読者調査結果発表〜コラボレーション・ツールの活用状況は?〜Business Computing(2)

» 2003年09月27日 12時00分 公開
[小柴 豊,@IT]

 企業内でLANが普及するにつれ、社員間の情報共有/協働支援を実現すべく、さまざまな手法やツールが登場している。グループウェアに始まり、イントラネット、EIP(企業情報ポータル)など、多様化するこの分野を総称して、“コラボレーション・システム”とも呼ばれている。ユーザーが協同作業を行ううえで、真に有効なシステムとは、どのようなものなのだろうか? Business Computingフォーラムが実施した第5回調査から、コラボレーション・システムの導入/利用にかかわる読者の声を聞いてみよう。

コラボレーション・システムの適用範囲は?

 初めに、読者がかかわるコラボレーション・システムの適用範囲から確認しておこう。グラフ1のとおり、最も利用者が多かったのは「全社的なコラボレーション」(61%)であるが、「部門内のコラボレーション」利用者も、全体の5割に達している。またさらに粒度が細かい「業務プロジェクト単位のコラボレーション」利用率も2割を超えていることから、現在は目的に合わせて複数のコラボレーション・システムを併用/使い分けている読者が多いようだ。複数システムを併用することは管理効率の低下につながるが、非定型データを扱うコラボレーション分野では、基幹業務のようなシステム統一が困難であることをうかがわせる。

グラフ1 コラボレーション・システムの適用範囲(複数回答 N=185)

コラボレーション・ツールの利用状況は?

 では上記のようなコラボレーション・システムを構成するツールとして、読者は何を利用しているのだろうか? まず現在の利用ツールでは、「電子メール+ファイルサーバ」「グループウェア」および「イントラネット」の3種類が上位に挙げられた(グラフ2 青棒)。ここ数年さまざまなベンダから提供され始めた「インスタント・メッセージング(IM)/リアルタイム・コミュニケーション(RTC)」や「EIP」については、まだ試用の域を出ていない様子だ。

 また今後コラボレーション・ツールの導入を予定・検討している読者に、目下導入を考えているツールを聞いたところ、「グループウェア」の検討率が他を圧倒して高くなった(グラフ2 黄棒)。グループウェアは、その市場が本格的に形成されてから10年を経過したが、コラボレーション・システムの中核を担うツールとして、今後ともユーザーの期待が大きいようだ。

グラフ2 コラボレーション・ツールの利用状況

注目されるグループウェアの形態は?

 ところで一口にグループウェアといっても、そのシステム形態は10年の間にさまざまな変遷をたどっている。では今後注目される形態とは、どのようなものなのだろうか? グループウェアの現利用者および導入予定者に尋ねたところ、現在利用している形態/今後導入を予定している形態ともに、ブラウザから利用する「Web型グループウェア」のポイントが、最も高くなった(グラフ3)。その半面、グループウェアの元祖ともいうべき「クライアント/サーバ(C/S)型」を見ると、現在の利用率(青棒 45%)に比べて、導入予定率(黄棒)は11%にとどまっている。“プロプライエタリ環境のオープン化/標準化”というIT業界全体の流れの中で、グループウェアに求められるアーキテクチャも、確実に変化しているようだ。

グラフ3 グループウェアの利用形態

グループウェア製品の利用状況は?

 続いて、個別のグループウェア製品の利用状況を見てみよう。この分野の始祖である「Lotus Notes/Domino」は現在もトップシェアを保っているものの、「Microsoft Exchange Server」「サイボウズOffice/AG」といった後発製品との差は、圧倒的とはいえなくなっている(グラフ4 青棒)。一方今後の導入予定率では、新バージョンが発売されたExchange ServerのポイントがNotes/Dominoを上回ったほか、「SharePoint Team Services/GroupBoard」や「Oracle Collaboration Suite」といった、より新しい製品の導入検討も進んでいるようだ(グラフ4 黄棒)。グループウェアは引き続きコラボレーション・システムの中核としての需要が期待できるだけに、市場競争はますます激化していくと思われる。

グラフ4 グループウェア製品の利用状況(複数回答)

コラボレーション・ツールの導入目的は?

 上述したように、グループウェアに求められる利用形態は変わってきたが、その導入目的には、何か今日的な特徴があるのだろうか? コラボレーション・ツールの導入予定者に尋ねたところ、最も多く挙げられた特徴は「従業員や情報資源の増加に伴う、協業効率の改善」であった(グラフ5)。これはコラボレーション・ツール導入の基本目的だが、うがった見方をすれば、グループウェアが登場して10年たっても解決が困難な課題であるといえる。ツールの進化というと、“Webサービス対応”や“動画対応”といった機能的な側面が強調されがちだが、コラボレーション分野においては、まだまだ「協業効率」という基本命題への解答が求められていきそうだ。

グラフ5 コラボレーション・ツールの導入目的(複数回答 n=113)

コラボレーション・ツール選択時の重視点とは?

 続いてコラボレーション・ツールの導入予定者を対象に、今後ツールを選択する際のポイントを聞いた結果、該当者の7割以上が「ユーザーの操作性/使用感」を重視すると回答した(グラフ6)。上述した導入目的とも関連するが、ツールを導入して協業効率を高めるためには、ユーザーがそのツールを使いこなせることが必須要件となる。今後のコラボレーション・ツール市場で成功するカギは、第1に“ユーザビリティ”にあるといえるだろう。

グラフ6 コラボレーション・ツール選択時の重視点(複数回答 n=113)

 そこで気になるのは、グラフ3で見た「Web型グループウェア」の動向だ。周知のとおり、C/S型アプリケーションと比べたWebアプリケーションの優位性は、配布工数削減などの管理的側面が強く、入力しやすさなどのユーザビリティ面では、逆にC/S型より劣るケースもある。現在のWebアプリケーション開発においては、この反省を踏まえ、Flashなどによる“リッチクライアントの復活”がテーマとなっているが、これこそコラボレーション・ツールの進化に必要な視点となるだろう。“協業にかかわるすべてのユーザーが、有効に使いこなせる”環境を目指して、コラボレーション・システムの一層の進化に期待したい。

■調査概要

  • 調査方法:Business Computing フォーラムからリンクした Webアンケート
  • 調査期間:2003年7月14日〜7月31日
  • 回答数:285件(うち、コラボレーション・システム導入にかかわる185件を集計)

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