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» 2005年07月21日 12時00分 公開

インタビュー:ITIL作成者に聞く:企業内情報のコントロールは、IT部門の重大な責務 (1/2)

ITIL認定や教育で知られるピンクエレファントの社長兼CEOで、ITサービスマネジメント分野の国際的な権威でもあるデビッド・ラトクリフ氏が2005年5月に開催された「ITMSシンポジウム2005」に参加するため来日した。同氏にピンクエレファントの活動やITILの現状、今後の展開について聞いた

[聞き手:@IT情報マネジメント編集部, 文:生井 俊,@IT]

「わたしたちがITILを作ったぞ」とはいいません(笑)

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ピンクエレファント
社長兼CEO
デビッド・ラトクリフ氏
(David Ratcliffe)
25年以上の経験を有する、ITサービスマネジメントにおける国際的な権威。1980年代のITIL策定にもかかわり、1990年代には北米でITIL認定コースを実施し、北米No.1のITIL指導者の呼び声も高い。

──ピンクエレファントについて教えてください。

 本社はカナダのトロントで、米国にブランチがあります。ラテンアメリカ、オセアニア、東南アジア、南アフリカ、ヨーロッパ、……と地球規模のネットワークを形づくっています。

 会社の主な活動内容は3つです。1つ目は国ごとに行っている会議などの大きなイベントにフォーカスすること。2つ目は、教育トレーニング。ITILのトレーニングに関しては、ピンクエレファントが世界で一番の会社だと思っています。ITIL認定書のほとんどは、ピンクエレファントが出したものです。3つ目は、コンサルティングサービス。ITILのベストプラクティスの利用に関して、実践的な方法をコンサルティングパートナーとして提供しています。

──ピンクエレファントとITILのかかわりについて教えてください。

 ITILは英国政府が作ったといわれていますが、実際のところは英国政府は作ったのではなく頼んだだけです。1985年から1987年ごろにかけて、ITILを発展させるために依頼を受けた企業がいくつかあり、その1つがピンクエレファントでした。1989年にITILに関する最初の書籍『ヘルプデスク』が出ました。ピンクエレファントをはじめとする数社の企業は、その標準のドキュメント化に協力しています。

 そのころわたしは違う会社にいましたが、ITILに関連して政府レベルの仕事もしていました。ピンクエレファントが後に、その会社を吸収しています。ピンクエレファントだけがITILにかかわったわけではないので、「わたしたちがやったぞ」とはいえないのです(笑)。

──ITIL認定などを含め、御社で教育を受けた人数はどのぐらいですか?

 約10万人です。どの国でも、毎年どんどん受講者が増えています。英国から1992年に認定を受け、ピンクエレファントが世界で最初に教育コースを設置しました。イギリスで12名受講したのが最初です。初期から教えている人がいまも教えているなど、本当に経験豊富な人たちがいます。

IT部門に新たに課せられた重大な責務

──ITIL以外にはどのようなビジネスを行っていますか?

 わたしたちのフィールドは、ITマネジメントのベストプラクティスで、ITILがその大部分を占めます。米国では多くの組織がITガバナンスに関する手助けを求めています。ITガバナンスは単にITILだけで対応できるものではなく、ITILではコントロールできない部分が多くあります。

 わたしたちの焦点のほとんどは、ITILと何らかのプロジェクト管理、戦略的なアドバイスです。ITILは主に業務レベルと戦術の計画レベルに関するものです。しかし、ITガバナンスにおいては戦略的な計画の重要度が増しており、いうなればCIOの統治レベルの話です。それらの人々を助けるためには、ITILでは十分ではありません。

 このところ米国では、特にコーポレートガバナンスについての話題がたくさんあります。なぜかというと、電力会社のエンロンのようなスキャンダルがきっかけです。新しい法律の制定もあって、経営者たちの注目は大きくなっています。

 コーポレートガバナンスを整えるのは非常に難しい事柄ですが、ITはそれを可能にします。ですからわたしたちは顧客にコーポレートガバナンスを支えるITガバナンスについてもアドバイスしています。

──そうしたニーズは、どのくらい強いものですか?

 とても強いものがあります。2004年11月にサーベンス・オクスリー法が施行されて、米国の上場企業はこのルールの下に会社運営をしなさいというレギュレーション(規制)が出されたのが1つのきっかけとなりました。とても大きな話題です。

 レギュレーションが厳しくなったことで、正しい情報が自社内から出てくることに自信が持てない企業のCEOは、責任(実刑の可能性もある)を取る必要があるので、自ら「辞任したい」という事態になったり、上場を撤廃するという動きがあったりしています。

 カナダでも、この2年の間にコーポレートガバナンスに関する深刻な問題がありました。カナダの有力企業ノーテルが不正を行い、経営陣は完全に入れ替えになりました。プラクティスや標準化の貧弱さ、コントロールの欠如がその原因だとみています。彼らは法律に反した悪い手本になってしまいました。

──CEOやCFOが責任を取らなければならないという状況は、CIOやIT部門に対してどのような影響がありますか?

 今日、情報はすべてITシステムから出てくるので、CEOはIT部門に対して、正確で信頼できる情報をタイムリーに出すことができる体制を作るよう要求することになるでしょう。IT部門はそれに対応しなければなりませんから、ITILなどを使って、より正確で効率の良いオペレーションを必死になって考えなければいけません。

 IT部門にとっては負担ではありますが、一方でIT部門の品質が高まるという効果も期待できるでしょう。

──インターナルコントロール(内部統制)の仕組みを作れない役員は生き残れないということですね。

 そのとおりです。このようなケースはノーテルだけでなく、ほかの企業でもあります。

 データを正確に作っていくところで、ITILの重要性が増してきているので、CIOはそうした点についても注意を払って進めていかなければなりません。もちろん企業内の情報をきちんとコントロールすることもIT部門の役割です。

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