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» 2007年05月14日 12時00分 公開

特別企画:BPM Special BPM時代の到来--BPMで何が変わるのか? (1/2)

BPMとは何か?──論者の数だけ考え方があるが、今回は企業の情報システム構築と経営管理の方法の変遷を踏まえて、BPMが必要になってきた背景と本質を解説する。

[吉原賢治(Nixシステム研究所),@IT]

忘れ去られたビジネスプロセス

 図1「ビジネスプロセス、失われた20年」は過去50年のIT化基本アプローチの変遷を描いたものである。

図1 ビジネスプロセス、失われた20年 図1 ビジネスプロセス、失われた20年(出典:「ビジネスモデル入門」(吉原賢治=著/鉱業調査会=刊)より)(クリック >> 拡大)

 この50年のビジネス情報システム構築方法の進化過程を振り返ると、最初のアプローチは人の業務プロセスをコンピュータに置換する方法が中心であった。いわゆる、POA(プロセス中心アプローチ)である。この時代が30年続いて1970年代後半に、データの重複ファイルを統合する、DOA(データ中心アプローチ)が始まった。

 システム構築時にデータを注視するようになったからといって、ビジネスシステムは、ビジネスのプロセスを設計し動かす人がいて、初めて機能することに変わりはない。データとの関連でいえば、データ(情報部材)を組み立て、取り換え、情報製品そのものすら新しい概念で考案するとき、それらをつなぐプロセスがあって、初めて情報が生み出され使われる。情報システム(コンピュータ)は、その情報プロセスの一部を代行するにすぎない。にもかかわらず、DOAのシステム構築アプローチは、プロセスを捨象してプロセス不在のまま、情報部材の在庫管理に終始するものになってしまった。ビジネスについて、ほとんど知識も経験もないDOAスペシャリストは、「システムはコンピュータの中か、データーベースの中にパックされている」かのように錯覚しているような時代もあった。情報要求とそのプロセスが、不変ならばこれでもよかっただろうが。

 その後、1980年代の半ばになって、かのザックマンがビジネスプロセスと情報システム設計のドッキングを意図して、EAコンセプト(ザックマン・フレームワーク)を提唱した。しかし、POAとDOAの連結設計を実現するプロセス設計表記の体系的方法は暗中模索であった。次にOOA(オブジェクト指向アプローチ)の流れの中から、UMLが登場する。しかし、これはデータベースの周辺に情報プロセスを見ることができるけれども、プロセスの主体である人の行動がよく見えない。この問題を解決するために、2005年にBPMN法という、人のプロセスを含む表記法が作られた。

 この間20年、人のプロセスは情報システムに主導権を奪われ続け、その結果プロセスの流れは見えなくなっていったのである。この「見えない化」の進行は、とりも直さず、DOAの進歩と継続的POA管理の放棄に起因するものである。DOAなくして情報システムの発展はあり得なかったけれども、POAなくして人はいまのプロセスをガバナンスできないのである。筆者は8年前、「ビジネスプロセス、失われた20年」の図を示してPOAの復権を訴え、BPOA(ビジネスプロセス中心アプローチ)を提唱したが、当時は絵空事に思う人が大半であった。

経営管理方式のへ影響

 その一方で、この20年のビジネスIT化の進行もあって、旧来のビジネススタイルは創造的破壊の渦に巻き込まれていった。1980年代後半以降、部門間プロセスがIT化され始め、ビジネススタイルの変化に次ぐ変革がビジネス経営管理を揺さぶるようになった。その結果として従来型の業務機能分担組織型管理方式は機能しなくなり、組織を超えたプロセス管理に移行せざるを得ない事態に遭遇することになる。

 さらに、1990年代半ばからは、IT主導のネットワークビジネス分業型経営の到来は、さまざまな企業統合と融合をもたらしつつある。その典型は、サプライチェーン・マネジメント志向経営である。M&A、事業提携、相互乗り入れ、そしてアウトソーシング志向経営はプロセス管理なくして成立しなくなっている。図2は、その経緯を「業務機能分担型管理から業務プロセス統治型管理へ」と題して描いたものである。

業務機能分担型管理から業務プロセス統治型管理へ 図2 経営管理は、業務機能分担型管理から業務プロセス統治型管理へ

 今日、すべてのビジネスはITプロセスと人のプロセスの入れ子状態となり、人中心の業務機能分担組織管理方式のみでは、企業管理はまひ寸前である。この流れの中で、人とITプロセスを一体的に可視化する「ビジネスプロセス・マネジメント」(BPM)が着目されている。そして、プロセスオーナーによるビジネスプロセス統治・分担組織管理と従来型の業務機能分担組織管理方式のハイブリッド経営管理への移行が始まろうとしている。

 しかしながら、ビジネスプロセス統治分担組織管理方式の体系的方法論は存在しない。こうした中で、BPM方法論を世に送り出すことは、これからの経営管理にとって強力な武器となろう。

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