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» 2005年12月13日 12時00分 公開

いろいろある基準をどう考えて、どう使うか?システム部門Q&A(28)(3/3 ページ)

[木暮 仁,@IT]
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知識体系では――PMBOKを例に考える

 PMBOKを例にします。これは、プロジェクトマネジメントを9つの知識分野に分けて、立ち上げ、計画、実行、終結および監視コントロールの5つのプロセスについて、必要となる知識体系を挙げたものです。必要な知識を列挙したというよりも、その局面で何をしなければならないかを示したものです。チェックリストと同じように、自分に欠けているスキル、行うべきことのチェックにも使えますし、将来の計画にも使えます。

    知識そのものを得るものではない       

 PMBOKは、知識分野とプロセスで何が必要かを挙げただけで、具体的な知識そのものや、それを得るためにどうすればよいかを示したものではありません(膨大な参考文献のリストはありますが)。ですから、PMBOKを熟読しても、スケジューリング技法や原価計算の方法を習得することはできないし、それを習得するためのカリキュラムも得ることはできません。まして、実務でのスキル向上を得る方法などもありません。

 従って、PMBOKを理解してもプロジェクトに必要な知識そのものが得られるのではありません。極端にいえば、このようなことが必要になるのだから、それができるように自分で勝手に勉強しろというものなのです。

    教条主義的な理解に流されるな      

 PMBOKは、プロジェクト運営の各局面において、インプット、ツールと技法、アウトプットを挙げています。これも網羅的な視点で記述されているので、忠実に実施するのには、膨大な文書化が必要になります。それでややもすると、業務作業者に多大な報告を強いるようになり、プロジェクトマネージャはその整理に多忙になります。

 情報システムの構築で、プログラマに毎日の達成状況を報告させ、プロジェクトマネージャは、それを多様な形式の文書にまとめてPMOに報告するのが日課になり、肝心のユーザーとの打ち合わせが不十分になり、その結果、実施段階になってから大きな手戻りが発生したというのでは本末転倒です。

危険を避けるために

 このように、各種の基準はあくまでも基準であり、それを現実に適用するには状況に応じた対応が必要です。でも、あまりにそうすると、基準が形骸化してしまい、基準が基準としての意味を失ってしまいます。

 それを避けるためには、これらの基準をそのまま採用するのではなく、自社の環境に合致した基準に作り替えること、その自社基準は必ず守ること、現実と合致しないときは、基準を破るのでなく、基準の見直しを検討することなどが重要なのです。

 さらには、これらが円滑にできるような体制作りや職場文化を作ることが重要です。

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筆者プロフィール

木暮 仁(こぐれ ひとし)

東京生まれ。東京工業大学卒業。コスモ石油、コスモコンピュータセンター、東京経営短期大学教授を経て、現在フリー。情報関連資格は技術士(情報工学)、中小企業診断士、ITコーディネータ、システム監査、ISMS審査員補など。経営と情報の関係につき、経営側・提供側・利用側からタテマエとホンネの双方からの検討に興味を持ち、執筆、講演、大学非常勤講師などをしている。著書は「教科書 情報と社会」「情報システム部門再入門」(ともに日科技連出版社)など多数。http://www.kogures.com/hitoshi/にて、大学での授業テキストや講演の内容などを公開している


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