企業成長のためのインターネットとセキュリティM&A時代のビジネスガバナンス(8)(1/2 ページ)

現在、IT技術はクライアント/サーバ型からインターネット・Webの時代へ移行している。そんな時代に企業はどのような対策を行わなければならないのか。今回は、インターネットとセキュリティについて検討してみる。

» 2008年04月14日 12時00分 公開
[高橋 徹,サン・マイクロシステムズ]

 IT業界においても顕著だが、多くの業界で企業買収や合併の動きが進んでいる。

 新しい技術を自ら開発するのではなく、すでに高い技術を持つベンチャー企業を技術ごと買収してしまえば、自社の製品ポートフォリオを充実させ、より早くに市場に打って出ることもできる。あるいは、同じ市場の競合他社を買収すれば、自社のシェアを上げて市場における優位性を確保できる。

 つまり、俊敏性と市場支配力がM&A時代のビジネスの特徴だ。M&Aをするしないは別として、IT部門が自社の成長に貢献するに当たり、この2つの要素は無視することはできない。

クライアントサーバ時代からインターネット時代へ

 IT技術の変革と改善の歴史を振り返ると、メインフレームの時代に始まり、クライアント/サーバの時代があり、いまはWeb・インターネットの時代だ。

 インターネットを基盤としたIT技術の特徴は、インターフェイスの標準化だろう。インターネットの開発にかかわるインターフェイスには、「html」「http」「Java」「XML」「Webサービス」など、多くの標準がある。

 つまり、いったん開発者がインターネットの標準技術を勉強すれば、機種や環境が変化してもある程度は追随できる。標準化されているため、接続先のインターフェイスも明確で、統合化や連携が以前より素早くできる。また、開発生産性向上のためのツールも、さまざまな環境で共通に使えるので選択肢が増え、効率をさらに上げることができる。インターネット時代では標準化によって、開発の効率や生産性が上がっているのだ。

 そしてインターネット時代の大きな流れに、「Web 2.0」や「SaaS」がある。インターネットを介して、あらゆる場所から大量の同時アクセスが実現できるようになってきたのだ。

 IT基盤において大量の同時アクセスを処理できる、半導体やサーバ、OS、Webサーバやこれらを包含したクラスタリング技術の進化が、これらの大量同時アクセスを可能にした。さらに、ネットワークのバンド幅の大きな伸びもこの流れを加速させるものだ。

 インターネットによるIT基盤の構築は、標準化を基礎とした開発の生産性の向上と、大量の同時アクセス処理を可能にするIT基盤のスケーラビリティを持つ。

 しかし、Web 2.0やSaaSなどのシステムの特徴は、「処理のピークがいつ来るか?」を想定できない点だ。さらに、必要とされる処理能力がいま持っているIT基盤でピーク時に対応できるか、想定できない場合もある。

 いままで、ムーアの法則では「集積回路におけるトランジスタの集積密度は、18〜24カ月で2倍になる」とされてきた。企業の基幹業務システムは、この法則を超えるような処理要求の急増はなかった。しかし、Web 2.0やSaaSの処理要求は、ムーアの法則をはるかに超えている。サン・マイクロシステムズ(以下、サン)のCTOであるグレッグ・パパドポラス(Greg Papadopoulos)は、これを天文学の用語になぞらえて「レッドシフト(赤方偏移)」と呼んでいる(図1:レッドシフト参照)。

図1:レッドシフト

新しい半導体の方向性:マルチコア

 ムーアの法則では、1つの半導体(ダイ)上には演算処理ユニットは1つだった。近年、1つの半導体上に複数の演算処理ユニットを載せる技術が発達してきており、マルチコアチップ化が進んでいる。1コアは1つの演算処理ユニットなので、コアが2つならデュアルコア、4つならクワッドコアと呼ばれている。

 マルチコアの処理能力は、シングルコアと比較して単純に2倍や4倍になるわけではないが、消費電力を低減しつつ、処理能力を向上させた。このようなCPUの処理能力の向上が、Web 2.0やSaaSの処理要求を満たすIT基盤を支えていることは間違いないだろう。

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