公開鍵利用のファイル転送サービス「OnTranq」リリースインフォテリア・オンラインが企業向け第2弾

» 2008年10月09日 00時00分 公開
[西村賢,@IT]

 インフォテリア・オンラインは10月9日、公開鍵暗号方式を使ったセキュアな企業向けファイル転送サービス「OnTranq」(オントランク)を開始した。契約書や特許文書、CADデータといった機密性が高いデータや、大容量のデータを、企業間や拠点間で安全に転送できるサービス。既存システムと連携させることで、拠点間の自動データ転送やライトウェイトEDI(Electronic Data Interchange)としての利用もできる。

専用クライアント利用でメール同様の使い勝手

 OnTranqは従来のファイル転送サービスと異なり、SSLによる通信経路の暗号化だけでなく、2048ビットの鍵長を持つ公開鍵暗号(SHA1withRSA)を用いた暗号化および電子署名を送受信者間のエンド・ツー・エンドで提供するのが特徴。送受信時には同社が運営するデータセンターにデータをいったん預けることになるが、万一そのデータが第三者に漏れても、宛て先となっている受信者以外には解読が困難。

 OnTranqの利用には、まずPCに専用クライアントをインストールし、サービス利用のためのIDを作成する。IDに対しては「名刺」が発行され、これが利用者の公開鍵と紐付く形で管理される。データの送受信のためには、あらかじめ送受信者間で「名刺交換」を行う。分かりやすいグラフィカルな名刺というメタファーを使うことで、S/MIMEやPGPといった従来の公開鍵暗号関連ソリューションの課題だった導入の難しさを解決した。

 利用者は鍵の交換や暗号化、復号化を意識せず、一般的なメールクライアントを使う感覚でメッセージや添付ファイルをやり取りできる。また、電子署名を利用しているため、オリジナルデータの作成者の身元確認や、内容に改ざんがないことを確認できる。

 企業間のデータ転送には現在FTPやSOAPといった同期型通信が主に使われているが、OnTranqはサーバを経由する非同期型。同期型のように送受信双方で同時にソフトウェアを起動しておく必要がない。

OnTranqの利用イメージ
OnTranqのWindows版専用クライアントの画面例

100MBで月額3000円から

 サービスメニューは利用できる一時保管領域の容量の違いで3種類。いずれも転送量に制限はない。

 100MBの保管領域が利用できる「OnTranq 100M」は月額3000円、年額3万円。1GBの保管領域が利用できる「OnTranq 1G」は月額3万円、年額30万円。容量に制限のない「Ontranq Unlimited」は初期費用500万円から、年間契約500万円からとなる。Unlimitedでは専用サーバを提供する。またライセンス数にも制限を設けないため、1社が導入したUnlimitedで取引先企業にライセンスを配るといった使い方もできる。

 OnTranq専用クライアントの動作環境はWindows XP SP2以降/Vista、Mac OS X 10.4、10.5。VPNやファイアウォールの設定などが不要で、HTTPとHTTPSが利用できるネットワーク環境であれば導入できるため、ほとんどの企業・組織でそのまま利用できるという。

送信ファイルの取り消しなど、きめ細かな機能を提供

 送信したファイルは、インフォテリア・オンラインのサーバに蓄積されるが、受信者が受信するまでの間であれば、削除することもできる。メールの誤送信を取り消す機能へのニーズは多いが、一般的なソリューションとしては、送信サーバでいったん送信を保留し、30分後に送信するといったアプローチを取ることが多い。これに対してOnTranqでは送信すれば即座に受信可能になる、という違いがある。

 確実に相手に情報が届いたことを確かめる送達確認機能では、手動で変更できる“完了”ステータスを実装。単に受信者がファイルを復号化しただけでなく、実際にデータの中身を見て、数字などに間違いがないことを確認した段階で完了ステータスに変更するなど、業務の現場それぞれのプロセスに合わせた使い方が可能という。

既存システムとのシンプルな連携方法を用意

 クライアントソフトには既存システムとの連携機能も用意する。「送信コラボレット」はデータ送信を自動化する仕組みで、指定されたフォルダを監視し、一定間隔でファイルを拾い出して暗号化・送信する機能だ。「受信コラボレット」は、データ受信時に自動バッチ処理を行う仕組み。ファイル保存、FTP、外部プログラムの実行などが行える。

 送受信のコラボレットの設定は、一般的な設定ダイアログ画面で行えるため、SI事業者に頼らず手軽な拠点間データ集配システムを構築できる。拠点数の多い企業であれば、一定間隔で売り上げデータを本社に吸い上げるなどの運用ができる。

 同社ではEDIの置き換えニーズも狙うという。現在、EDIではFTPやVANなど、さまざまな転送システム・ネットワークが利用されているが、データベース連携程度であれば、OnTranq経由でファイルへの書き出しと読み出しを経ることで、比較的安価にライトウェイトEDIを実現できるという。

受信コラボレットの設定画面

日本語版と英語版を同時リリース

インフォテリア・オンライン 代表取締役社長 藤縄智春氏

 OnTranqは日本語版と英語版を同時にリリースした。今後は各国語版を継続的にリリースする。同社代表取締役社長の藤縄智春氏は、「個人向けサービスのオンライン付箋紙サービス、linoではユーザーの3割は海外。従来のようなバリアがなく、日本企業のサービスでも世界に使ってもらえるということを肌で感じている」とし、今後もサービスの内外同時リリースもしくは海外サービスを優先してリリースするという同社の基本戦略に変更はないと話す。

 インフォテリア・オンラインは2007年創業のSaaS専業ベンダ。2007年7月に開始した表計算「OnSheet」続く企業向けサービスの第2弾となる。今後、2008年度内には、さらに2、3本のサービスを拡充していく予定という。

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