“新・お作法”定着への道──考え方の改革情報活用の新・お作法(2)(2/2 ページ)

» 2006年12月19日 12時00分 公開
[村田聡一郎,リアルコム]
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全社レベル2:情報はレベル分けして管理する

 発想を転換したら、次はそれを実行に移す。全社レベルで最初に行うべきことは、「情報管理規程」を作り、適用していくことだ。「情報管理規程」と書くと大げさに聞こえるが、これは「当社は情報をこのように区別して扱いますよ」と宣言しているにすぎない。

 例えば製造業A社では、情報管理レベルを図表3のように4段階に区分した。

ALT 図表3 A社事例〜情報管理規程

 「機密情報」とは、「法令」や「顧客との契約」または「業務上の要請」によって、厳重に管理することが必須となっている情報である。例えば「顧客情報」や「機密保持契約の対象となっている情報」、また「人事情報」や「他社との資本提携」などさまざまなものが該当する。これらに関しては、しっかりとした文書管理システムを用意し、適切なアクセス権のある社員のみアクセスできるようにしておかなければならない。たとえ社長といえども、アクセス権のないフォルダには触ることができないことが望ましい。

 機密情報以外のものはすべて「情報活用」と位置付けられるが、A社ではこれをさらに3段階に区分し、それぞれ「全社情報」「部門情報」「参照情報」とした。

 「全社情報」とは、各部門が業務として作成、保管、保存する情報のうち、全社で共有すべき情報である。全社員が共有すべき情報というのは当然ながら数はかなり限られるので、これは全社ポータルに掲示していく。「部門情報」とは、各部門が業務として作成、保管、保存する情報のうち、特定対象の間で共有すべき情報として発信する義務のある情報である。こちらは「特定対象」ごとに用意されている職種別ポータルに掲示される。そして、それ以外のすべての情報が「参照情報」である。これらは従来あるファイルサーバにそのまま保管することにした。

 この事例からも分かるように、情報の管理レベルを決めたら、それを裏付ける管理システムを同時に整備しなければ意味がない。「機密情報を厳重に管理する」といいながら、カギの掛からない棚に置いておくのでは話にならないからだ。※


※ 不正競争防止法上の営業秘密でも、「秘密として管理されていること」(秘密管理性)が要件の1つとして挙げられている


個人レベル:社員個々人の自覚を促す

 全社レベルでの取り組みと同時に、個人レベルでも「情報に対する考え方」に関する取り組みが必要である。具体的には、“新・お作法”はなぜ必要なのか? をきちんと理解させることが肝要だ。でないと、以後の活動はすべて「仏作って魂入れず」に終わってしまい、実質的な効果がなくなる。

 新・お作法が必要な理由は3つある。

1.IT時代に業務を効率よく行うため

“新・お作法”は、紙の時代に合ったお作法をIT時代に合わせて作り直したものにすぎず、その必要性については何ら変わるところはない。ただし、情報とIT機能が過剰なまでに提供されてしまっている現在、業務を「効率よく」行うためには「ブレーキ」を利かせることも必要になっている。

2.IT化のメリットを最大限に享受するため

ITの大きな特徴は、再利用が極めて簡単にできることである。テンプレートや他人が作った文書をできるだけ流用・再利用することで業務効率を大きく改善できる。従って、再利用を常に意識して仕事を進めるべきなのが、紙時代との大きな違いである。

3.IT化のデメリットを最小限に抑えるため

IT化により、情報漏えいやウイルス感染など、紙の時代にはなかった個人レベルでのリスクがけた違いに大きくなっている。もはやリスクについての正しい知識を持たずに行動することは許されない。

 そして、個人レベルでの取り組みをより効果的に普及させるためには、「B.スキル研修」も必要となってくる。

 次回は、その「B. スキル研修」と「C. ガイドライン&テンプレート」を取り上げる。

筆者プロフィール

村田 聡一郎(むらた そういちろう)

リアルコム株式会社 ディレクター

東京都立大学法学部卒、ライス大学MBA

外資系IT企業勤務、米国本社駐在を経てリアルコムに参画。ナレッジマネジメントコンサルタントとして、国内外の大手企業のナレッジマネジメントプロジェクト・企業変革プロジェクトに参画。主にIT系、グローバル、営業系のナレッジマネジメントに精通。


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