北アルプスに位置する「雲ノ平」は、日本最後の秘境ともいわれ、美しい景色や高山植物などの自然が堪能できる登山スポット。富山県側と長野県側のどちらから向かっても到着するのに1日以上かかるため、簡単には辿り着けない憧れの地として知られています。
今回は、2023年8月に2泊3日のテント泊登山で雲ノ平を旅した筆者が、実際に歩いたコースやその見どころをレポートします。登山中に役に立ったギアもあわせて紹介するので、ぜひ参考にして計画を立ててみてくださいね!
フリーランスライター兼アウトドアショップスタッフ。富士登山をきっかけにアウトドアにはまり、登山やキャンプ、トレイルランニングなど幅広いアクティビティを一年中楽しんでいます。勤務するアウトドアショップのお客さまから寄せられるお悩みや自身の山体験を生かし、リアルで深い内容を発信! リモートワーカーのため、仕事や日常を快適かつ生産的に行うためのガジェット選びも得意です。
「雲ノ平(くものだいら)」は、北アルプスの黒部川源流部にある標高2500m前後のスポット。「〜岳」というような呼び名ではないのは、雲ノ平が山の名前ではないから。黒部五郎岳や水晶岳、鷲羽岳、祖父岳などに囲まれた、溶岩台地が広がるエリアを雲ノ平といいます。
雲ノ平は「日本最後の秘境」「天上の楽園」などとも称される、山好きが憧れるスポット。というのも、どの登山口からも日帰りで訪れるのは難しく、途中で1泊以上する必要があるため、簡単には訪れることができないというイメージがついているのです。
今回筆者は8月の夏休みを利用して、2泊3日のテント泊登山を実施。天気にも恵まれ、雲ノ平ならではの魅力にたっぷりと触れてきました。
今回歩いたのは、富山県側の登山口「折立」から太郎平小屋、薬師沢小屋を経由し、雲ノ平に向かい、来た道をたどって折立に戻るルート。
初日は太郎平小屋から歩いて20分ほどのところにある太郎平(薬師峠)キャンプ場で1泊し、2日目に雲ノ平に到達しました。そのまま雲ノ平山荘の近くにある雲ノ平キャンプ場で1泊したあと、再び薬師沢などをたどり下山するコースを選択。
行程が長く、体力やきちんとした装備は必要ではあるものの、危険箇所は少なく、木道などがよく整備された比較的歩きやすいルートで、のんびりと景色を楽しめました。
折立登山口から1時間ほど樹林帯を登っていくと、景色が開けて広い道が出現。そこから太郎平小屋までは、よく整備されたなだらかな登り坂が続きます。ふもとの有峰湖を見下ろしたり、剱岳を見上げたりと、豊かな景色を楽しみながら軽快に歩きました。
楽しい道だったのですが、日陰はほとんどなく、強い日差しがジリジリと照りつけて暑い……。熱中症対策にと持ってきていた冷感タオルを首に巻き付けて、体を冷やしながら登りました。
かわいいチングルマも発見! ピンク色のわた毛が風に揺れていてとても癒されます。これは、夏の高山ならではの景色。
他にも、黄色や紫色など色とりどりのお花をたくさん見つけました。道が広い箇所が多いため、端に寄ってゆっくり植物を鑑賞したり、写真を撮ったりできるのもよいですね。
2日目、太郎平キャンプ場を出発し、太郎平小屋を経て2時間半ほど歩くと、赤い吊り橋のある薬師沢小屋に到着! ここは沢のわきにひっそりと建つ山小屋で、登山者はもちろん、渓流釣りをする人や、沢登りを楽しむ人にも人気があります。
水が豊富な薬師沢小屋では、おいしい水を無料でいただけます。この水は、雲ノ平方面からゆっくりとろ過されてきた天然水なのだとか。キンキンに冷えた水をくみ、手や顔もバシャバシャと洗ってスッキリ!(水質や水量の変動もあるため、飲用については最新情報をご確認ください)
そのあとは、今回一番の「頑張りポイント」である急登。2時間ほど、大きな岩がゴロゴロ転がる急斜面をひたすら登りました。全ては、この先の雲ノ平で美しい景色を楽しむため……!
修行のように急斜面を登りきると、徐々に景色が開けてきました。「アラスカ庭園」と名付けられた場所に着くと平坦な道に変わり、周辺の山がひょっこり顔を出しました。進んでいくと、どんどん緑色の平地は広がり、木道がどこまでも続いていくかのよう!
ついに、念願の雲ノ平に着いたのです。所々に池塘(ちとう)と呼ばれる小さな池があり、神秘的でしっとりとした雰囲気を演出していました。
この日は登山者が少なく、まるで別世界にたどり着いてしまったかのような静かな空間を満喫。遠くには黒部五郎岳や三俣蓮華岳、水晶岳など、ダイナミックな山々の姿も見渡せ、穏やかな台地との対比もまた魅力に感じました。
歩いていると突然ポツリと現れる雲ノ平山荘も、人気スポットの一つ。赤い屋根が目に入ったとたん、「やっと着いたー!」といううれしい気持ちや、ここまで歩き切った達成感が込み上げてきます。
雲ノ平には名前がつけられたスポットがいくつかあり、「スイス庭園」もその一つです。スイス庭園からは、水晶岳や赤牛岳、高天原山荘などが見渡せ、ライチョウの家族も見ることができました。
ベンチがあったので、おやつを食べながらのんびり。休憩できるスペースが多いため、ただ景色を眺めながらぼーっとする時間がたっぷり取れるのも、雲ノ平の魅力です。
今回は山小屋ではなく、テント場(雲ノ平キャンプ場)を利用しました。雲ノ平山荘から歩いて約20分ほどのところにあるテント場は広く、黒部五郎岳や祖父岳も見える絶好のロケーション。水場やトイレもあり、快適に過ごせました。
テントを張ってからあたりを散歩したり、お昼寝をしたりしていると、早くも夕方。日没に近い時間には、テント場のあたりが赤く染まり、昼間とはまた違った風情が楽しめました。
大展望や高山植物など、ゆったりとマイペースに山歩きの醍醐味を味わうことができる雲ノ平。静かに大自然に向き合いたい人におすすめの場所です。ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか?
ザックのショルダーハーネスにボトルホルダーをつければ、ザックを下ろさずに水分補給ができるので、長時間の山行でも快適です。
軽量で通気性の高いシューズ。グリップ力も高く、ぬれた木道の上も難なく歩行できました。
軽量ながら耐久性が高いため、長期間の山行でも安心して持ち運べるのが魅力です。
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