“新・お作法”定着への道──考え方の改革情報活用の新・お作法(2)(1/2 ページ)

パソコン時代にはオフィスワークの新しい“お作法”が必要だ。その変革はどのような手順で行うのがよいのだろうか? 具体的方法を指南していこう。

» 2006年12月19日 12時00分 公開
[村田聡一郎,リアルコム]

本稿は、リアルコムが発行するホワイトペーパー「VISION」の『情報活用の「新・お作法」がワークスタイルを革新する』に加筆・修正を加えたものを、許可を得て転載したものです。



 前回の『いま、求められる新たな「情報作法」』では、この10年の間、企業はアクセル全開でオフィスのIT化を進めてきたのに対して、ユーザーが情報を扱う方法や考え方が変わっておらず、いまこそ時代に即した“新・お作法”が必要であることを述べた。

 さて、それでは「ブレーキを利かせる」ためには、具体的には何をしたらよいのであろうか。リアルコムでは、“新・お作法”は全体として5つのレイヤーに分けられると考えている。

ALT 図表1 新・お作法の全体像(クリック > 図版拡大)

 まず横軸は、左から順番に、「(1)情報収集」「(2)情報作成」「(3)情報管理」「(4)伝達・コミュニケーション」「(5)会議」の情報に関する5業務である。(1)(2)(3)が“文書”、(4)が“メール”、(5)は“会議”と考えていただいた方が分かりやすいかもしれない。

 一方、縦軸は、下から順番に、「A. 情報に対する考え方」「B. スキル研修」「C. ガイドライン&テンプレート」「D. ITインフラによる見える化」「E. ベストプラクティス横展開」である。この縦軸のA〜Eが“新・お作法”である。

 以下、A〜Eを順番に説明していく。今回は、Aの「情報に対する考え方」を取り上げる。

A. 情報に対する考え方──基本ポリシー

 Aは、“新・お作法”全体の基礎となる、「情報に対する考え方」の改革である。新・お作法のような、すべてのビジネス活動にかかわりのある改革を進めるには、まずそのコンセプトをはっきりさせて、ベクトルをそろえることが重要である。これにはさらに、全社レベルと個人レベルの取り組みがある。

全社レベル1:情報は「個人のもの」ではなく「会社のもの」

 まず、全社レベルにおいて、「情報は“個人あるいは自部門のもの”ではなく“会社のもの”である」という発想の転換が必要である。

 これまで情報は、それを保有している社員個人または部門の“所有物”である、と見なされがちだった。「これはウチの情報だ、他所(ヨソ)に開示する義務はない」というわけである。

 外回りの営業用に貸与されている営業車を「自分が運転しているのだからオレのものだ」と主張する社員はいない。しかし情報となると、どうも“オレのものだ”という勘違いに陥りがちだ。ホワイトカラーの場合、主要な仕事が「何らかのインプット情報に自分なりの付加価値を加えてアウトプット情報とすること」なので、余計に「情報=自分の付加価値=自分のもの」と考えてしまうのであろう。

 しかし、会社から給料を受け取ってやっている仕事の一部である以上、そのアウトプットも自分のものではない。あくまで会社のものだ。※


※ むろん、個人情報のように「会社のもの」とはいい切れない情報もある。ここでは所有物(所有権)にたとえて説明してはいるが、論じているのは情報の人格権や財産権といった側面ではなく、管理主体に関することがらである


 業務で生み出される情報は「個人のものではなく会社のものである」という意識をまずは“お作法”を推進する事務局などの関係者が、次いで経営層が持つことで、この後に続く“お作法”施策に一貫性が出てくる。情報は会社のものであるという前提に立てば、

  • 情報は自分が使うと同時に、ほかの社員の活用も促進するべきである(情報の活用)
  • 機密以外の情報は原則としてすべて共有するべきである(情報の共有)
  • 機密情報などきちんと管理すべき情報は何かを明確にし、それに該当する情報については適切な管理を行うべきである(情報の管理)

といった方向性が自然に出てくる。まず初めに、このような形で基本的なベクトルを合わせておくことが非常に重要である。

ALT 図表2 情報に対する考え方の転換

 念のためお断りしておくが、すべての情報をやみくもに全社員からアクセスできるようにすればよいわけではもちろんない。「特段の理由がない場合、情報は基本的に公開する」を原則とすべき、ということだ。人事部門が保有している大部分の情報や、研究開発部門の新技術に関する情報などは「特段の理由がある」のだからアクセスを制限するのが当然だ。

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