なぜ、ITコンサルタントに依頼が来ないのか?システム部門Q&A(23)(1/3 ページ)

ちまたでは「経営にはITが重要だ」といわれており、特に中小企業でのIT活用には行政も積極的だ。ところが現実には、「ITと経営」を看板に揚げたコンサルタントへのITに関する依頼は非常に少なく、顧客開拓に苦労しているという。今回はこの問題の原因を探り、解決策を紹介する。

» 2005年07月09日 12時00分 公開
[木暮 仁,@IT]

質問

なぜITと経営が分かるコンサルタントに、仕事が来ないのでしょうか

「経営」と「IT」を専門にしている駆け出しの自営業コンサルタントです。経営にITが重要だといわれており、特に中小企業でのIT活用には行政も積極的です。ところが現実には、ITに関する依頼は非常に少なく、顧客開拓に苦労している状態です。このギャップはどこにあるのでしょうか。


意見

 当然ながら「経営とIT」の分野で成功しているコンサルタントもおられます。コンサルタントが成功するには、営業力や人脈なども含めた総合力が必要ですが、その秘訣を私は知りません。また、経営にITが重要だといわれていますが、経営者にとってそれが最優先課題かどうかには、異見があると思います。そのような本質的な議論は別途に論じるとして、ここでは、ご質問のようなギャップが生じるメカニズムを考えましょう。



経営者もコンサルタントもITをよく知らない

 経営にITが重要だといわれていますが、現実にはITに関するスキルのない経営者やコンサルタントが多いのです。

  (1)経営者はITを重視していない   

 日本能率協会「第6回 新任取締役の素顔に関する調査」2003年8月では、同年1〜6月に選任された上場企業の新任取締役が取締役として自信のある能力・資質は、「行動力」が57.6%、「判断力」が47.1%、「専門知識」は30.5%であるのに対して、「情報リテラシー」はわずか4.8%にすぎませんでした。すなわち、取締役になったときですら、情報リテラシーに自信のある取締役はほとんどいないのです。経営者になれば、さら

 CIOならば、当然情報関連知識を持っていると思われますが、「日経情報ストラテジー」2004年2月号の特集「IT投資で成果出す変革型CIO」によれば、上場企業のCIOが自信を持っている能力として「改革推進のリーダーシップ」92.7%、「方針を伝えるプレゼン能力」92.4%に比べて、「ITに関する基礎的知識」は60.4%とかなり低い状態です。また、上場企業の70%では取締役以上のCIOがいますが、そのCIOは情報システム部門出身者がたった32.6%だそうです。ですから、上場企業のCIOですら、IT分野には大した知識能力を持っていないといえるでしょう。

 さらに、「日経アドバンテージ」2004年4月号によれば、売上高が10億〜50億円の企業では、情報システム部門(部・課・係)があるのは19%、専任担当者がいるのは27%、兼任で担当しているのが38%、いないのが16%とのことです。この調査結果からも、中小企業の経営者でITを重視している人はかなり少ないと考えられます。

 (2)多くのコンサルタントはITに自信がない     

 経営コンサルタントには、マーケティングや生産・開発、財務、人事、ITなどと各人が専門とする分野は多彩です。統計は知らないのですが、私の実感としてはIT以外の分野のコンサルタントで、ITに関する能力に自信のある人は比較的少ないようです。

 また、IT分野を専門とする技術士や中小企業診断士は、ほかの分野と比較して、企業に属している割合が多く、コンサルタントとして独立開業している人は少ないと思います。しかも、ITコンサルタントとはいっても、システム開発など下流工程の受注もしている(現実にはそれが収入源)ことが多く、「経営とIT」だけを専門としている人はかなり少ないのが現状です。


 また、中小企業の経営支援のために、市役所や商工会議所、その他多くの公設センターがありますが、それらの相談窓口の人たちは、IT支援制度などには精通していても、「経営とIT」分野での知識経験を持っている人はあまりいません。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.