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原チャリが50ccから125ccになる? 2025年に導入予定の「新基準原付」が作られた理由とは

» 2024年01月23日 15時00分 公開
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 2023年末、警察庁が「新基準原付」を現行の原付免許で運転できるように、車両区分の見直しを進める方針を示しました。新基準原付とは、総排気量125cc以下のエンジンを最高出力4kW(5.4ps)以下に制御した二輪車のこと。ここでは、原付免許で乗れる新基準原付が作られた理由や概要を解説します。

フォト 「新基準原付」が作られた理由・概要を解説

大屋雄一

大屋雄一

モーターサイクル&自転車ジャーナリスト。短大卒業後、好きが高じて二輪雑誌の編集プロダクションに就職し、6年の経験を積んだのちフリーランスへ。ニューモデルの試乗記事だけでもこれまでに1500本以上執筆し、現在進行形で増加中だ。また、中学〜工高時代はロードバイクにものめりこんでいたことから、10年前から自転車雑誌にも寄稿している。キャンプツーリングも古くからの趣味の一つであり、アウトドア系ギアにも明るい。

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今や50ccのコミューターは国内専用車 そのためどうしても高額に

 原動機付自転車、いわゆる「ゲンツキ」や「原チャリ」などと呼ばれている小型のバイクは、道路交通法では総排気量50cc以下(電動の場合は定格出力0.6kW以下)の二輪車を指します。

 道路運送車両法では、125cc以下の二輪車が原動機付自転車となり、その中で50cc以下は第一種原付、50cc以上125cc以下は第二種原付と区分されています。

フォト ヤマハの50ccスクーター、ビーノ。ホンダが製造している

 1980年には、日本国内だけで年間およそ250万台も売れていた原付。車両メーカーにとってはドル箱のカテゴリーだったのです。ところが、1986年のヘルメット着用義務化を皮切りに、違法駐車の厳罰化や免許がいらない電動アシスト自転車の台頭、そして少子化などが加わり、現在の販売台数はピーク時の20分の1以下にまで落ち込んでいます。

 50ccという区分は世界的に見るとほぼ日本のみとなっており、欧州やアジアでの小型バイク(コミューター)の主流は100〜150ccとなっています。国内市場向けの50ccのスクーターは大量生産によるメリットが薄く、装備の割りにはどうしても高額になりがちです。

 そのため、ヤマハは2018年から原付主力モデルであるジョグとビーノの生産を、かつてライバルであったホンダに依頼するなどして、市場価格を抑える努力をしているのです。

フォト ヤマハ ビーノ

 そこまでして車両メーカーが原付をラインアップに残している理由は、通勤通学や買い物などに幅広く利用される、国民の生活に密着したバイクだからです。現在、日本国内で約450万台もの原付が利用されており、さらに普通自動車免許など付帯で原付に乗ることができる免許保有者は約8200万人もいますから、車両メーカーとしても、また国としても残さざるを得ないのです。

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原付カテゴリーのグローバル化は車両メーカーの悲願だった

 販売台数が減少傾向にありながらも、国民の“足”として利用されている原付に、2025年11月以降は「国内第4次排ガス規制」が適用されます。その内容は非常に厳しいもので、排気量が50ccのままでは排ガスを浄化する触媒の温度が上がりにくく、規制値をクリアできないことが以前から指摘されていました。

 そこで、全国オートバイ協同組合連合会および日本自動車工業会から、125cc以下のバイクの最高出力を現在の原付並みに抑えた「新基準原付」の要望が出されたのです。

フォト 二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会の報告書概要(出典:警察庁

 この要望を踏まえ、二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会が開催されました。日本の二輪免許は、50cc以下/50cc超125cc以下/125cc超400cc以下/400cc超と、排気量で大きく4つに区分されています。さらにAT限定も加わるので、現在7種類もの二輪免許が存在します。

 50cc以下のバイクに乗るのに必要な原付免許は最短1日で取得でき、しかも学科試験のみで実技試験はありません。つまり最も簡単に取れる運転免許で、上限排気量の2倍以上のバイクに乗っても良いものなのか、その判断が慎重に行われたというわけです。

 車両メーカーとしては、すでに海外で大量生産している125cc以下のモデルをベースに、最高出力を4kW(5.4ps)以下に制限した車両を用意すれば良いのですから、市場価格を抑えることは比較的容易だと思われます。つまり車両メーカーにとっても、また買う側のユーザーにとってもメリットしかなく、まさにWin-Winと言ってよいでしょう。

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新基準原付と現行原付の運転特性はほぼ同程度

フォト 習熟運転者を対象とした走行評価について(出典:警察庁

 2023年9月〜10月に、熟練運転者を対象とした新基準原付の走行評価と、一般の運転者を対象とした試乗会が開催されました。走行課題は、発進時や停止時、交差点の通行など13の項目が設けられ、それぞれ5段階で評価するというもの。

 結論としては、新基準原付と現行原付の走行評価はほぼ同程度となりました。つまり、原付免許を取得したばかりのビギナーが新基準原付を運転しても、おおむね問題なしとの結果が出たのです。

フォト 走行評価テストにも使われたホンダ・ディオ110(海外名:ヴィジョン110)

 今後は道交法体系上の見直しが行われるとともに、新基準原付の識別方法や不正改造防止措置などが検討される予定です。まだまだ課題はあるものの、国民の“足”の一つである原付が継続されるというのは朗報でしょう。

 改めてお伝えしたいのは、原付免許や普通自動車免許で全ての125cc以下のバイクに乗れるようになるのではなく、今後登場する「新基準原付」が対象になるということ。詳報については追って紹介する予定です。

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