今年のキーワードは“マルウェア”と“動画”〜ブルーコートCEO他社との最大の差別化ポイントはADNにあり

» 2010年02月09日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 クラウドコンピューティングや動画コンテンツの普及によって、インターネット経由で社内に入るトラフィックが急増している。そこで問題になるのが、Webセキュリティやトラフィックの最適化だ。今回は、WAN最適化ソリューションやWebセキュリティを手掛ける米ブルーコートシステムズでCEOを務めるブライアン・ネスミス(Brian NeSmith)氏に話を聞いた。

他社との差別化ポイントは“ADNにおけるPacketShaperの技術”

ネスミス氏写真 米ブルーコートシステムズ CEO ブライアン・ネスミス氏

 ブルーコートは、従来よりプロキシ技術をベースにしたWAN高速化/圧縮/Webフィルタリングアプライアンス「ProxySG」を提供。2008年4月にパケッティアを買収したことで、トラフィック管理/QoS制御アプライアンス「PacketShaper」も手に入れた。これにより、同社はWAN最適化市場で約30%、Webセキュリティ分野では約70%のシェアを獲得したという。

 また、「ProxySG」と「PacketShaper」を主力製品に据え、「可視化」「高速化」「セキュリティ」という3つの要素を備えた「ADN(Application Delivery Network)」の構想を2009年2月に発表し、現在も推進している。

 まず、2009年〜2010年のビジネス状況について、ネスミス氏は「リーマンショックの影響で2009年初頭は厳しい市場が続いたが、中盤から回復してきており、2010年にはだいぶ回復してきていると感じている。また、この期間にもマーケットシェアを拡大できたのは大きい」とコメント。シェア拡大の最大の要因はADNにあるとした。

 この同社が推進するADNの特徴は「アプリケーションに着目して、企業内ネットワークを最適化している点」にある。具体的には、まずネットワーク内のパケットを分析・可視化し、アプリケーションの優先順位を付ける。その優先順位に応じてスループットの配分やアクセス権限などを決めていく、というやり方だ。パケット内をすべて可視化しているため、スループットの最適化だけでなく、セキュリティに配慮して不正パケットを排除することも可能だ。そして、他社との差別化ポイントとなるのがPacketShaperの技術だ。

 この点について、同氏は「PacketShaperを手に入れたことで、約600種類のアプリケーションをレイヤ7レベルで分類できる技術を得た点は差別化ポイントとして大きい。特にこれからクラウドコンピューティングが普及すると、Webアプリケーションを利用する回数が増える。その際、Webアプリケーションを可視化・高速化できる当社製品のニーズはさらに増すだろう」と説明した。

『マルウェアの脅威』『動画活用』『クラウド』が3大キーワード

 続いてネスミス氏は2010年に注目する3大キーワードに「マルウェアの脅威」「動画活用」「クラウド」を挙げた。

 マルウェアの脅威とは、特定の国において、組織的犯罪者によるマルウェア攻撃が急増している問題だ。これらの組織はプログラマを雇い、巧妙なプログラムを日々作成しており、非常に危険な存在になっていると同氏は指摘する。「マルウェアの最大の脅威は、多大な手間をかけて、毎日変化・進化している点だ。適切な対応をしなければ、Webサイトを閲覧するだけで感染する可能性もある。情報漏えい対策として、ProxySGのようなリアルタイム検知システムが必要になってきている」(ネスミス氏)と説明した。

 動画活用では、YouTubeの台頭やWebセミナーなどの普及によって動画コンテンツが急増していると指摘。企業はこのトラフィック増に対応するために、インフラ面の充実とともにトラフィックを適切に管理することが急務だとした。同社では、ProxySGでWebアプリケーションを監視・管理しているが、今後は「YouTubeなどで利用されているFlash用の通信プロトコル『Real-Time Messaging Protocol(RTMP)』のサポートをさらに強化し、動画活用をサポートする。今後クラウドコンピューティングが普及することで、さらにWebベースのプロトコルの割合が増すだろう。それに伴い、Webベースのプロトコルへの対応も強化していく」(ネスミス氏)とコメントした。

日本はIPv6分野のリーダー、ともに成長していく

 ネスミス氏は日本市場について、「特徴を3点挙げるとすると『性能・品質に厳しい』『IPv6利用の世界的リーダー』『モバイルデータ通信のリーダー』だ。日本企業の厳しい品質要求に対応するために、当社の日本法人も強力なサポート体制を構築した」と説明。

 特にIPv6利用分野においては日本は世界的なリーダーだとし、「IPv4からIPv6への切り替えなど、世界に先んじて実施している企業が多い。当社としても、製品のIPv6対応を進めているが、実際に切り替えを行っている日本企業から学ぶ点も多い。IPv6については、先行ユーザーとともに学んでいる状況だ」と述べ、日本は非常に貴重な存在でベンダとして学ぶ点が多いと強調した。

 一方で、ユーザー企業におけるIPv6利用の普及については、「現在は、大手企業やデータセンターなど一部のユーザーに限られており、まだまだエンドユーザーへの普及へは数年はかかるだろう。しかし、先進ユーザー事例を応用することで、ユーザーへのIPv6利用を加速できると考えており、当社もそれをサポートしていくつもりだ」と説明し、ブルーコートも製品面でIPv6対応を推進していく方針を示した。

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