BPMは「古き想いを、新しい方法で」──三井情報BPMトピックスBPMトピックス(1)

内部統制が一段落し、次なる改善テーマにBPMを掲げる三井情報(MKI)──。三井情報 総合研究所 執行役員 所長の高田輝雄氏に、三井情報の「BPMをこう考える!」を聞いた。

» 2008年07月07日 12時00分 公開
[宇野澤庸弘,@IT]

内部統制対策で、BPM導入の下地はできた

──時節柄、御社も内部統制の文書化のコンサルを多くなされたと聞いておりますが、今後のBPMへの展開との関連をお聞かせください。

高田 SI系コンサルティング・ファームとして、監査法人とは違う方向から内部統制のコンサルテーションを1年半やって来ました。当方の特長は、お客さま企業の内部統制プロジェクトをコーディネートすること、つまりPMOを支援して一緒に汗をかきながら、最後までお手伝いをすることです。

 業務そのものは当然お客さまご自身が一番精通していますけれど、ITシステム全体の運用整備には専門家が必要です、そこで弊社がIT統制を持ち味としてお手伝いをしてきました。その結果、IT統制をキーワードに横展開もでき、弊社社内にも知恵や知識が蓄積されました。

 いま、お客さまは内部統制の検証を行うフェイズに入っていますが、これからはITシステムを活用して効果を上げる時期だと思います。いままでの内部統制=「リスク回避」から、業務効率化による「前向きな改善」──業務の無駄をなくし、改善を継続的に行う時期、つまりBPMをやっていく時期なのです。

 内部統制の3点セットがそのまま直接に役立つとは思いませんが、内部統制を進めてきたプロセス、つまり業務の「見える化」推進で培われてきた企業意識と方法論は、BPM導入の下支えとなって、これからの業務改善と改革に大いに役立つと思います。そうした背景から先日6月3日に「BPM業務改革セミナ」を開催し、副題を「内部統制の文書化を契機とする業務プロセス改革とは」としました。

──ユーザー企業にBPM導入の下地ができてきたということですね。

高田氏 三井情報 総合研究所執行役員 所長 高田輝雄氏

高田 そうです。経営者の方々には、経営の必須課題としての内部統制から、社内業務の改善と改革という前向きで攻めのターゲットに意識を振り向けてほしい──。そのために、IT投資の効果と明確な理由付けをしたいと考えました。今回のセミナーは、上場企業を対象にし、MKIの事業展開のためのデータ収集も大きな目的でした。

 企業は、内部統制だけでなくISO、CSRグリーンITやエコ(環境対策)など、いくつかのキーワードで表されている社会的要請を担っています。それらの実施をそれぞれ別々に推進しておくことは作業の重複を招き、不経済です。これらの取り組みで必要となる企業意識と方法論は同じですので、個々にシステムを作成するのではなく、業務プロセスベースの複合ソリューションとして実現することをお薦めしていきたいと考えています。その意味で、複合化の受け皿としてのBPM、そしてその実行基盤としてのITシステムがキーになります。象徴的にいうと「古き想いを、新しい方法で」ということでしょうか。

 これは、グローバル化や社会の要請で一層強く求められてきた事業改善と変革という経営層の古くからある想い/課題と、ITが可能とした新しいソリューションの間に存在していた「もやもや」を、新しい「BPM」というコンセプトがアプローチを明確に示してくれたということだと思います。

 今回のセミナーでも、内部統制コンサルとしての弊社のお客さまである、三井物産さんに推進事例と効果の発表をお願いし、次に弊社のコンサルから業務改革のポイントの説明とBPMツールの説明を用意しました。

BPMで部門別改善を横串する共通基盤を

──セミナーの来場者の状況はいかがでしたか? また、現状のユーザー企業をどうに感じていらっしゃいますか?

高田 当日は激しい雨でしたが、ありがたいことに満席となりました。来場者は150人ほどで、経営層・営業部門の比較的高年齢層の方々が中心でした。皆さん、「もやもや」状態でいらっしゃるのだと思います。「経営にITを役立てなければいけない」と大きな方向は明確なのですが、その具体的なイメージや推進策、あるいは効果がはっきりしていないというのが現状だと感じました。

 そうした認識はユーザー側だけではなく提供側も不ぞろいですし、経営・業務側とITシステム側との意識の擦り合わせもまだ不十分です。とは申せ、文書化3点セットの作成からスタートした内部統制もこれで終わりでなく、毎年続ける必要があるものですし、CSRやISO、そして業務の改善・改革も併せて進めるべきとの理解も徐々に浸透していく手応えを感じました。

──今後の事業展開はいかがでしょうか? また、今後のセミナー予定もお聞かせください。

高田 今回は業務プロセス改革を内部統制の視点から訴求するセミナーを開きましたが、7月14日と24日にはコンタクトセンターにおけるBPM業務改革のセミナーを開催します。また、以前にも運用管理/ITILセミナーも実施済みです。内部統制・コンタクトセンター・運用管理と対象が変わっても、業務の改善・改革という動機付けと進め方は同じです。対象の違いと見えるものは、企業の業務プロセスの視点が違うということです。ですからBPMは、企業の業務プロセスを多様な視点から複眼的に見て、分析し、問題点を解決していく複合ソリューションということになります。私たちのコンサルテーションでは、内部統制・コンタクトセンター・運用管理……とそれぞれ違う部署、担当者の方が関係しますが、そこに共通の横串を通していくことができますし、それが重要だと思ってます。

──共通の横串を構築するということですね。

高田 そうです、共通の横串を企業基盤として構築するために、当方は、お客さまと同じ目線に立ち、「業務設計して終わり」「システム構築して終わり」というのではなく、最後まで支援をしていくというのが基本的事業態度です。先にお話しした、内部統制・コンタクトセンター・運用管理の3つの領域でBPM業務改革を提供して行く方向です。

 業務改善と改革にはPDCAが重要ですが、経営と現場がかかわる所と時は同じではありません、それをつなぐのがコンサルとITシステムです。そこで、IT投資の有効性(ROI)の議論も重要になります。ITガバナンス協会の「Val IT」などを参考にしていきます。

 内部統制などの法的強制力がトリガーとなった業務改革でなく、利益創出の前向きな業務改革──、私たちはそれを提案し実現したいと思っています。(了)

著者紹介

宇野澤庸弘(うのざわ つねひろ)

日本BPM協会 副事務局長

東芝、ノベルで通信ソフト・ネットワークソフトの開発・販売に携わり、SSC栃木でテスティング事業を創設する。2000年、BPMと邂逅(かいこう)。現在、現在、日商エレクトロニクス株式会社で、BPMコンサルタントとしてBPM事業を展開中。BPMがIT産業の変革を促し、ユーザー視点からのITシステム実現を促進するため、業界横断的に活動を行っている。

オルタナティブ・ブログ「Hello! BPM」


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