不況が本格化するにつれ、多くのITベンダーが“ソフト/サービス化”“ソリューション指向”といった戦略転換を打ち出した。はたして不況時に求められるソリューションとは、どのようなものなのだろうか?
IT Business Review フォーラムが実施した第5回読者アンケートから、ITソリューションの中心となる業務ソフト導入状況の結果を紹介しよう。
まずはIT Business Review読者が関わるシステムで、“現在導入されている”“今後導入が進むと思われる”業務ソフト分野を選択してもらった結果が図1である。現在は「ERP(Enterprise
Resource Planning)」の導入が比較的進んでおり、以下「CRM(Customer Relationship Management)」「SCM(Supply
Chain Management)」が続く結果となった。一方、今後の導入見込では、「CRM」および「KM(Knowledge Management)」がほかを10ポイントほどリードしている。
次に上記のような業務ソフトを導入する目的として、現在重視されているテーマを聞いた結果が図2だ。これを見ると(1)「業務プロセス改善/コスト削減」および(2)「情報・知識共有/生産性向上」といった、企業体質改善目的の重視度が高くなっている。図1との関連でみると、「ERP」が前者、「KM」が後者の目的にあてはまるのはもちろん、「CRM」についても最終目的は顧客満足度向上にあるが、その実装過程におけるプロセス改善や生産性向上効果が見込まれてこそ、高い導入意向を獲得していると思われる。今日の厳しい経営環境下におけるITソリューションは、何よりもまず「企業の構造改革を支援する」役割が求められるようだ。
後半では業務ソフト導入時の重視点や課題について、導入済/導入意向ポイントの高いCRM/ERPのケースを見ていこう。まずCRM/ERP製品選択時に重視する点を聞いた結果、「導入先の要件/仕様にあわせたカスタマイズが容易であること」が約4割の読者から選ばれ、最重視点となった(図3)。これは対比して質問した「なるべくカスタマイズが必要ない(導入先が合わせやすい)こと」(18%)の倍以上の数値であり、業務ソフト導入時のカスタマイズニーズの強さを裏付ける形となった。また次点でも導入コストと共に「モジュールの追加や変更などの拡張性が高いこと」が選ばれるなど、この分野ではさまざまな企業システムに合わせられるソフトウェア構造の柔軟性が特に求められているようだ。
続いてCRM/ERP導入時の課題を聞いた結果が図4である。課題トップ3には、「導入効果を測定することが難しい」「ソリューション知識の高いコンサルタントやエンジニアの不足」「ユーザーの目的意識/ビジネスニーズが明確ではない」といった要因が並んだ。
ところでCRM/ERP導入時のキーマンは誰なのだろうか? 同分野導入決定にもっとも影響力が強い人を聞いたところ、「経営者/役員」が「情報システム部門」を上回ってトップに挙げられた(図5)。前述した通りこの分野の導入目的は企業自体の構造改革にあるだけに、経営者/役員クラスでなければ意思決定は難しいところだろう。この分野の導入を進める提案/申請者側にとっては、ソフトウェア機能などの技術問題以前に、“経営者/現場との緊密な対話に基づいた業務分析・要求定義”“目的達成度を定量的に把握できるシステム設計とそのプレゼンテーション”など、業務寄りのプロセスを重視する必要がありそうだ。
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