POAの復権とBPM時代到来の背景について述べきた。ここで筆者が考えるBPMを定義しておこう。
「BPMの本流はビジネス実行プロセス全体を対象とした、人とモノと情報の複合的なプロセスフロー化に基づき、各階層プロセスの機能とそのfrom/toを正しく把握定義して、ビジネスプロセスの現状マップを維持管理することである。そしてプロセスの改善にチャレンジして、より優れたプロセスへの進化に努めることである」
最近ではSOAや自動プログラミングによるIT化プロセスを、安易にBPMと呼ぶことがあるが、紛らわしいので筆者はそれらを区別して使うことが望ましいと考える。いずれにせよ、BPMの基本はあくまでも、As-Isプロセスステータスの把握と、その管理にある。
ここで重要なキーワードはプロセス階層体系である。これを粒度という人もいる。筆者は縮尺度と呼ぶ。縮尺の異なる地図はつながらないことは自明のことであるが、ビジネスプロセスでは往々にして大小プロセスが混在したプロセスマップが横行していて、整理体系もないまま、管理のすべもないので、いつしか打ち捨てられている。
筆者はプロセスの縮尺体系をH・BPM(ヒューマンBPM)で6階層、IT・BPMを3階層体系で考えている。以下にそれを図示する。
再三述べてきたことであるが、BPMの目的は「ビジネスプロセスの可視化を実現すること」にある。
しかしながら、方法論なきBPMも機能し得ない。何のために体系的BPM方法論が必要なのかを考えてみてほしい。例えば、目的事象をあるがままに識別して、実態を投影できないプロセス化では、実態を管理することはできない。目的事象を識別できないとか、実態と異なるドライブマップが使いものにはならないことと同様である。
最後に筆者が提案しているBPM方法論「SPAC」(エスパック)を紹介しておく。SPACとはSystem Process Architecture Complexの略称である。その機能と特徴は、リアルプロセスとバーチャルプロセスのハイブリッドなプロセスフローを6階層で体系的に表示する。そして単位プロセスユニットごとにI/Oとその処理機能ならびにタイムフレームなどのプロセス性能の定義登録、保存、参照、再利用ができる。
このマニュアル体系はSPAC 0、I、IIの3部作である。0はAs-Is分析管理方法論であり、IはTo-Be設計管理方法論である。IIはIを実行する時の基本手法解説編である。
プロセスの登録は、同一プロセスについて複数のAs-Isと複数のTo-Be開発サイクルをサポートする。この機能の適用は複数存在するが、その1つとして昨今、泥縄で準備されているJ-SOX法・内部統制対応のリスクプロセスの文書化が挙げられよう。
SPAC方法論のプロセスは、情報システムとして運用される。運用においては、市販のBPMN表記のプロセスモデラーを利用する。専用の定義ツールも開発している。これにより、新プロセスマッピングとその定義作業の生産性のみならず、プロセス設計と定義とメンテナンスのスピードアップを実現している。
吉原 賢治(よしはら けんじ)
株式会社Nixシステム研究所 代表取締役、株式会社日本システミックス代表取締役
主な著書に「日本型サプライチェーン経営への挑戦」(日本プラントメンテナンス協会)共著、「生産管理の事典」(朝倉書店)共著(サプライチェーンの章担当)、「ビジネスモデル入門」(工業調査会)がある。
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