「Wi-Fiルーター」は現代の住宅には必須とも言える機器です。新居への引越しを検討したり、改めて自宅の通信環境を見直したりする時に、自宅のWi-Fiルーターをどう選ぶべきか悩む人は少なくないでしょう。
高速な光回線を契約しても、目的に適した仕様のWi-Fiルーターを用意しなければ満足のいくパフォーマンスが出ないこともあります。
ここでは家庭用のWi-Fiルーターを比較検討する際に、ポイントとなる10個の仕様について解説していきます。
スマートフォンやスマートウォッチ、タブレットを軸に、ICT機器やガジェット類、ITサービス、クリエイティブツールなどを取材。Webメディアや雑誌に、速報やレビュー、コラムなどを寄稿する。Twitter:@kira_e_noway
「Wi-Fi(ワイファイ)」とは、「Wi-Fi Alliance(ワイファイアライアンス)」という業界団体が命名した無線通信規格のブランド名です。規格の世代ごとに名称が分かれており、ナンバリングが多い方が新しい世代を指します。
ネットや店頭でルーターについて調べると「Wi-Fi 4」「Wi-Fi 5」「Wi-Fi 6」「Wi-Fi 6E」「Wi-Fi 7(2024年に策定)」という5つの世代の表記を見かけるでしょう。現在(2024年春時点)Wi-Fiルーターを購入するならば、少なくとも2019年に策定された規格である「Wi-Fi 6」以降をサポートしている製品、できれば「Wi-Fi 6E」対応製品を選ぶことをおすすめします。
こうしたWi-Fiの規格で電波を発信する家庭用の機器を、一般に「Wi-Fiルーター」と呼びます。
業務用の機器では「Wi-Fiルーター(データの振り分けを制御する機械)」と「Wi-Fiアクセスポイント(電波を出す機械)」が分かれているので、それぞれを別のデバイスとして扱うのですが、一般家庭向けではこれらの機能をまとめた機器が「Wi-Fiルーター」と呼ばれています。自力で詳細を検索するときに用語で混乱しないようにしましょう。
Wi-Fiで使用する電波の周波数域には、基本として「2.4GHz(ギガヘルツ)」帯、と「5GHz」帯の2種類があります。
一般的な性質について述べると、2.4GHz帯では通信速度はやや遅くなりやすいものの、障害物の影響を受けにくく、遠くまで電波が届きやすくなります。5GHz帯では通信速度が速くなりやすい反面、やや障害物などの影響を受けやすい傾向があります。
「Wi-Fi 6E」や「Wi-Fi 7」などの新しい世代の無線通信規格になってくると、2.4GHzと5GHzに加えて「6GHz」帯の電波も使えるようになります。より広い帯域を活用できることで、より大容量の通信が行いやすくなったり、余裕を持った通信が行いやすくなったりするメリットが出てきます。
Wi-Fiの通信速度には、理論上の値である「理論値」と、実際の環境で測定される「実測値」の2つがあります。Wi-Fiルーターの製品に記載されているスペックの値は基本的に理論値です。もちろん、理論値が大きい製品ほど実測値も大きくなりやすいという傾向はありますが、スペックに書かれている速度がそのまま出るわけではありません。
また通信速度は、「(1)インターネットからWi-Fiルーターまでの通信速度」と「(2)Wi-Fiルーターからデバイスまでの通信速度」の2つに分けて考える必要があります。
まず(1)の通信速度について――光回線を使う通信プランでは、2024年現在、理論値で「最大1Gbps」程度を出せるやや安価なプランと、「最大10Gbps」程度を出せる上位のプランが提供されていることが多いです。
一方、(2)の通信速度については、LANケーブルを使って接続するか、Wi-Fiを介して接続するかで値が変わってきます。LANケーブルを使う場合の通信速度は、LANケーブルやLANポートにおける「カテゴリ」と呼ばれる規格の違いで、最大通信速度が変わってきます。
Wi-Fiは、先述したWi-Fiの規格の世代や、Wi-Fiルーターが備えるアンテナの性能、接続するデバイス側の性能などによっても変わってきます。
例えば、「Wi-Fi 6」や「Wi-Fi 6E」の規格としての最大通信速度の理論値は9.6Gbpsです。ただし、実際のWi-Fiルーター製品では、理論値で4〜5Gbps程度までの通信速度をサポートしているような状況です。
(1)と(2)をまとめて考えると、自宅の通信環境を万全にしたい場合には「光回線(10Gbps対応)」を契約したうえで、それに対応した「最新のWi-Fiルーター(W-Fi 6 or 6E対応)」を導入するのが、現時点におけるベターな選択肢だと言えます。
Wi-Fiルーターの通信速度だけを見れば良いわけではありません。実はWi-Fiルーターごとに同時に接続できるデバイスの数が異なっています。
最近では、複数人の家族がそれぞれタブレットやスマホ、PC、ゲーム機など複数台のデバイスをWi-Fiに繋げていることも珍しくはありません。Wi-Fiルーターの仕様を説明するWebサイトなどには、「接続可能な台数」や「推奨の接続台数」などが記載されているので、もし安価な製品を選択する場合などには、この台数に問題がないかをチェックしておきましょう。
インターネットは利用者が集中して混雑すれば、道路渋滞のように遅くなります。自宅からネットへの接続方式によって、渋滞の影響が違ってきます。
ここでチェックする接続方式とは「PPPoE」と「IPoE」の2種類。PPPoEは、データがネットワーク終端装置を通過する仕組みで、そこで渋滞が起こりやすくなります。一方、IPネットワークを活用するIPoEでは、このネットワーク終端装置を通らないので、渋滞が起こりづらいとされます。
この「IPoE」という通信方式は、通信機器が利用するプロトコル(通信をする際に約束された手順)の最新版かつ速度が期待できる「IPv6」や、旧プロトコルとの互換性を担保する技術の「IPv4 over IPv6」と合わせて「IPv6(IPoE/IPv4 over IPv6)」のように表記されます。
小難しい話が続きましたが、とにかく光回線・Wi-Fiルーターともに「IPv6(IPoE/IPv4 over IPv6)」のサポートがあるかを確認することで、より高速な通信環境を整えやすくなる、と認識しておきましょう。
残りの5つのポイントは【後編】にて、引き続き解説していきます。
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