「問題発見力」の強化は可能か?問題発見能力を高める(4)(2/3 ページ)

» 2004年08月27日 12時00分 公開
[秋池 治,@IT]

問題発見力の構成要素

 問題発見力は次の4つのスキルで構成されています。

1. 理解力、論理展開力(構造化スキル)

 一般的に顧客が訴える問題の多くはある問題が引き起こしている表層的な“症状”であり、それらは断片的で整理統合されていません。理解力(構造化スキル)が高まることにより、会話の内容、文書の内容、起きている事実など対象となる事象を図式化して理解する能力が必要です。

2. プレゼンテーションスキル

 理解しやすいプレゼンテーションとは、伝えるべき内容を相手が理解しやすいシナリオに組み立てることにより実現されています。シナリオの組み立てには次の2つの条件が必要です。

  • 伝えるべき内容の要点が整理されている
  • 伝えるべき内容が適切な順番に組み立てられている

 自分が相手に伝えたい内容を一度構造化し、シナリオに組み立てます。そしてシナリオに基づきプレゼンテーションを作成します。

3. ヒアリングスキル(コミュニケーションスキル)

 コミュニケーションの基本はまず“聞く”こと(ヒアリング)です。相手から問題点や実現したい内容を聞き出すヒアリングスキルが必要です。よく「コミュニケーションは難しい」といわれますが、それは相手が自分自身でも気がついていない潜在的な問題を十分に引き出せなかったり、その人の意図をつかみきれないことによります。

4. 柔軟な発想力(解決案の発想)

 物事を“多面的にとらえる”ことや“柔軟な発想”とはどのようにして実現すればいいのでしょうか。コロンブスの卵のような柔軟な発想力は、持って生まれたセンスや一瞬のひらめきではなく、次の1+3の思考を意識することにより、高めることが可能です。

1. メタ思考
 問題を鳥瞰(かん)し、問題解決の目的を意識する

 1/3 源流追求型思考
 問題の理由を「なぜ」「なぜ」とさかのぼる

 2/3 現状(の制約条件)否定型思考
 いまある制約条件が、もしないとしたらどうなるか?

 3/3 課題解決型思考
 問題がないように見える領域に、あえて課題を設定し可能性を探る

問題発見が苦手な現代の日本人

<小学生の理数離れ>

 小学生の理数離れが進んでいます。いまこのページを読んでいる皆さんの中にも「私は文系だから、理科と数学は嫌いだよ」とつぶやいている方がいるかもしれないですね。理科と算数はほかの教科と比べ、論理力を必要とする教科です。最近の小学生はこれが苦手ということは、論理力が衰えてきているのでしょうか。

<センター試験“数学の点数”と、2次試験(専門科目)の“数学の点数”に相関なし>

 今度は大学入試です。センター試験の科目「数学」の点数と、各大学が実施する2次試験の「数学」の点数について、その相関が見られなかったとの分析結果が発表されています。

 専門科目に数学を受験しているということなので、対象となるのは理科系の受験生です。そして、センター試験(数学)で高得点でも、2次試験(数学)では必ずしも点数が高くないというものです。

 この分析結果を発表した東北大学の森田教授は、大学入試センター試験の数学問題では「数学力」を十分に判定できないといいます。ほかの科目ではセンター試験の得点と2次試験の得点には相関があるにもかかわらず、数学にはそれがない……。

 原因として考えられるのは、センター試験(数学)は、“算数ドリル的”な色合いが強く、深い論理力を必要としない計算問題が多いためとみられています。それに比較して専門科目である2次試験の数学の問題は、論理力を必要とする問題であるため、双方の試験結果に相関が見られないと分析しています。

 受験生である高校生、そして入試後の大学生にも理解力、論理力の低下が見られるといえそうです。

<ビジネスマン(大人)の理解力、論理力は?>

 先日、あるセミナーに参加しました。そのセミナーの冒頭でウオーミングアップのために、すごくシンプルなクイズが出されました。例えば数種類の動物や、いくつかの数字が提示され、「この中でほかとは違う分類のモノを1つ選んでください」というのでした。

 そのクイズには、正解があるわけではなく自分が考える切り口で仲間外れを1つ選び、その理由を述べるというものでした。そのため受講者からの解答は百花繚乱、いくつも出てくるわけです。ところがこのクイズ、意外にもエリートと呼ばれる人たちは、いかにも“正解”と思われる答えが数個出ると、その後答えに詰まってしまうことがあるといいます。

 そんなとき受講者からは「ヒントをください」という声が上がるそうですが、この「ヒントをください」は、計算問題の答えのように“唯一の正解”を求めるときの心理の表れといえます。

 こんなことから推測すると、小学生や高校生ばかりでなく私たち大人も理解力、論理力が衰えているのかもしれません。

 第3回で、“現在は変化の時代”という話をしました。変化の時代のビジネスでは正解は1つであるとは限りません。つい“唯一の正解”を求めてしまう昨今のビジネスマンには「ロジカルシンキング」が必要であるといわれているのではないでしょうか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.