アップルカープレイやアンドロイドオートとの連携機能も採用。悪路走破性に優れていることはもちろん、ロングツーリングでの疲れにくさもピカイチです。予算に余裕のある方は検討されてみてはいかがでしょうか。
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