伊東 「そ、そろそろ時間なんですが、ど、どうしましょうか?」
坂口と名間瀬の緊迫した空気に我慢できなくなった伊東が恐る恐る発言した。
名間瀬 「営業企画部の話はさておき、ヒアリングは大体終わってるんだから、坂口、お前と伊東で要求仕様を来週までにまとめて報告しろ。それで、来週もう一度メンバー集合だ」
坂口は、それ以上何もいわなかった。
(名間瀬さんは1年後のリリースありきで考えている……。このままじゃダメだ。話にならない)
伊東 「課題シートの整理だけでも大変だったのに、1週間で要求仕様をまとめろっていわれても……。そんなこと、とてもできないよぉ」
伊東がぼそっとつぶやいた。結局、何の成果も進展もなく、後味の悪い雰囲気のなか、プロジェクト会議は終了した。
終了後、坂口は伊東に「初級シスアドの勉強会をサンドラフトサポートで毎週金曜日にやっているので、一度顔を出してみないか」と声を掛けた。
伊東 「ぼ、僕は、まだ、全然勉強していないので……」
坂口 「さっきみたいな質問は、もうそろそろやめないとな。IT企画推進室メンバーの名が廃るぞ。今週なら俺も一緒に参加できそうだから、一緒に連れて行ってやるよ」
伊東 「あ、ありがとうございます!! じゃあ、参加しまっしゅ」
伊東は、その日の帰り道、本屋に寄って、坂口に教えてもらった初級シスアドの参考書「初級シスアドへの道」と問題集を購入した。そして自宅に帰ると、早速勉強を始めた。
参考書は次のような目次で始まっていた。
初級システムアドミニストレータの業務
1.業務改善の立案
1-1 業務分析における問題点の把握
1-2 業務改善の提案
2.情報システム構築の支援
2-1 ユーザ要求分析の支援
……………………
伊東 「こ、これって、坂口さんがいっていたやつだぁ」
まさに、「自分がいま直面している課題そのものの解決策が書かれている」と感じた伊東は、夜遅くまで参考書を読み耽り、気が付くと時計の針が午前1時を回っていた。
伊東 「それにしても、坂口さん、これからどうするのかな。まずは営業企画部へのヒアリングを片付けるのかな……。でも、天海さん、怖いし……。僕に聞きに行けなんていわないでほしいなぁ……」
いろいろ思い付きながらも、だんだん意識が遠のいていく伊東だった。
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