ミクロ経営を実現する製造業のITとは改革現場発!製造業のためのIT戦略論(2)(2/3 ページ)

» 2004年06月17日 12時00分 公開
[安村亜紀 (ネクステック),@IT]

これまでのシステムの問題点

データの相互参照を実現した結果……

 かつては業務をシステムで表現し、自動化を目指し、業務ごとのアプリケーションがたくさん出来上がった。業務をベースとしてアプリケーションを先に作っていたため、業務ごとにそれぞれデータベースを構築していた。このやり方では、業務変更のためにプログラムを追加すると、そのたびに新しいデータベースを立てる必要があった。

 この動きは、1980年代から今日まで継続的に続いてきた。当時は“データ活用”という概念がなく、業務の目的別に電算処理・記録することだけが目的であったから、それは自然な流れだったといえよう。その後、メインフレームからオープンシステムへ流れが変わっていったことで、ほかの部門のデータを相互に見にいったり、取り出したりすることができるようになり、状況は一変した。

 当初のITの使われ方は、計画などを目的とした意思決定のためのシステムではなく、記録帳を目的とした入れ物システムであった。しかし近年、「ITは戦略だ」「過去のデータを見て経営判断を行うため、情報は重要な資産だ」などといわれるようになり、慌てて業務ごとに立っていたシステムをつなぎ合わせた。その結果、各社とも、ぐちゃぐちゃにつながったいわゆる“スパゲティシステム”を作り上げていった。

 こうなると、設計、製造、販売、調達などおのおの散在したシステムとその画面を開いて、元来バラバラだったものを人間が無理に連携させながら作業することになる。その結果、システムユーザーは、「システム同士を連携させる作業が面倒だ」「システム稼働に時間がかかるから」などという理由で、システム自体を使わなくなっていき、データと実態がどんどんずれていく“情物不一致”(情報・物の不一致)が加速していった。使われないお化けシステム、一丁出来上がり?というわけだ。

図2 部門ごとのシステムを無理につなぎ合わせた結果、全体で見るとぐちゃぐちゃにつながったスパゲティシステムになった例

ERPでは情報と物を一致できない!

 1990年代中ごろになると、部門/業務ごとにあるシステムをまとめる究極のインテグレーションとして、鳴り物入りでERPが登場した。そこでERPにより、分散した部門、用途ごとの情報をネットワークで共有・管理しようとする動きが高まった。

 しかし金融・物流などと異なり、製造業は、実体のモノ(部品やユニットおよび完成品)をマスタ管理する必要があるため、ERPで管理される数量や値段で表される通知データだけでは経営は可視化できない。さらに“モノ”としての実体と数値の整合性が取れず、またしても情物不一致の状態に陥り、使わない・使われないシステムと化していった。「ERPで会社内の業務が何でもできる」といった幻想や、その効果に対する過度の期待が、製造業を混乱させたきらいがある。

 その後にやって来たのがWebシステムの時代だ。この時点で、P/NとP/Sのデータと、実業務との間のバックログ(業務とのギャップ)を調整し、情報と実態の整合性を取る必要が出てきた。ここで「システム資産とは何なのか?」という議論が活発化した。

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