「登山リュック(ザック)」にはさまざまなタイプがありますが、大きくフレーム入りのものとフレームなし(フレームレス)のものとに分けられます。それぞれ構造や重さなどが異なり、おすすめのシーンも変わってきますが、具体的なメリットやデメリットを知らない人も多く、なんとなく選んでいる人も多いもの。
そこで今回は、元アウトドアショップスタッフの筆者が、登山リュックのフレームの有無によるメリット・デメリットを紹介します。リュック選びに迷っている人は、ぜひ参考にしてみてください!
フリーランスのライター・編集者。元アウトドアショップ店員。富士登山をきっかけにアウトドアにはまり、登山やキャンプ、トレイルランニングなど幅広いアクティビティを一年中楽しんでいます。自身の山体験や、店員時代の接客経験を生かし、リアルで深い内容を発信!リモートワーカーのため、仕事や日常を快適かつ生産的に行うためのガジェット選びも得意です。
登山リュックのフレーム(インナーフレーム)とは、背面にあるかたい骨格のことです。荷物を入れる部分から少し離れて付いており、背中の形状に合うように湾曲しているものが多いものの、そのデザインや構造はブランドによってさまざま。また、アルミやプラスチック、チタンなど、使われている素材も多様です。
登山リュックは、フレームの有無で大きく2つに分けられます。メジャーなアウトドアブランドではフレーム入り登山リュックの方が多く流通しているため、登山リュック=フレーム入りというイメージの人も多いのではないでしょうか。
一方、ウルトラライト(軽量な荷物を背負ってアウトドアに行くこと)志向の人が増えてきたこともあり、フレームのない登山リュックも人気が高まっています。
フレーム入りリュック最大のメリットは、荷物を型崩れすることなく支え、重さを分散することです。かたいフレームのおかげで、中に入れる荷物によってリュックの形が変わったり、荷物が背中に当たったりすることがなく、背負い心地が一定に保たれます。
そして、荷物の量や入れ方にかかわらず、ショルダーハーネスとウエストベルトに重さを分散させることができるため、体に負担がかかりにくいというわけです。
小学生が使うランドセルのショルダーハーネスと背面がしっかりした作りなのは、荷物の重さによって子どもの背骨や脊柱(せきちゅう)が歪まないようにするためといわれますが、フレーム入りリュックも同じような働きがあるといえるでしょう。
背中とリュックの間に空間ができることで、空気の通り道ができ、背中がムレにくいのもメリット。ドイターのリュックのように、ブランドによっては独自のフレーム形状を採用して最大限通気性を高めているものもあり、背中のムレや汗ジミ、暑さに悩む人におすすめです。
テント泊登山にも対応できる60Lの「ディバ60」。体型に合わせてショルダーハーネスやウエストベルトの角度が調整できるのも魅力です。
フレームにはアルミやプラスチックなどを使うことが多いため、リュック自体が重いのが気になるところ。容量によりますが、荷物を入れていなくても1kg〜2.5kgほどあるため(フレームレスリュックの重さはその半分ほど)、なるべく軽いものを持ちたい人には大きなデメリットとなります。
重さを各ハーネスで分散しているものの、長時間歩き続けたり、リュックの背面が体に対して長すぎたりするなど、体型に合わないものを使うと腰や肩が疲れてしまう人もいます。
また、かたいワイヤーなどが入ったフレームやウエストベルトは折りたたむことが難しいため、自宅で収納する際にかさばるデメリットも。小さく折りたたんで収納しておきたい人は、フレームレスリュックの方がよいかもしれません。
背面にかたいフレームのないフレームレスリュックのメリットは、とにかく軽いことです。フレーム入りモデルの半分ほどの重さで、容量にもよりますが1kg以下のモデルが多数。薄手で軽量な生地を使い、ポケットも最小限のモデルが多いため、なるべく軽量化したい人に人気があります。
軽量のギアを使うなどして荷物をなるべく減らすことで、肩などへの負担を最小限にして、体力の消耗を抑えて長く歩くことができるなどの強みがあります。
背面やショルダーハーネス、ウェストベルトがしなやかで体になじみやすいのもメリット。背負い慣れた街用のリュックと同じような構造のため、違和感なく背負いやすいのです。
シンプルなデザインのものが多く、見た目がゴツすぎないのもポイント。筆者はフレームレスリュックを普段の買い物にも使用しています。普段着にも合わせやすく、街でも浮かずに使えますよ!
リュック自体が軽量なフレームレスですが、荷物を入れすぎると重く感じ、体に負担がかかってしまうことも。肩や腰で荷重を分散させるフレーム入りリュックとは異なり、肩のみに重量がかかるモデルがほとんどであるため、荷物が多いほど肩にずっしりと重さがのしかかり、体を痛めてしまう可能性があります。
モデルによっては耐荷重や快適に背負える推奨重量が決められているものがあるため、それを超えないように荷物量を抑えることが重要です。適切な重さがわからなければ、ショップの店員さんに聞いてみましょう。
荷物が多い、または減らせないことを自覚している場合は、重さを分散するフレーム入りリュックの方が適切な場合があります。
フレームと背中に隙間があることで通気性を担保できるフレーム入りと異なり、フレームレスの多くは背面と背中がぴったりくっつくのも気になるポイント。熱がこもってムレやすく、暑いと感じることもあります。そのため、暑がりや汗っかきの人にとっては大きなストレスになることも。
なお、背面には取り外し式のパッドが入っている場合がほとんどで、汗をかいたら洗うことも可能。ブランドによっては通気性の高い素材を使ったものも販売されています。
重さわずか430g(本体380g、背面パッド50g)のシンプルなモデル。幅が広いショルダーハーネスが体に食い込みにくく、重さを分散します。
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