IT資産管理・構成管理がクラウドにもたらすもの勉強会リポート:クラウド時代のIT資産管理(3)(2/2 ページ)

» 2010年01月19日 12時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]
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VI - 資産管理のこの先、未来はどうなる?

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第一生命情報システム株式会社
基盤システム第一部
石井仁氏

新野 最後のディスカッションテーマ『資産管理のこの先、未来はどうなる?』に移っていきます。ここは夢を語っていただきたいと思いますので、まずは石井さんにエンドユーザーとして、ここにいるベンダの方々に「こうなったらうれしい」「こうなってくれないの」というところをお話いただけませんか?

石井 私が一番嫌いな仕事の1つに「予算の管理」があります。中でもライセンスの体系を理解して把握・管理することが、大変だと思われるので楽になればと期待します。CPU利用課金や、接続数による課金など管理作業が複雑なので、各ベンダさんで共通のフォーマットなどにしていただいて、現在要しているコストが「見える化」されるにように進めていってほしいですね。

新野 なるほど。使用ユーザー数や使用期間などをざっくりと入力すると、現資産で使いまわしはできるものと新規に購入すべきものを差し引きして、見積金額が出てくるような仕組みですね。業界で標準のフォーマットがあれば良いのではないのかなとは期待します。では次にインテルの下野さんにおうかがいします。

下野 “面倒だ”ということは、見方を変えればそこにビジネスチャンスがあるということです。クラウドサービス自体そういうものですし、資産管理が面倒だというのであれば、そこをクラウド事業者が担っていくことはあるのではないかと思います。これは企業のIT管理者にとっては非常に大きなメリットを与えるものになると思います。

新野 日本CAの奥村さんはいかがですか。

奥村 共通フォーマットというお話が出ましたが、CMDB(構成管理データベース)に関してはCMDBFというスタンダードの団体があります。われわれCAのほかにマイクロソフト、ヒューレット・パッカード、BMCソフトウェア、富士通が参加しており、各社が独自に作ってきたCMDBのリポジトリをある程度、統一化しようという活動をしています。管理製品を1つのベンダで統一しているお客さまはほとんどいないと思いますが、それらの情報をCMDBで双方向にデータ連携することによって、CMDBを論理的に統一された形で見ることができる??そんなテクノロジが出てきます。

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マイクロソフト株式会社 ライセンシングソリューション本部 ソフトウェア資産管理ソリューショングループ
グループリーダー
花岡悟史氏

新野 これはユーザーにとって朗報ですね。次にマイクロソフトの花岡さん、今後の傾向はどうですか。

花岡 今回、講演セッションでソフトウェア資産管理プロセスに関する国際標準をご紹介しましたが、これは続きがあります。まだ策定作業中なんですが、ソフトウェアにタグを付けようというのです。ソフトウェアに関する情報を標準化しようというわけです。これができると、ソフトウェアベンダは、ソフトウェア資産管理を行うときに必要な情報??例えば、そのソフトウェアがどういった種類のものか、有償なのか無償なのかなどを入れておき、お客さまはツールで見れば、使っているソフトウェアがどんなものかすぐに分かるといったことが実現できる可能性は十分にあると思っています。

 それからクラウドになるとリソースが一カ所に集中するので、それらを集中管理する環境が出てくると思います。そうすると、それに対してそこのリソースだけを対象とするライセンス形態も出てくると思います。ネットワークを介して提供されるサービスに関しては、すべて可視化される世界が出てくるだろうと考えています。

新野 武内さんにも資産管理の未来についておうかがいしましょう。今後、企業がIT化を考えるときにクラウドという選択肢が出てきました。リースやBPOというものもあります。ですから、ITサービスを実現するに当たって、サーバやアプリケーションを買った方が安いのか、HaaSSaaSにした方が安いのかを比較するためには、現状ではいくら掛かっているのか、いくら投資してどんなサービスを受けてきたのかが計算できなければなりませんね。

ALT Panelist:
株式会社コア
プロダクトソリューションカンパニー
ネットワークソリューション事業部
武内烈氏

武内 とはいえ実際には、どのシステム基盤を使うかはコストだけでは決まりません。自社の死命を制する業務を、どこにあるかも分からない外部サーバに載せていいのか??。今回ご出席の第一生命情報システムさんが管理されているような極めて重要なデータを「安いのでクラウドに載せます」という稟議(りんぎ)にOKを出す経営者はどこにもいないと思います。そういった意味もあって、社内システムはプライベートクラウドの形でずっと残るでしょう。今後の企業システムは、プライベートクラウドは稼働率を80?90%に維持して、コンテキストベースの利用は外部のリソースを利用するというハイブリッド型になるでしょう。こういった使い方をしたとき、管理のポイントはSLAです。パブリッククラウドはSLAを使ってしっかりと管理して、社内のミッションクリティカル・コアなプライベートクラウドと組み合わせて使うのです。

新野 パブリッククラウドを含めた構成管理、資産管理ではどこをどこまで見るべきなんでしょか?

武内 パブリッククラウドを使ったとき、その部分はSLAで合意した以上のことは分からないということになるはずです。むしろ、内部が隠ぺいされているというのが利用企業にとってのメリットです。提供されるのは標準的/一般的なサービスですから、「SLAを守れないなら料金を払いません」「ほかを使います」ということですね。

新野 そこは切り分けされるというわけですね。

武内 そう思います。企業のIT部門や情報子会社は社内システムをプライベートクラウド化して効率化を図って稼働率を上げ、品質を向上して、経営の変化に応じて迅速に対応する体制を作る??。この40?50年の間、ずっと課題とされてきたものをようやく実現できるようになってきたのではないかと思います。

新野 クラウド時代になってもIT部門の使命は依然として存在し、従来以上にIT資産管理や運用管理のレベル向上が求められるということですね。時間が参りました。以上でパネルディスカッションを終了いたします。ありがとうございました。

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