ITサービスをマネジメントする「ITIL」とは?特別企画 あらためて学ぶITキーワード(1/2 ページ)

ITシステム投資の7割以上を占める”といわれている運用コスト。また、昨今では環境負荷軽減が経営課題の上位に上がってきていることから、グリーンITや次世代データセンターなど、コスト削減と環境対応の2つの観点からシステム運用の改善に取り組む企業も増えている。そのような状況下、ITインフラ運用のベストプラクティスとしてニーズが増えているのがITILだ。

» 2009年03月12日 12時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

ITILとは何か?

本稿は「“@IT情報マネジメントSpecial ソリューションFLASH”に掲載された「運用の見える化を実現し、コスト削減に貢献するITIL」(2008年7月)を一部修正のうえ、転載したものです。


 ITIL(Information Technology Infrastructure Library)とは、英国商務局(OGC : Office of Government Commerce)が、ITサービス管理・運用規則に関するベストプラクティスを集めたガイドブックだ。

 特徴は、ITサービスにおける「プラン」「開発」「提供」「維持」の各プロセスごとにガイドラインを定めている点。IT部門は、その各ガイドラインに合わせてサービスレベル合意書(SLA)を締結することで、日々のプロセスを改善し、全体最適を目指すことを推奨している。

 ITILというと、“ISOのような規格やルールの一種だ”と思っている人がいるようだが、これは勘違いだ。ITILはIT運用に関するガイドブックなので、そこに書かれていることを必ず守らなければならないわけではない。現実問題として、企業の置かれている状況はさまざまだ。そのような自社の状況に照らし合わせ、IT運用に関する参考書として、役に立ちそうな部分やツールをうまく“活用”するのが、ITIL本来の使い方だ。

 英国で策定されたITILだが、その利便性の高さから、英国を筆頭として米国やオーストラリア、日本など世界中で導入が進み、昨今では「ITサービス管理のデファクトスタンダード」と呼べる存在となっている。国内では、2003年にメーカーなどが中心となって「ITサービスマネジメントフォーラムジャパン」(itSMF Japan)を設立し、全国で啓蒙活動などを行っている。

 そのITILにおいて、根本的な思想として挙げられているのが、「ITこそがビジネス、ビジネスはITそのもの」という概念だ。これは、「もはやITとビジネスは切っても切れない関係にある」ということを前提として踏まえ、IT部門だけが関係するのではなく、よりビジネスと密着させて考えるべきだという概念だ。この考えに従って、IT部門はユーザー部門や経営者とサービス品質保証契約(SLA)を締結することで、ITサービスのプロセスだけでなく、ビジネスのプロセス全体を改善することを目指している。

 中でも、ITILが特に注力しているのが、企業の「人」「プロセス」「技術」に関する最適化だ。ここでいう「人」とは、実際にシステムを運営するスタッフや部門長やCIOを、「プロセス」はコストを投下され、期待されるアウトプットを出力するためのチームを、「技術」はシステムの構成やリソースの管理、実装などを指している。人・プロセス・技術に関する各要素で、ITILに定められたガイドラインに準じて継続的に改善し、組織としてPDCA(Plan→Do→Check→Act)のサイクルを回していくことがITILの本質だ。

ITILの核となる「サービスサポート」と「サービスデリバリ」

 復旧しているITIL V2のガイドラインは8冊の書籍にまとめられているが、その中核となっているのは、日常的な運用管理作業をテーマとした「サービスサポート」、そして中長期的な運用管理計画の策定を扱った「サービスデリバリ」だ。

 サービスサポートは日常的なシステム運用やユーザーサポートに関するもので、1つの機能と5つのプロセスで構成されている。機能では、ユーザーからの問い合わせ窓口となる「サービスデスク」が、プロセスとしては「インシデント管理」「問題管理」「変更管理」「リリース管理」「構成管理」が規定されている。

 サービスデリバリは中長期におけるシステム運用管理に関する計画と改善についてまとめたもので、5つのプロセスで構成されている。このプロセスは、上位に「サービスレベル管理」(SLM)があり、ここで策定したサービスレベルを達成するために、「可用性管理」「キャパシティ管理」「ITサービス財務管理」「ITサービス継続性管理」の4つのプロセスが置かれている。

 ITサービス提供の中心として「サービスデスク」を設置し、ユーザーからの問い合わせ対応の起点にする。つまり、ユーザー部門からの問い合わせにはサービスデスクが一括して受け、問題を解決する仕組みだ。そして、実際に問題を解決する際には、サービスを速やかに回復させるための手引きや手順が記載されている「インシデント管理」を参考にする。

 一方で、問題の原因がシステム構成に関する内容で、今後も同様の問題が頻発することが予想される場合には、「問題管理」のカテゴリで、その根本的な原因を探れるような構成となっているのだ。

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