企業内情報のコントロールは、IT部門の重大な責務インタビュー:ITIL作成者に聞く(2/2 ページ)

» 2005年07月21日 12時00分 公開
[聞き手:@IT情報マネジメント編集部, 文:生井 俊,@IT]
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ITILの未来

──ワールドワイドではITILはどのように使われていますか? 何か、使い方に変化などはありますか?

 数年前なら、企業ではITILの内容を選べました。しかし、ISO 20000(※)が制定されることにより、ITILが認証取得のために必要なものになります。

 先ほどのコーポレートガバナンスの話が絡んでいて、そういうことに対して自社はきちんとやっているといえるようにするには、今後はISO 20000を取る。そして、ISO 20000を取るためにITILを参照するという時代になるでしょう。

※ITILはITサービスを実施するうえでのベストプラクティス集だが、それがきちんと実施されているかどうかを判定する基準として英国規格BS 15000が存在する。現在、これをベースにISOにおいてITサービスマネジメントの国際標準作りが進められており、年末にもISO 20000として制定される見込みになっている。

──ITILの使われ方で、日本特有のものがあると感じられていますか?

 日本での経験がそれほどありませんが、ほかの国との違いを感じることはないですね。

 マネージャがすぐに解決策が欲しいから「ツールでも買ってこい」というのはどこの国でも同じです。基礎的な部分は、世界中一緒です。ですから、ほかの国と同様に日本でも今後発展する可能性は秘めています。

──日本ではマネジメントフレームワークが使いこなせていないという話がよくありますが、それはどこの国でも同様なのでしょうか?

 それがなぜ特別な問題になっているのか、理解できません。日本がマネジメントをうまくできていないというけれども、では過去の栄光は何だったのでしょうか。トヨタ、ホンダ、ニッサンなどは世界で一流です。それは日本にすぐれたワーキングプロセスがあるからです。それなのに、なぜそれが問題になってしまうのか、全然分かりません。とにかく、ITILは受け入れるのはそんなに難しいことではありません。本当に明確なものですからね。

複雑化するITインフラをコントロールするために

──今日、世界的にITILが注目を集めているわけですが、ITサービスにおいてはどのような課題があって、そうした状況になっているのでしょうか?

 インフラの複雑化です。パソコンなどはそれぞれの自宅にもあり、インフラは企業内だけのものではなくなっています。従来なら、IT担当者が企業内のインフラをコントロールすればよかったのですが、いまでは従業員の自宅にまで範囲が広がってしまっているため、コントロールできる代物ではなくなっています。

 また、これまでインフラといえばハードウェアだけでしたが、いまは情報やデータも管理しなければなりません。これは利用者自身が決定しますから、コントロールができないし、標準のない状況に陥っています。

 わたしたちのような管理側の本音はそうした使い方はやめてほしいと思っているのです。しかし、ユーザーはそれをやめることができない──これが問題なのです。

 すでに、たくさんのインフラがあり、いろいろな組織や場所から個人がアクセスし、仕事をするようになってきています。セキュリティが一番の課題で、今後データ保全の方法や標準化など考えていかなければならないでしょう。

──そういうものを管理するための仕組みを、ITILやISOをベースに社内に構築すべきだというわけですね。

 そういうことです。ITILも進歩していきますから。

──ところで、ピンクエレファントはまだ日本では直接のビジネス展開されていないそうですが、日本市場への進出計画はどのようになっていますか?

 多分、やれるのではないかと思っています。ただ、わたしたちは世界中から来てほしいとお願いされています。なぜなら、わたしたちの計画が強力だからです。インド、南米、中国、日本などあらゆる人々から誘われていますが、残念ながらいろんな場所を同時に、ということはできません(笑)。

ALT ピンクエレファント アジア・パシフィック担当バイスプレジデント レイチェル・ペニングス氏(左)と「ITMSシンポジウム2005」主催者であるHDI-Japanの代表取締役CEO 山下辰巳氏(右)と

──最後に、まだITILの取り組みを始めていない日本のユーザーに、どのようなアプローチをしたら良いか、アドバイスをお願いします。

 ITILには多くの情報があります。メソッドではありませんから、一度に全部やらなくてもいいし、そうやるものでもないです。毎年1つずつやれば、いつかは埋まります。辞書のようなものですから、ちょっとずつ使っていけばいいのです。それぞれの企業が必要としているサービスデスク、ヘルプデスク、チェンジマネジメントの部分がよく使われるのではないでしょうか。

著者紹介

▼著者名 生井 俊(いくい しゅん)

1975年生まれ、東京都出身。同志社大学留学、早稲田大学第一文学 部卒業。株式会社リコー、都立高校教諭を経て、現在、ライターとして活動中。著書に『インターネット・マーケティング・ハンドブ ック』(同友館、共著)『万有縁力』(プレジデント社、共著)。


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