KCIを設定した際の統制活動内容は、RCMに書かれた統制活動となるのが基本である。
しかし、毎月の統制活動において、時には統制活動が不十分であったり、予想外の状況に置かれて統制活動に何らかの支障を来したりする可能性を排除できない。そうすると、RCMだけでは、ある統制活動の生の状況が分からず、結果的にRCM上ではある統制活動が「できたか、できなかったか」という結果だけが示されることになりかねない。
第4世代BSCによる全社的な未来予測型リスク管理では、統制活動の結果だけでなく、プロセスを大切にする必要があるし、そうすることで統制活動のレポートを受ける側の上長や経営層などが、「いま現場で何が起こっていてどこへ向かっているのか?」が分かるようになる。
つまり、KCIのアクションプランにおいて、「先月はこうだったから、今月と来月以降のある目標に向けて、今月はこのような統制活動とその統制活動を実行担保するどんな補完的作業を行う」ということを記しておくのである。
こうすることで、統制活動のモニタリングにおいても、過去志向の分析から未来志向の分析に転換することが可能となる。そして、KRIの結果として出てくる数値のみに惑わされず、必要な手立てをKCIとアクションプランを通じて取ることで、リスクの推移をつかみ、かつ、いま現場で起こっていることと、これから現場で取り組もうとしている様子を、経営者のPCからドリルダウンするだけでリアルにつかめるようになるのだ。
こういったKRI・KCI・アクションプランのBSCソフトへの入力には、上長の承認・レビューを必要とするようにしておいた方が、データや統制活動状況記入の改ざんを防ぐとともに、現場の長がまずは責任を持って統制活動に当たる意識を持てるようになるだろう。また、そうすることで、改ざんのないKRI・KCI・アクションプラン(それぞれにKRIオーナー、KCIオーナー、アクションプラン・オーナーを設定)が統制活動における部門確認書のような機能を果たすことになる。
むしろ、部門確認書よりも、KRI・KCI・アクションプランにそれぞれのオーナーを設定することで、各社員がより一層、内部統制活動に対する責任感を持ち、それがひいては全社的に全般統制として内部統制を重視する組織文化の醸成につながり得るのである。
第4世代BSCはまだ筆者が発表をした段階なので、今後、多様な切り口で議論が尽くされ、さらなるBSCの発展に寄与できれば幸いである。
もちろんのことながら、筆者としては、さまざまな方々からご意見やご提案をちょうだいしたいと思っている。
第4世代BSCは、まだまだ発展途上でこれから洗練されていくものと信じている。今後、日本企業にとって、内部統制を通じて企業価値向上を成し遂げ、健全に経営の透明性を保ちつつ企業の競争力を高めていっていただければ、と願ってやまない。
戸村 智憲(とむら とものり)
日本マネジメント総合研究所 理事長
早大卒。米国MBA修了(全米優秀大学院生受賞:トップ0.5%の院生が受賞)。
国連にて戦略立案エキスパート・リーダー、国連職員研修特命講師、国連環境会議事務局日本代表、内部監査業務を担当。
その後、民間企業に転出し、企業役員・内部監査室参事役を経て、BSCコンソーシアム公認BSCコンサルタントに招聘(しょうへい)される。内部統制・SOX法関連のスペシャリスト資格である公認不正検査士(CFE)を取得。
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