クライアント仮想化で激変するワークスタイル仮想化インタビュー(5)(2/2 ページ)

» 2008年12月08日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT]
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各ユーザーのデスクトップ環境をサーバ上に構築

 もう1つのクライアント仮想化は、「デスクトップの仮想化」と呼ばれるもの。これはサーバ上で仮想マシンを稼働させ、その画面イメージをクライアントPCに転送し、クライアント側から遠隔操作するという方法だ。単純な画面転送型のサーバベースド・コンピューティングとは異なり、サーバ上にユーザーごとの利用環境を用意するもので、ユーザーはクライアントPCを持ち歩くことなく異なる物理マシン(クライアントPC)を使っても、ネットワークに接続できる限り、どこでも自分のデスクトップ環境で仕事ができる。

ユーザーが利用するOSやアプリケーションはサーバ側の仮想マシン上で稼働し、クライアントPCには画面イメージだけが転送される ユーザーが利用するOSやアプリケーションはサーバ側の仮想マシン上で稼働し、クライアントPCには画面イメージだけが転送される

 こちらもサーバ側でOSとアプリケーションを一元管理できる点で、運用管理の手間を大幅に削減するほか、クライアントPC側にはデータを保存しないので情報漏えい対策に寄与するとして導入が進んでいる。これによって、ユーザーはいつでもきちんとメンテナンスされ、必要なパッチも当てられたOSを快適に使えるようになる。

 前出の今野氏は「Windows Vista、XPなど、異なるバージョンのOSを搭載した仮想マシンを稼働させることで、Windows XPでは正常に動作していたが、Vistaでは使えなくなってしまったような業務アプリケーションがあっても、引き続き使用できる。既存資産の保護、ユーザーの使い勝手向上にも大きく貢献する」と語る。

 その今野氏は、クライアント仮想化をより有効に生かすための1つの方策として、「デスクトップ仮想化はアプリケーション仮想化と組み合わせて使うことで運用の自由度、効率はいっそう高まる」と、同社のアイデアを提案する。

 例えば、デスクトップ仮想化を行った場合、ユーザーごとに個別のデスクトップ環境を用意することになる。そのため、OSとアプリケーションのブートイメージを、ユーザーの数だけ管理しなければならず、ユーザーの数によっては大変な労力と膨大な容量のストレージが必要になってしまう。

 「それなら、OSとアプリケーションを切り離して管理した方が効率がよい。つまり、仮想マシンのOSには何もインストールしない標準の状態で管理する。アプリケーションも別個に管理しておく。そしてユーザーの要求に応じて、アプリケーション管理サーバから仮想マシンにアプリケーションを送り込む。こうすることで、ユーザーの使い勝手を確保しながら、OSとアプリケーションを管理する手間は最小限に抑えられる。運用管理のコスト効率は大幅に高まるはずだ」(今野氏)

クライアント仮想化は、ワークスタイルを大きく変える

 さらに今野氏は、こうした環境が整うことで「企業のワークスタイルは大きく変容する」と力説する。

 「ユーザーはクライアントPCと通信環境さえあれば、社内外のどこからでも自分のデスクトップ環境を呼び出して、必要なアプリケーションを自由に使えるようになる。アプリケーションの使い勝手も高まる。例えば、会社でExcelを使いかけのままクライアントPCの電源を落としても、実際にExcelが稼働しているのはサーバ上。帰宅してから自宅のPCを開いて、会社のサーバにアクセスすれば作業しかけの状態のまま画面が現れる。このような環境が整うことで、時間と場所を選ばず、自由に仕事ができるようになることは、ワークライフバランスの実現や、子育て支援に大きく寄与することだろう」(今野氏)

「クライアント仮想化で、ワークスタイルは大きく変わる。社員間のコミュニケーションを活性化し、利益向上に結び付く情報共有体制構築にも大きく寄与する」と今野氏 「クライアント仮想化で、ワークスタイルは大きく変わる。社員間のコミュニケーションを活性化し、利益向上に結び付く情報共有体制構築にも大きく寄与する」と今野氏

 また同社では、クライアント仮想化の取り組みにおいて、運用管理コスト削減、セキュリティの向上を主目的とした現在のフェイズを「シンクライアント1.0」とし、今後は「シンクライアント2.0」のフェイズに向けて、ワークプレイスにさらなる可能性が開かれると推測しているという。

 「どこにいても、自分のデスクトップや必要なアプリケーションを呼び出せるということは、グループウェアやオフィスツールなど、あらゆる情報共有ツールを常に使えるということでもある。つまりクライアント仮想化は、時間や場所といった物理的障壁を取り払い、社員間のコミュニケーションを活性化させることにつながる。これによって業務に役立つナレッジを共有し、業績向上につなげていく風土の醸成にも、大きく寄与するのではないだろうか」(今野氏)

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 今野氏はこのように述べたうえで、「今後は仮想化技術を、いかに戦略的に活用していくかがキーポイントになるだろう」と話す。

 確かに、仮想化技術を導入してコスト削減、効率向上を狙うことはもはや“当たり前”であり、現在は個々の技術を組み合わせることによって、さまざまな“可能性”を探るフェイズに入りつつある。やはり今後は「コスト削減」といった漠然とした目的だけで仮想化技術を導入するのではなく、自社の目的、戦略を見極めたうえで、どのベンダの、どんな仮想化技術を選び、どう使えば目的を達成できるのか、利益につながるのかという視点を持つことが、他社との大きな差別化につながっていくといえそうだ。

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