日本オラクルは5月12日、大規模で複雑なプロジェクト管理に対応したスイート製品の新版「Oracle Projects」を提供開始すると発表した。会計基準の変更で2009年4月からシステム・インテグレータ(SIer)などの受託ソフトウェア開発業にも原則義務付けられる工事進行基準による収益計上にも対応する。オラクルは「工事進行基準は待ったなし。大きな需要が期待できる」としている。
工事進行基準については「デスマーチがなくなる? IT業界に義務付け『工事進行基準』ってなんだ」「用語辞典:工事進行基準」を参考。2009年4月以降、SIerは原則的に工事進行基準での収益計上が義務付けられるが、収益総額、原価総額、進捗度をプロジェクト開始前に客観的に見積もることができない場合は、従来どおり検収後に一括計上する「工事完成基準」で収益を計上できる。しかし、日本オラクルの製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進部 ディレクターの桜本利幸氏は、「工事完成基準は適正に見積もっていないことを公言しているに等しい」と指摘する。
つまり、工事進行基準に対応できず、工事完成基準でしか収益を計上できない企業は「内部管理体制が整っていない」と判断される危険があるのだ。工事進行基準で収益計上することを発注の条件とするユーザー企業が多くなることも予測され、SIerは「自社の信用をかけて対応してくる」と見る。桜本氏よる建設業界でも工事進行基準で収益計上しているのは3分の1程度、SIerでは大手の一部のみで「大きな市場がある」としている。
Oracle Projectsは複数のモジュールを組み合わせることで、プロジェクトの提案から見積もり、リソース、契約、売上処理、進捗管理など「さまざまなフェイズでトータルな機能を提供する」(桜本氏)。具体的にはプロジェクトのスケジューリングや人員リソースを管理する「Project Management」、プロジェクトの原価収集や資産計上を管理する「Project Costing」、請求管理やリアルタイムの収益管理を行う「Project Billing」などがある。
最新版では契約手続きや契約情報を管理し、ワークフロー機能も持つ「Project Contract」を追加した。これらのモジュールは主にプロジェクトマネージャやプロジェクトマネージャの上司に当たるスタッフが利用する。プロジェクトメンバーは、「Project Collaboration」を使って作業の進捗や経費などを入力する。
価格はProject Costingが最小構成5ユーザーで250万円(税込)など。プロジェクトメンバーが利用するProject Collaborationは50ユーザーで183万円などとなっている。
Oracle Projectは1998年に初めて出荷された製品で、オラクルのERP「Oracle E-Business Suite」と連携するのが特徴。単体製品でも動く。日本では主にエンジニアリング業界で導入が進んでいて、日揮や東洋ビジネスエンジニアリングが使っているという。「会計パッケージと併せるとエンジニアリング業界では半分くらいのシェアがある」(日本オラクル)という。オラクルは、工事進行基準をきっかけにSIerや建設企業への導入を狙う。
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