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» 2004年12月23日 12時00分 公開

問題発見能力を高める(6):スキルの相互関係を理解し、 問題発見力を高める! (1/2)

前回は、問題発見力強化の第一歩は「相手の話をよく聞くことから始まる」であると述べた。今回は問題発見力の強化のために「問題発見力」を構成する各スキルの相互関係について考えてみる。

[秋池 治,@IT]

 前回は“質問力”(ヒアリングスキル)について、問題発見力強化の第一歩は、「相手の話をよく聞くことから始まると」いうことをお伝えしました。今回は問題発見力の強化のために「問題発見力」を構成する各スキルの相互関係についてお話しします。

知恵と知識とフレームワーク

 1つ1つの要素(今回の場合は各スキル)も重要ですが、各要素の関係を示すフレームワークが重要だというお話をしました。フレームワークとは“骨組み”や“枠組み”のことですが、多くの要素から成り立っているものや、複雑なものを理解するときに、大いに役立ちます。フレームワークを用いずに複雑な対象を理解しようとすると、“暗記”によってこれを克服することになります。しかし、せっかく暗記したはずの“知識”は、多くの場合“知恵”として活用することができず、“知識”として知っているだけになってしまいます。

「問題発見力」を構成する各スキルの相互関係(フレームワーク)

 「問題発見力」は次の4つのスキルから成り立っています。

  1. 理解力、論理展開力(構造化スキル)
  2. プレゼンテーションスキル
  3. ヒアリングスキル(コミュニケーションスキル)
  4. 柔軟な発想力(解決案の発想)

 これら4つのスキルは別々に独立したものではなく、すべてを組み合わせて使うことで「問題発見力」が強化されます。問題発見(問題解決案の提示まで)のプロセスとそれに必要なスキルの関係は次のような関係にあります。

仮説構築

 問題発見に当たり対象となる領域をリサーチします。顧客であれば顧客の情報や顧客の属する業界情報を会社案内、ホームページなどで調査します。そのうえで顧客が抱えている問題について自分なりに仮説を立てます。仮説の構築には物事を調べる力よりも調べた情報を基に下のような推論を展開する論理展開力が重要です。

  1. 「AとBという事実から、Cであると予測できる」
  2. 「Cであるならば、Dという事実も存在するはず」
  3. 「AとBとDが事実であれば、Cであるといえる」

 上の論理展開を、医師が仮説を立てながら診断するところに置き換えてみましょう。

  1. 「くしゃみと鼻水という症状から、風邪であると予測できる」
  2. 「風邪であるならば、発熱という症状を抱えているはず」
  3. 「くしゃみと鼻水の症状と発熱があれば、風邪と診断できる」

 このように仮説を構築するために必要な論理展開力は、構造化スキルによって強化することが可能です。

仮説の検証

 問題解決に当たり、自分で立てた仮説が正しいかどうかを検証します。

 先ほどの医師の例では、仮説に用いた情報であるくしゃみや鼻水という症状が事実として相違ないか診断します。さらに「熱は出ていませんか」と限定質問や拡大質問をしたり、体温を測るなどして医師が立てた仮説を検証します。検証した事実に基づき「くしゃみと鼻水の症状があり、38度と熱もあるので風邪でしょう」と診断を下します。

 顧客に対して次の“問題発見の重要ポイント”についてヒアリングします。

  • 相手が直面している問題(症状)は何なのか?
  • それらを引き起こしている原因は何なのか?
  • 問題を解決することにより、どのような状態になることがゴールなのか?

 これが明らかにならない限り、問題解決を始めるべきではありません。真の原因が特定できていない状態で、起きている症状に対処療法をしても問題の解決は果たせません(第1回そのソリューションは本物か?参照)。

問題の理解

 “問題発見の重要ポイント”を理解するうえで“質問力”(ヒアリングスキル)が重要になりますが、“質問力”と同時に重要な能力として“理解力”があります。理解力は物事を構造化して把握する“構造化スキル”を高めることで高めることが可能です。

 “構造化スキル”……あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、構造化とはモデル化(モデリング)と言い換えてもよいでしょう。モデル化とは、現実には見ることができないものを見えるようにしたり、見えているものをより理解しやすいように表現する方法です。

 例えば分子構造モデルも構造化の一例といえます。水分子は通常目で直接見ることはできませんが、H2Oとして次のように分子モデルで表現されます。このように構造化することにより、水が1つの酸素原子と2つの水素原子から成り立っていることを表すことができます。

 会話や人の頭の中にあるイメージ(概念)を頭の中で構造化することにより、目には見えないそれらをより正しく、深く理解することが可能になります。また頭の中で描いた構造をホワイトボードやノートに書き表すことで第三者にも見せることが可能になります(可視化)。このように、ほかの人に自分の考えていること伝える際にも構造化スキルが役立ちます。

 仮説の検証のためにヒアリングした内容を構造化し、“問題発見の重要ポイント”として顧客に確認をします。

解決案の発想

 “問題発見の重要ポイント”を理解し、相手にそれを確認したならいよいよ問題解決のための解決案を“柔軟な発想力”により発想します。実は問題解決に当たり一番の難関はいかに“真の問題を見つけるか”であり、真の問題を見つけることができれば、問題解決の70%から80%は達成したといえることを第4回でお話ししました。

 柔軟な発想力(解決案の発想)は次の1+3の思考でした。

1 メタ思考
問題を鳥観し問題解決の目的を意識する
1/3 源流追求型思考
問題の理由を「なぜ」「なぜ」とさかのぼる
2/3 現状(の制約条件)否定型思考
いまある制約条件がもしないとしたらどうなるか
3/3 課題解決型思考
問題がないように見える領域にあえて課題を設定し可能性を探る

解決案の提示

 仮説構築、仮説の検証、問題の理解、解決案の発想とステップを踏んできた最後が解決案の提示です。解決案の提示に必要なスキルとしてはプレゼンテーションスキルがありますが、さらに重要なスキルとして構造化スキルがあります。

 解決案の提示に当たりいかに相手に理解してもらうかという観点から見れば、いかに相手が理解しやすい“シナリオ”に組み立てることができるかにかかっています。そのためには伝えるべき内容を一度構造化したうえで、プレゼンテーション資料を作成します。

 以上、「問題発見力」の5つのステップと各ステップで必要な4つのスキルの相互関係を解説してきました。

 皆さんの中でも、プレゼンテーションスキルやコミュニケーションスキルなど各スキルを研修として個別に受講し、その都度「研修は大いにためになった」、「これまで知らなかったテクニックやこつを知ることができた」と感じたことがあるのではないでしょうか。そしてそれらスキルは日常の業務の中で生かされているでしょうか?

 もし、うまく活用できていていないとしたら、それは各スキルを実際の仕事で組み合わせて応用するために必要となるフレームワークの存在を知らなかったからかもしれません。第6回では問題発見のための5つのステップと各ステップで必要なスキルをフレームワークに沿って理解することにより、これらスキルを実用品としてビジネスに活用することが可能になります。

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