学校法人 青山学院は12月1日、コミュニケーションツール「Microsoft Live@edu with Exchange Labs」の導入を柱とするマイクロソフトとの協業を発表した。同ツールの利用は在学生と保護者、卒業生など約15万人の予定で、世界最大規模となる。マイクロソフトは青山学院の導入事例をショーケースにほかの教育機関や企業に働きかけることを狙っている。
教育機関とソフトウェアベンダの協業では、グーグルが日本大学や立教大学、一橋大学に「Google Apps」を導入。教育機関側は学生や卒業生の利便性向上を目指して、ITインフラの刷新を図っている。今回の協業について青山学院の理事長 松澤建氏は「学校経営力の強化と国際競争力のある人材育成が目的」と説明した。また、マイクロソフトの代表執行役 社長 樋口泰行氏は「今回の事例をスタートに学校教育機関において(マイクロソフト製品が)一般化することを期待する。当社にとってはよいことだらけで大変ありがたい。今後に弾みが付く」と話した。
青山学院が導入するのはHotmailのほかメッセンジャーやブログ、写真共有、オンラインストレージ、モバイルアクセスなどの機能があるMicrosoft Live@edu with Exchange Labs。2009年4月に青山学院の教職員と大学の在学生の計3万人を対象にまずはサービスを開始し、2009年夏までに青山学院の幼稚園、初等部、中等部、高等部、女子短期大学、大学院、保護者、卒業生組織の校友会まで対象を広げる。システムはマイクロソフトのデータセンターでホスティングされる。
青山学院の特命事項担当局長 濱中正邦氏は、学内で個別に運営されている認証システムをMicrosoft Active Directoryを使って1つのドメインに統合する計画を説明した。Google Appsなど電子メールのホスティングサービスはほかにもあるが、濱中氏はMicrosoft Live@edu with Exchange LabsがActive Directoryとスムーズにつながり、シングルサインオン環境を実現できることを採用理由に挙げた。濱中氏によると運用管理コストは従来と比べて70%削減できるという。
【12月1日18時修正】「今回のシステム構築にかかるコストは青山学院とマイクロソフトの負担の合計で約47億円だが、」を削除しました(マイクロソフトが記者会見時の説明を訂正したため、下記修正も同じ)。
削減の理由は主にActive Directory導入によるIT管理者の負担軽減と、電子メールサーバをホスティングすることによるインフラコストの削減。濱中氏は「特に人件費の削減効果が大きい」と話した。同氏によると学内で電子メールサーバを運営する現在の方法を維持しつつ利用者を15万人まで増やすと、IT管理者の数を現在の48人から80人規模に増員する必要があるという。システム開発には約47億円かかることが想定された。
【12月1日18時修正】「システム開発には約47億円かかることが想定された。」を追記しました。
しかし、ホスティングとActive Directoryによる統合管理の導入で、逆にIT管理者を10人程度減らすことができる。この10人は教育現場のITサポートに回すことができ、教育体制の強化につながる。濱中氏は「最新テクノロジを持った人を維持し続けるのは実質的には無理」と話し、ホスティングのメリットを強調した。
青山学院はほかにCRMアプリケーション「Microsoft Dynamics CRM」を導入し、校友会メンバーの住所、勤務先、寄付金の履歴などを管理する。卒業生同士のコミュニケーションにも利用する計画だ。2009年6月の稼働を予定している。さらに在学生を対象に、成績や履修、出席、クラブ活動の管理などにも使うことを計画している。
マイクロソフトのアプリケーション仮想化技術「Microsoft Application Virtualization」(App-V)も学内のクライアントPC、3000台に導入する。クライアントPCのOS環境が異なってもさまざまなバージョン、言語のアプリケーションを稼働させられるアプリケーション配信技術で、Active Directoryとひも付けることで学生の用途に合わせたアプリケーションをどのPCに対しても提供できる。青山学院は2009年4月のApp-V導入に合わせて、学内のクライアントPCを現在のWindows XPからWindows Vistaにアップグレードする。
青山学院は「国内におけるWindows NTのファーストユーザー」(濱中氏)で、マイクロソフトとは長い協業関係にある。マイクロソフトが最新技術を青山学院に導入し、その結果をほかの教育機関に横展開するなど「実験場になってきた」(濱中氏)。青山学院も先進技術を取り入れることで学生の利便性を向上させ、ブランドの向上につなげてきた。青山学院とマイクロソフトは今回開発するITインフラをベースにさらに別のアプリケーションを展開する考えで、地方や海外と結んだ双方向授業などを計画している。
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