日本オラクルは4月16日、報道関係者向けの説明会を実施。「SOAはその後どうなったのか?」という議題について、同社 Fusion Middleware事業統括本部 Enterprise Integration Architect本部長 中川恵太氏が説明した。
中川氏はまず、SOAの現状について「業務貢献を意識している企業ほどSOA導入が早い」と総括。例えば、ある国内製造業者の場合、「アジアでの売上増」や「工場のラインを止めずに生産することが重要」といった課題が存在。それを解決するためにグローバルで一元的に在庫管理し、24時間以内にデリバリーできる体制を作ることが求められていた。その結果、同社では独自に作成した「納期計算ロジック」をサービスとして導入し、ERPと連携させることで課題を克服したという。
また、帝京大学付属病院では「外来の検査のオーダーや結果の閲覧が紙カルテと人手による記録・回覧に依存しており、コストと時間がかかる」という問題が存在。電子カルテを導入し、検査結果を自動的に反映するシステム構築を目指していた。そして、電子カルテと検査システムをBPELで連携することで、従来30分かかっていた連携を5秒で実現したという。
これらの事例について中川氏は、「“SOAありき”で考えるのではなく、“やりたいことを実現するためにはSOAが最適だった”というケースが増えている。導入企業は、SOAを導入したいのではなく、『どうすれば売り上げが増えるか?』や『どうすれば効率を上げられるか?』を考え、実現したいのであり、SOAを入れただけでこれが実現するとは思っていない」と説明した。
同社の調査によると、「業務や経営目標に直接貢献するIT投資が重要になってきた」という。例えば、基幹系システムであっても、老朽化したものをする刷新という理由だけでは投資対象になりにくいほか、“IT改善”がテーマであっても業務貢献が明確でない投資は検討が長期化・中止する傾向にあることが分かった。
また、投資から効果発揮までに許される期間も短縮化の傾向にあるという。例えば、基幹系の刷新が必要な投資でも、実現までの期間は3年程度にまで短縮されているという。「従来であれば、ホスト更新で5年間かかるケースはざらだった。この点を考えると半分程度で効果を出さなければならなくなっている」(中川氏)と解説する。
一般的な開発案件では「その期の投資はその期のうちに結果を出す」というケースも増えてきており、効果を出すまでの期間が6カ月という案件も増加中だという。「経済状況が不安定なこともあり、キャッシュフローを改善したいという経営陣の要望も強い。結果として『基幹系はもう作りたくない/開発したくない』と考えて、パッケージを検討するケースも増えている」(同氏)とした。
では、「業務や経営目標に直接貢献するITの検討が難しい理由」は何だろうか。同社は、「IT部門と業務部門のコミュニケーションが悪い」点が最大の原因であり、根本原因だと指摘する。オラクルでは、この点を改善するためのPDCAとして、「経営課題・業務課題に対する仮説を立て、IT中長期計画を立案する」「ITで解決する課題と、業務で解決する課題を明確化し、KPIを設定する」「成果の共有と改善施策の立案し、それを実行する」といった活動をサポート。SOA Insightなどのコンサルティングサービスで支援している。
その結果、「『SOA Insight』を発表した2008年8月から約1年半で、165件の引き合いがあり、108件についてSOA Insightを提案。49件でSOA Insightを提供しており、33%の顧客がプロジェクト化した。この結果に大いに満足している。具体的には、業務マトリックスを作成し、それを基に中長期経営計画が関係するシステムを識別。その関係するシステムをどう改善していくかのロードマップ作成を援助している。その結果、『IT部門』『経営・業務部門』『オラクル』の3者にとってWin-Win-Winの関係を構築できていると感じている」(中川氏)とコメントし、SOA Insightが企業課題解決の手段として定着してきていることに手応えを感じていると強調した。
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