システム開発プロジェクトの魅力を伝えようユーザーサイド・プロジェクト推進ガイド(13)(1/2 ページ)

システム開発の経験に乏しいメンバーの“やる気”を引き出すには、システム開発という仕事の楽しさや魅力を分かってもらうことが一番だ。オリエンテーションでその魅力を伝えておこう。

» 2006年08月02日 12時00分 公開
[山村秀樹,@IT]

メンバーの“やる気”でドライブするチームをつくるには

 今回もオリエンテーションで話すべきことについて考えます。

 人はやりたいことや得意なことをするときは、そうではないときに比べて、3倍ほどの力を発揮するといわれています。メンバーのやりたいことと仕事がマッチしていれば、チームとしての能率も上がり、活気も出て雰囲気も良くなります。メンバーがやりがいを持って仕事に臨むことは、理想の人事である「適材適所」にほとんど等しいものです。

 筆者は、リーダーとしての最高のチームビルディングとは、この状況をつくることだと考えています。メンバーにやらせようとするのではなく、やる気にさせるのです。少ない人数と時間で作業をこなすためには、各人のパフォーマンスが大きな価値を持ちます。「好きこそ物の上手なれ」──これが最もハイパフォーマンスを期待できます。

メンバーにやりがいを知ってもらう

 プロジェクトメンバーに選抜されたのは、必ずしもシステム開発プロジェクトの仕事をやりたいと思っている人ばかりではないでしょう。コンピュータ・システム開発について経験のない人はもちろん、興味を持ったことさえない人もいるでしょう。ひょっとしたらコンピュータを使ったことのない人もいるかもしれません。中には無理やりプロジェクトチームに入れられた人もいるでしょう。

 このような人たちにはシステム開発の楽しさ、やりがいを知ってもらいましょう。相手がシステム開発を経験したことのない人たちであれば、システム開発の魅力を受け入れてくれる余地は大いにあります。まだ若くて好奇心のある人であればもちろんのこと、ほかの仕事でキャリアを積んできたのに「いまさら別の仕事を覚えなければならないなんて」と苦痛と感じる人であっても、システム開発の面白さは分かってもらえるはずです。

 逆に、システム開発に苦い思いがあって、この仕事が嫌いになってしまった人に、面白さを認識させることは厄介です。嫌になった理由をひっくり返すだけの理論武装をしなければなりません。恐らく、その人は仕事そのものを嫌っているのではなく、プロジェクトのマネジメントに不備があって嫌な思いをしたということがほとんどだと思います。あるいは、最初から無理なプロジェクトをやらされたということが理由になっているのかもしれません。このような人たちには、プロジェクトの具体的なプランとマネジメント方法について話し合いを行って、理解してもらう必要があります。

 はたから見ると、システム開発は「大変そうだ」「面倒そうだ」「難しそうだ」と思われているかもしれません。確かにそのとおりで否定はしませんが、それをメンバーに自虐的にマイナスイメージとして押し付けてはいけません。これらの大変さもひっくるめて、システム開発はやりがいのある仕事として話していただきたいと思います。

熱く輝くリーダーを演出する

 また、仕事の楽しさややりがいを語ることは、メンバーのモチベーションをつくるだけではありません。リーダーが自らをリーダーらしく見せるための最初の機会でもあるのです。

 仕事の楽しさややりがいを語る人は熱く輝いて見えます。人が人のいうことを聞くのは、何をいっているかによるのではなく、誰がいっているのかによるといいます。輝いている人のいうことは聞かれるものです。そして、人を感化するパワーがあります。

 楽しさややりがいはリーダーこそが語るべきです。物事を相手に伝えリードするべき役割であれば、熱さや輝きを演出する意味でもやりがいを語る価値はあります。

人から喜ばれる仕事である

 「最もやりがいを感じることができるのは、他人から喜ばれていると実感するときだ」という人は多くいます。システム開発はまさに人から喜ばれる仕事です。

 エンドユーザー(社内の利用者)に喜んでもらうことは、プロジェクトの目的にはなりませんが、その目的達成のための指標の1つとして必然的なものだといえるでしょう。

 プロジェクトの目的が、「売り上げアップ」「コストダウン」「品質向上」「環境方針の実現」……など何であっても、それに関する仕事は正確で無駄なく、スピーディであることが要求されます。恐らく単純な仕事であることはなく、また人数も、作業ボリュームに比べて余裕があるとはいえない場合が多いでしょう。

 「最適な業務プロセス」を支援するシステムを作るのであれば、業務を自動化したり、次工程をガイダンスで案内したりします。人が入力したデータや関連システムから受け渡されたデータをチェックして、トラブルを回避します。これらは最近話題になっている内部統制の一部分ですが、これらの仕組みを企画・設計し、実装することはエンドユーザーを面倒な作業や不要なストレスから解放することにつながります。

 もちろん、目的達成のための全体最適化──すなわち業務変更の裏側には部分改悪というか、新たな作業が発生する業務部門があるかもしれません。この場合、その部門の人からは喜ばれるどころか、嫌がられるということになります。しかし、ここにも人から喜ばれるべきポイントが存在します。新たに発生する作業による負荷の増加を最小限に抑え、さらにプラスαとなる機能を考えて、それが可能となれば感謝されることは間違いないでしょう。

 優秀な営業マンの話として「顧客満足は私の満足」ということを聞いたことがあります。このようなことは誰もが無意識のうちに感じていることです。ただし、無意識で感じていることと、意識したモチベーションとして行動に利用し、かつ実感するのとでは大きな違いがあります。メンバーに、システム開発は人に喜ばれる仕事であることを話して、これを意識させるのは大切なことです。

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