坂口に恋のライバル出現〜相手は電車男!?(第5話)目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(5)(3/4 ページ)

» 2007年03月27日 12時00分 公開
[那須結城, 山中吉明,@IT]

そして、あの2人が出会ってしまう……

 次の金曜日、坂口は伊東を連れて、久しぶりに西新宿にあるサンドラフトサポートを訪れた。異動後、まだ数カ月しかたっていないのに、随分と懐かしい感じがする。

 前回勉強会に来たのはいつだっただろうか……。いまの仕事に追われて、そんなことも思い出せない坂口だった。エレベーターを降りると、「目指せ!シスアドの達人?勉強会会場?」と坂口が自分で書いた張り紙がそのまま残っている会議室のドアが目に入った。

坂口 「こんちは?!」

 勢いよくドアを開けると、中にいたメンバーが一斉に坂口を見た。

谷田 「あ、坂口さん!」

 今日もきっと来ないだろうと思っていた坂口の姿を見た谷田は、パッと目を輝かせた。

 と、その坂口の後ろから、おどおどした雰囲気で伊東が入ってきた。

谷田 「(誰かしら……?)」

坂口 「 みんな久しぶり。今日は新しい職場の後輩を連れてきたんだ。伊東くんだ。彼も初級シスアドを目指して勉強を始めたので、一緒に勉強会に参加したらいいんじゃないかと思ってね」

伊東 「あ、あ、あ、あの、初めまして!! 伊東敦史っていいます。もう、なんにも分からなくて、皆さんにご迷惑かとも思ったんですが、坂口さんが強引に……っていうか、なんていうか……そのぉ……。こんなにキレイな皆さんと一緒に勉強できるなんて……」

 しどろもどろになる伊東を笑いながら坂口がいった。

坂口 「あはは、伊東くんは何を訳の分からないこといってるんだ? 前から思ってたんだけど、伊東くんって顔といい、そうゆうオドオドしたところなんかが、ほんとに電車男っぽいよなぁ(笑)。でも悪いやつじゃないから!皆さんよろしく!!」

谷田 「うふふふ。確かにテレビで見た電車男さんに顔がそっくりでびっくりしちゃう!でも、電車男さんなら誠実なところも筋金入りのはずね!」

 会議室の中は、久々の坂口の登場と、新しい仲間を歓迎する温かい拍手でいっぱいになった。

サンドラフトサポートでは、初級シスアド合格を目標にした自主的な勉強会が毎週金曜日に開催されている。この勉強会は坂口のサンドラフトへの出向が決まった後、坂口と谷田がサンドラフトサポートの仲間に声を掛けてスタートしたものだ。現在、次の情報処理技術者試験に向けて、谷田と深田が勉強にいそしんでいる。

 そこには、アプリケーションエンジニア合格者の福山、初級シスアド合格者の松下がサポート役として参加している。次回の試験が2カ月後に迫っており、勉強会は前半を輪講形式、後半を予習してきた問題についての質疑応答という形式で行っていた。

 今回、前半の輪講形式の部分は深田が講師役だった。ハキハキとしたとおりの良い声で、深田が説明を始めた。

深田 「初級システムアドミニストレータの業務としては、業務改善の立案、情報システム構築の支援などがあり、今日はテキストの第2章『ユーザー要求分析の支援』について説明します。この業務は、利用者側として自部門のニーズを取りまとめ、情報処理技術者に伝授することで……」

 深田の説明は、事前に十分に予習をして理解を深めているため、ポイントを得た非常に分かりやすいものだった。谷田は必死に吸収しようと真剣に聞いていたが、内心、深田に大きく後れを取っていることに焦りを感じていた。

谷田 「(深田さんには負けられないわ。私も、もっと真剣に勉強しなくちゃ!)」

 試験が終わるまでは、坂口とも勉強会以外では会わずに勉強に専念し、試験が終了したら、自分へのご褒美として坂口と会おうと心に決めていた。

 でもそれは、坂口と思うように会えない気持ちを勉強で紛らわせる。そんな思いも心の奥底にあったかもしれない。

 深田の説明が終わり、質疑応答の時間になった。

 伊東がおずおずと手を挙げた。

伊東 「ちょ、ちょっといいですか?」

深田 「遠慮なくどうぞ」

伊東 「今日の説明って、いま自分が取り組んでいるプロジェクトにそっくりなのでびっくりしました。今日の説明では自部門とありますが、『自社の』と言い換えれば、まさにいまやらなければいけないことなんだと思いました」

坂口 「そのとおり! 初級シスアドの勉強は、その基本の部分から学ぶんだ」

伊東 「ぼ、僕、そんな基本的なこともまださっぱりなんです。僕って駄目なんですね!!」

深田 「そんなことないですよ。みんなもつい最近勉強し始めたばかりなんだから……。伊東さんもすぐに追いつけますよ!」

伊東 「そ、そ、そうですかねぇ……。ぼ、僕、自分に自信がないんです」

谷田 「初級シスアドの合格者って、約40万人もいるんですよね」

伊東 「そ、そ、そんなにいるんですか?」

坂口 「でも、もっと多くの人が学んでおかなければいけない内容だと思うよ」

伊東 「よ、よかったぁ。早く気付いて。シスアドの勉強を始めなければ、ずっとこんなこと知らないままだったんだろうなぁ……」

深田 「ほかに、質問はありませんか?」

 後半は、予習してきた問題の質疑応答の時間である。

 谷田が「PERT図の問題がよく分からない」と質問すると、「それじゃ、みんなで解いてみよう」と福山がホワイトボードの前に立って解答を導いていく。続いて、松下、坂口も自分の視点で解説を加えたりした。こうして、いままで1人で悩んでいたことがうそのように理解できたと、谷田も満足げな表情を見せた。

 伊東も、独習では参考書の内容がなかなか理解できなくて困っていたが、分かりやすい講義や、福山、松下の丁寧な解説を聞いて、「なるほどこういうことだったのか!」と感激するとともに、1日も早く深田や谷田に追いつこうと思いを新たにしていた。

 こうして、2時間ほどの勉強会はあっという間に時間が過ぎ、そろそろ終了時刻が近づいてきた。

松下 「ねぇ、せっかく2人が来てくれたんだし、今日はこのまま繰り出さない?」

福山 「お、いいですねぇ、行きましょう!」

 坂口と伊東の参加もあり、いつも以上に盛り上がったメンバーは、そのまま飲みに出掛けることとなった。会社を出ると、外はもうすっかり暗くなっていた。

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