中国人ブリッジSEの意外な落とし穴オフショア開発時代の「開発コーディネータ」(14)(2/3 ページ)

» 2005年11月01日 12時00分 公開
[幸地司,アイコーチ有限会社]

中国事情に疎いブリッジSEは、同じ中国人から毛嫌いされる

 あなたの周りには、こんな自称「中国人ブリッジSE」が存在しているのではないでしょうか。

  • 日本語1級
  • 技術2級
  • マネジメント3級

 日本側のプロジェクトチームのアシスタントとしてなら合格かもしれませんが、オフショア開発のブリッジSEとしては心もとないです。

 筆者が調べた限り、日本には残念ながら「ブリッジSE」を定義した公式文書は存在しませんでした。だからこそ、本連載のように1年以上にわたってオフショア開発に特化したコラムを書き続けることは、大きな社会的意義があると信じています。

 今月、筆者の元に上海のオフショア開発ベンダに勤務する中国在住の中国人読者から、下記のようなご意見をいただきました。

「ブリッジSEというのは、中国現地の開発チームと、日本の顧客との間に挟まれる役割であり、ブリッジ+SEのことです。具体的には、3つの役割があると思います」

 その3つの役割とは、以下のとおりです。

  1. 顧客からの指示や連絡を、正しくかつ漏れなく中国側に伝達すること(同様に、中国側の意見も、日本にうまく伝える)
  2. 顧客の暗黙のニーズを把握して、臨機応変に改善提案できること
  3. 日本側のプロジェクトマネージャを補佐すること

 しかし、繰り返しになりますが、日本国内のブリッジSEは意外にも中国事情に疎いのです。中国側の中国人担当者は、こうした中国事情に疎い中国人を、かなり冷めた目で見ているのが現状です。中には、嫌悪感を持っている人もいるくらいなのです。

 筆者の元に「中国事情に疎いブリッジSE」に関して多くの意見が寄せられました。そのほとんどが、中国側の中国人から届いた厳しい意見でした。いくつか紹介します。

-----Original Message-----

いま、日中IT業界で活躍している中国人ブリッジSEの一部には、中国の現実やオフショア開発の現場事情について全然知らない者がいます。

日本人よりましな点といえば、中国語が話せることくらいなもの。通訳以外には、ブリッジSEの役割を全然果たしてくれないケースがかなりあるのではないかと思います。

-----Original Message-----

 これは手厳しい意見ですね。

-----Original Message-----

ブリッジSEの定義は、人によってそれぞれ異なります。弊社では、ブリッジSEは基本的にPM(プロジェクトマネージャ)とペアで動いています。ですから、弊社では、管理能力より、業務知識と日本語能力が問われます。

幸地さんが述べていた「日本国内の中国人ブリッジSEは、意外にも中国事情に疎い」という意見は、私もおかしくないと思います。もっというと、中国国内にいても中国事情に詳しく、かつ正しく知っている人は、少ないと思われます。

それには、以下の理由が考えられます。

・変動が激しい

・中国自体が大きくて、地方によってかなり事情が違っている

・中国事情というテーマが大き過ぎる

-----Original Message-----

 このメールで指摘されたとおり、一口に「中国」を語るのは無理があります。

-----Original Message-----

ブリッジSEは、あくまでも仕様や技術を伝える役目であり、中国側の開発進ちょく、品質管理などが、やはり中国現地のリーダーの責任だと思います。

しかし現状として、現地リーダーが「日本標準」を理解して開発することがほとんどないのです。ある意味では、ブリッジSEではなくブリッジPMが必要でしょう。

-----Original Message-----

 ブリッジSEならぬ、ブリッジPMの必要性を説いています。新しい発想ですね。中国は、毎年10万人以上のIT技術者を輩出する人材大国です。優秀な人材もたくさんいますが、実務経験ゼロにもかかわらず、何でもできると勘違いしている偽エリート人材も存在するのが実情です。

 このように、あなたの会社に「自称ブリッジSE」が紛れ込む可能性は決して小さくないのです。こうした危ない橋を渡りつつも、世界は確実に中国オフショア開発への依存度を高めつつあります

 東京都内で独立系ソフトハウスを経営する友人は、「好き嫌いや多少のリスクがあろうとも、コスト勝負の世界で生きる限りは、中国マンパワーの活用は避けて通れない」と、決意をにじませています。

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