ビジネスプロセスを見える化する「ビジネスプロセスモデリング」が注目されている。ビジネスプロセスモデリングを実現する方法として、業務フローリファクタリングが有効だ。今回は、業務フローリファクタリングの具体的な方法を実例を交えて解説する。
ビジネスアプリケーションの分野で「ビジネスプロセスモデリング」が注目されています。
ビジネスアプリケーションは、かつて紙と手で処理していた事務作業の効率化や自動化を、主な役割としていました。これらのアプリケーションは、主に特定の部門や担当者だけが利用し、タスク間の流れは管理されていないか重要ではありませんでした。
しかし、ITの有効性が認められるようになると、ビジネスアプリケーションは部門や、企業を横断する業務の効率化や自動化を担当し、経営戦略支援を期待されるようになりました。このような全体最適のためのシステム構築には、「ビジネスのモデル化」と「ビジネスプロセス分析」が大きな意味を持ってきます。
ビジネスをモデル化したビジネスモデルは、ビジネスをどのような視点からとらえるかによって、いくつかの表現方法を持ちます。ビジネスモデルを大きな視点でとらえると、以下の関係が成り立ちます。
ビジネスモデル=サービスモデル+情報モデル+プロセスモデル
・サービス:戦略、目標
・情報:業務で扱う要素、規定
・プロセス:手順
この記事では、特にビジネスプロセスモデルについて扱っていきます。
そもそも、ビジネスプロセスを見える化する目的はなんなのでしょうか。これには、以下のような理由があります。
業務知識の共有とは、ビジネスプロセスを文書化し、業務の手順を複数の作業者で共有することを指します。
現在や未来の作業者が業務手順を把握するために、プロセスを見える化する必要があります。作業担当者が辞めると業務が回らなくなってしまうのでは困ります。特定の個人にしか業務ができないといったような業務の属人性を排除するためにも、業務知識を共有しておく必要があります。
業務改善とは、現状のビジネスプロセスを見える化し、業務の問題点を明確にすることです。その問題点を基に、問題を解決できるビジネスプロセスを検討します。検討した結果が、現状の業務を改善しているかを評価します。
一般的に業務アプリケーションの開発時には、業務分析者とアプリケーション開発者との間に、コミュニケーションギャップが発生しがちです。しかし、ビジネスプロセス図を両者の共通言語にすることで、ビジネスプロセスをより正確に伝えることができます。
以上のような理由から、今日では「ビジネスプロセスを見える化することは必須」といっても過言ではないのではないでしょうか。
ビジネスプロセスモデリングに注目が集まるのにあわせて、「BPMN(Business Process Modeling Notation)」や「BPEL(Business Process Execution Language for Web Services)」などの、表記法や記述言語の標準仕様が登場しました。
また、ワークフローを実行するためのエンジンを持つワークフロー製品も、商用/無償にかかわらず、さまざまなものが登場しています。これらはまだまだ成熟期に達しているとはいえません。ただし、これらの活動によって、最新のビジネスアプリケーションでは、「ビジネスプロセスモデリングで分析したプロセス」がシームレスに実現可能になってきています。
この記事ではプロセスの表記にBPMNを使います。BPMNを使ったことのない方のために、本記事で利用する主な記号について簡単に紹介します。
一方で、現実を見ると“適切にビジネスプロセスモデリングを行えていない”という残念な状況があります。
それにはさまざまな理由が考えられます。まず、一般的には「業務の切り分けの判断が難しい」ことが原因となり、ビジネスプロセスモデリングが難しくなっています。また、独自の表記法を使ったモデルであるため、意思疎通がうまくできないことが問題になる組織も少なくありません。
世の中にモデリングの具体例が少ないのも、適切にビジネスプロセスモデリングを行えない1つの原因でしょう。モデリングが適切に行えていないと堅牢なシステムの構築ができないのは、アプリケーションの分析・設計モデリングと同様です。
この記事では、これらの問題のうち、モデリングの具体例を取り上げ、ビジネスプロセスを作成する際のひな型として有効な「ワークフローパターン(下記参照)」を紹介します。
ワークフローパターンとは、ビジネスプロセス上にあるパターンが現れるとき、そのパターンについて考慮すべき点が提示されているため、プロセス自体をチェックすることができるというものです。
また、関連する別のパターンに関する情報も提示されるため、ほかの表現方法を検討することができます。つまり、ワークフローパターンは、ビジネスプロセスの分析、モデル化のテンプレートとなるだけでなく、チェックポイントとしても利用できます。
「Object Management Group(OMG)」により、2003年に第1版として21パターンが定義されました。BPMNとUMLのアクティビティ図で表現した資料がhttp://www.bpmn.org/で公開されています。
ワークフローパターン自体は、「Workflow Patterns Initiative(WPI)」が策定しているパターンで、表記法を問わない概念です。
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