日本には、古くから世界的に知られるバイク用ヘルメットメーカーが2つあります。それが「アライ」と「SHOEI」です。それぞれにどんな特徴があるのか、そしてどちらを選んだらよいのかを解説しましょう。
大屋 雄一
モーターサイクル&自転車ジャーナリスト。短大卒業後、好きが高じて二輪雑誌の編集プロダクションに就職し、6年の経験を積んだのちフリーランスへ。ニューモデルの試乗記事だけでもこれまでに1,500本以上執筆し、現在進行形で増加中だ。また、中学〜工高時代はロードバイクにものめりこんでいたことから、10年前から自転車雑誌にも寄稿している。キャンプツーリングも古くからの趣味の一つであり、アウトドア系ギアにも明るい。
まずはアライの歴史を振り返ってみましょう。現組織の母体である「株式会社新井広武商店」が設立されたのは1950年(昭和25年)ですが、現所在地に工場を移設し、作業用保護帽の製造を開始したのは、それより13年前の1937年のこと。
さらにさかのぼると、初代の新井唯一郎氏が東京の京橋に新井帽子店を設立したのが1902年(明治35年)ですから、ここから数えると122年もの歴史を有していることになります。
先代社長の新井広武氏がライダーであったことから、1960年にバイク用ヘルメットの製造が本格的にスタートしました。社名が現在の「株式会社アライヘルメット」になったのは1986年で、工場はさいたま市に2つと群馬県の榛東村にあります。
SHOEIは、1954年にポリエステル加工メーカーとして創業します。ポリエステルというと衣料品の生地を思い浮かべる人が多いでしょうが、ペットボトルなどもポリエステルを材料としています。5年後の1959年に昭栄化工株式会社が設立され、翌1960年からバイク用ヘルメットの生産に着手しています。
古くからバイクに乗っている人なら、1992年にSHOEIが会社更生法の適用を申請したというニュースは大きなインパクトだったことでしょう。その後、三菱商事の支援もあり、1998年に更生手続きを終了。そして、この年の5月に商号を「株式会社シヨウエイ(ヨは大文字)」、そして同年12月に現在の「株式会社SHOEI」に変更しています。
なお、工場は茨城県稲敷市と岩手県一関市にあります。つまりアライ、SHOEIともに製品はメイド・イン・ジャパンなのです。
アライもSHOEIも、古くから世界のトップカテゴリーに参戦しているライダーに製品を供給しています。それも、我々がお店に行って買えるものと全く同じものです。
2024年シーズン、モトGPライダーでアライをかぶっているのは2名、SHOEIは3名で、一時期よりはだいぶ減ってしまいました。スポンサー契約の話が絡んでくるので、この数の大小が製品の優劣に関係するわけではないのですが、少なくともトップカテゴリーで戦っているライダーに選ばれているのは間違いありません。
ちなみに、高い安全性と機能性、デザイン性を兼ね備えたものは「プレミアムヘルメット」と呼ばれており、SHOEIは世界で60%以上ものシェアを占めているとのこと。海外のライダーにとってメイド・イン・ジャパンのヘルメットは憧れの対象であり、高いけれどもいつかは手に入れたいと思われているようです。
SHOEIは、ヘッドアップディスプレイ付きの最先端フルフェイスから、フェイスカバーが上下するシステムヘルメット、そしてクラシカルなデザインのジェットヘルまで、ラインアップの幅が広いという特徴があります。
特にクラシカルなタイプは、昨今のネオクラ系バイクとの相性が良いことから、一時期は生産が追いつかないほどでした。
これに対してアライは、アクシデント時の衝撃をかわすために丸みを帯びたスタイリングを最優先にしており、その結果としてラインアップは“保守的”や“画一的”などと言われることがあります。
しかしヘルメット本来の使命を考えると、これは称賛されるべきでしょう。ちなみにアライでは、システムヘルメットをこれまでに一度もラインアップしておらず、また世界中のヘルメットメーカーが導入しているインナーサンバイザーも一切採用していません。こういうところが保守的と言われる所以です。
その一方で、グラフィックに関してはアライも新しい手法に積極的であり、有名デザイナーとコラボするなどして、インパクトのあるモデルが登場することも。こんなところも、アライが世界中のライダーに支持されている要素の一つと言えるでしょう。
その昔、「アライ頭」「SHOEI頭」という言葉がライダーの間で交わされていました。アライの方が、もしくはSHOEIの方が自分の頭にフィットするという意味です。しかし、今では死語になりつつあるので、両メーカーの差異はほとんどなくなったと言ってよいでしょう。
以前メーカーの方に話を聞いたことがあるのですが、例えば自称アライ頭の人がSHOEIをかぶって部分的に痛みを生じたとしたら、そもそもサイズ選択が間違っている可能性があるとのことです。
サイズについてはモデルによって異なるのですが、両メーカーとも5〜6種類ずつ用意しています。そして、アライもSHOEIもスペシャリスト制度を導入しており、認定ショップで内装のフィッティングサービスを受けることができます。
もしデフォルトのサイズではしっくりこない、眼鏡の角度が合わないなどの悩みがある人は、スペシャリストが在籍しているショップでの購入をおすすめします。
両メーカーの製品に共通する圧倒的なアドバンテージは、JISなどの厳しい安全基準をクリアしながら「軽量」であることです。世の中には安価なヘルメットがあふれていますが、同じ基準を満たそうとした結果、帽体が大きくなったり、重くなってしまったものが多数見受けられます。
ヘルメットは軽ければ軽いほど首への負担が少なくなり、長時間かぶっていても疲労がたまりにくく、後方確認もしやすくなります。世界中のライダーがあこがれているアライとSHOEIのヘルメット。ぜひショップで実際にかぶってみて、じっくり選んでください!
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