Michael Hanfordがプログラム・マネジメントの基本的な疑問について考察し、この分野に関連する手法について解説する。プロジェクト・マネジメントとプログラム・マネジメントの役割、テクニックの関係について解説し、その違いを指摘する。[編集局:本稿で用いられるプログラムという術語は、多数のプロジェクトの集積体のようなもので、企業全体の戦略的な方向性を内包する取り組みを指す]
多くの企業のIT部門は日夜、大規模かつ複雑なシステム開発に取り組んでいる。それは例えば、新たなアプリケーションの(既存システムへの)組み込み、ビジネスモデルそのものの変化にシステムを対応させる取り組み、あるいは、組織構造の抜本的な変化を含む全体的な変更要求へのシステム面での対処などである。通常、このような大規模な取り組みでは、複数のプロジェクトが並行して進行している。マネージャ([編集局]ここでいうマネージャ=プログラムマネージャは全体を統括する人物。大企業のCIO的な役割の人物を指す)は、「従来の」プロジェクト管理的アプローチでは不十分であることに気付きつつある。その結果、多くのCIOは経験のみが頼りであり、従来的な意味でのプロジェクト・マネジメント関連の専門文献(や資料)には一顧だにしなくなっている。
本稿ではプログラム・マネジメントの5つの主要な側面について考察する。
各側面についてはこれから詳しく見ていく。同時に、プロジェクト・マネジメントと対比させ、成功に必要な作業と結果についても解説する。
プログラム・ガバナンスは、プログラムを誘導し、幹部レベルのリーダーシップ、監督、管理を提供するための構造と手法を生み出す専門分野の一側面を指す。戦略的に見た場合、監督作業と企業全体の業務方針の関係を包含している。さらに、意思決定の役割や、プログラム作業の実行に関する責任もすべて包含している。
プロジェクトは簡単な管理構造によって統括されているのが一般的だ。プロジェクトマネージャが日常業務を指示し、ITの上級幹部が技術と業務内容を統合し、業務主催者は成果物がビジネス戦略に沿ったものであるかを確認する。
根本的な業務の変更や、収益に大きな影響を与える出費がかかわってくるため、プログラムの方が複雑なガバナンス構造を必要とする。実際、場合によってはその結果が民間企業あるいは役所の組織の存続を左右することもある。
図は複雑なプログラム・ガバナンス構造の例を示している。
図から分かるように、大半のプロジェクトとは異なり、プログラムには通常、さまざまな利権を持ち、幹部レベルの監督を実現する運営委員会などのグループがある。このガバナンス・グループは、プログラムの進行に合わせ、これが引き続き企業の戦略的な方向に沿っているのか確認し、最終的に取締役会にまで持ち上がる意思決定を行う。運営委員会の役割や判断力の定義は、プログラム・ガバナンス作業にとって重要な部分であり、迅速な判断と、明確で統一された方向性の促進を目指して行うべきだ。
図はさらに、プロジェクトのそれよりも複雑な典型的プログラム・マネジメント構造を示している。この構造を構築するには、具体的な意思決定機関と具体的な役割を特定し、特定のプログラム機能が誰の「所有」であるかを明確にする必要がある。
優れたガバナンスはプログラムの成功に欠かせない。うまく組織化されていない管理構造、役割や意思決定機関の重複、そして不適切な人材配置(人材不在)の役割は、プログラムがその士気を維持し続けるのを妨げ、1つ1つの判断について合意しようとする試みが限りなく続き、これを行き詰まらせてしまう。
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