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» 2006年04月01日 12時00分 公開

「情報マネジメント」を実現する4つの施策“情報洪水”時代の情報流通戦略論(3)(2/3 ページ)

[吉田 健一(リアルコム株式会社),@IT]

情報の整理・整とん

 「情報マーケット」ができても、やみくもに情報を流通させるのではなく、受け手の視点で情報を再度、整理・整とんする必要がある。

■ストックとフロー

 まず、整理をしなければならないのが、「ストック/フローの整理」である(図12)。ストックとはある程度長期間保管し再利用する可能性が高い情報であり、マニュアルや手順書、テンプレート、商品説明資料などはストック情報に当たる。一方、フローは有効期限が短くすぐに価値がなくなってしまう情報であり、お知らせ、連絡などはフロー情報である。

 このストックとフローがあまり意識されずに混在・混乱してしまうため情報洪水を引き起こしてしまう。例えば「マニュアルの更新がメールで添付されて送られてくるので最新版がどれだか分からなくなってしまう」「業務連絡データベースが更新されても誰も見に行かない」という問題をよく耳にするが、これは「ストック/フローの整理」ができていないことに起因している。ストックとして蓄積しなければいけないものはストック用のツールを使い、個人間のフローはメール、組織レベルフローはポータルを活用する、というようにストック/フローと対応するツールの使い分けを再整理することが必須である。

図12 ストックとフローの整理(クリック >> 図版拡大)

■プッシュとプル

 「ストック/フロー」と似て非なる概念として、「プッシュ/プルの整理」という考え方がある。「プッシュ」とは、情報が発信されたときに強制的に情報が受信者に送られ、受信者は受動的に情報を受け取る形態である。メールによる通知やFAXによる連絡などはこれに当たる。一方、プルとは、情報が発信されたときではなく、受信者が必要なときに情報を能動的に受け取りにいく形態である。情報が欲しいときに掲示板やデータベースを見に行くなどの行為はこれに当たる。本来個人によって、「プッシュ」してほしい情報と、「プル」でもよい情報は異なっているにもかかわらず、何でもメールで「プッシュ」されてきたり、すぐに欲しい情報まで「プル」で取りに行かねばならないことが、情報伝達の非効率さを生み出す原因である。

 そこで、この「プッシュとプルを整理」するのである。個人ごとにどの分野・カテゴリの情報を「プッシュ」してほしいか、どの分野の情報は「プル」でよいかを選択させるのだ。例えば、情報の受け手は、個人ごとに自分がどのカテゴリの情報を「プッシュ」してほしいかを事前に選択しておく。選択されたカテゴリに情報が配信されたときのみ、メールでその内容が通知されたり、ポータル上に新着情報として表示される。それ以外の情報は、適宜「営業の情報共有の場」に「プル」で見に行くことで入手できるという仕組みだ。

■フォルダとインデックス

 次に、情報の分類体系自体も受け手本位の発想で見直す必要がある。受け手本位の情報分類体系としては「インデックス構造」という考え方がある(図11)。情報分類体系というと「フォルダ構造(ディレクトリ構造)」をイメージする場合が多い。「営業部門>営業日報>10月分」という階層を降りていく分類方法だが、正直にいってこの「フォルダ構造」が今日の情報分類の複雑さを生み出している元凶といってもよい。

 「フォルダ構造」は情報の出し手からするとすっきり分類できて管理しやすい分類方法であるが、受け手の思考パターンは「フォルダ構造」にはなっていない。例えば、自動車メーカーが「セダン」「ワゴン」「RV」「ミニバン」といった分類体系で情報を整理しようとしたときに、RVタイプのミニバンについて情報を探したければどこを見ればよいのか。そもそも、「RV・ミニバンの営業戦略資料」はどこに入っているのか。

 そこで、この「フォルダ構造」とは別の考え方が「インデックス構造」だ。これは、各情報をどこかの分類に入れ込むのではなく、各情報に「札」を付けていくイメージである。例えば、「RVとミニバンの営業戦略」という情報は、「RV」と「ミニバン」の両方のカテゴリにひも付ける。情報によってはすべてのカテゴリにひも付くものもあるだろう。「RV」を見たときも、「ミニバン」を見たときも、「RVとミニバンの営業戦略」の情報にたどり着けるわけだ。

図13 フォルダ構造とインデックス構造(クリック >> 図版拡大)

 また、インデックスには複数次元もあり得る。例えば、業務改革の結果をまとめたドキュメントを蓄積するのであれば、組織、業務分類、目的の3つの軸で分類・カテゴリ体系を作り、それぞれの次元でどこに位置付けられるかをひも付けていく。前述の三菱東京UFJ銀行の場合も、商品軸と業務プロセス軸の2軸で情報を整理したことで、受け手は業務に必要な情報を容易に検索できるようになったのである。受け手の視点でどのような分類軸が必要かを、ゼロベースで検討することが重要である。

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