この10年でオフィスにおけるITの状況は、大きく変わった。それに対してユーザーの情報に対する扱い方・考え方は変わっていない。解決のカギは、かつてオフィスにあった“仕事のお作法”をIT時代に合わせて再生することにある。この連載では「読み書きパソコン」の時代に求められるオフィスワークの“新・お作法”について解説する。
この10年で、オフィスの風景はすっかり変わった。
PCが1人1台ずつ支給され、派遣社員から役員まで、全員の机上にモニタが鎮座している。それぞれのPCは完全にネットワーク化され、われわれが物理的にはどこにあるのか知らない「サーバ」なるものとデータをやりとりしている。あらゆる業務連絡が電子メールで行われ、メールアドレスの記載がない名刺もほとんど見掛けなくなった。しかし振り返ってみると、新卒社員の採用活動で「当社はPCは1人1台環境です!」などとうたっていたのは、ほんの7〜8年前のことだ。まさに隔世の感がある。
急速に進んだオフィスのIT化は、オフィスワーカーの生産性向上に大きく貢献した。クリック1つでどんな情報にでもアクセスできるようになったし、キーワード検索で求める情報が一発で手に入ることも多く、とても便利になった実感もある。しかし、急激なIT化による弊害はないのだろうか?
いま、下記のような問題に悩まされている企業が多い。御社ではこのチェックリストの9項目のうち、いくつ当てはまるだろうか。
これらの問題は、最後の「会議」を除くといずれも10年前には存在しなかった。つまり、オフィスワークのIT化に伴って発生してきた「IT化の弊害」である。そして、会議ともども「現在まで有効な対策がほとんど取られないままに放置されている問題」という点で共通している。
振り返ってみると、「紙の時代」にはどの企業にも年数を経て蓄積された“仕事のお作法”があった。
例えば、「情報取扱規程」「文書作成の手引」「書類の整理・更新・廃棄ルール」「社内連絡ガイドライン」といったものだ。公式に制定され印刷・配布されたものもあれば、職場内での「暗黙のルール」として通用していたものもあるが、職場に配属された新人は先輩からこれを真っ先にたたき込まれ、誰もがこの“仕事のお作法”にのっとって仕事をしていた。
しかしこの10年、急激に進んだオフィスワークのIT化で、仕事の進め方は劇的に変わった。紙はWordとExcelに、書架はファイルサーバに、通達文書は電子メールになった。ところが“仕事のお作法”がこのPCの時代にまだ対応できておらず、現在のオフィスはいわば無法地帯となってしまっているのだ。
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図表2 オフィスのお作法 |
オフィスワークのIT化に伴い、オフィスワーカーにはITリテラシが必須スキルとして求められるようになってきた。いまや「読み書きソロバン」ならぬ「読み書きパソコン」の時代なのである。しかしそれを理解して、社員にPC操作の技術を基本からきちんと習得させている企業はまだ多くない。最近のPCはクリックだけでほとんど操作でき、見よう見まねでも何とかなってしまうので、余計に本人任せの傾向が強いのだ。
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