DTS、「誰でも簡単に高度な分析ができるBI」を発表日立製品と連携。案内に沿って操作するだけでRFM分析も

» 2011年10月19日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 BI製品を提供するDTSは10月17日、フローやガイダンスに沿って業務データを容易に分析できる「BI NavigationStudio」を発表した。日立製作所の業務ポータル製品「uCosminexus Navigation Platform」と、DTSのBI「データスタジオ@WEB」を連携させた製品で、専門のスキル・知識がなくても、ガイダンスに従って操作するだけで、RFM分析、デシル分析、ABC分析など、高度な分析を行える。これにより「基幹システムに蓄積されているデータを、業務現場のユーザーが日常的かつ柔軟に活用できるようになる」という。12月から販売を開始する。

案内に従うだけで高度な分析が行えるBIツール

 大量データの有効活用を意味する「ビッグデータ」という言葉が新たなキーワードになりつつある昨今、情報活用の在り方があらためて見直されている。特に重視されているのが情報活用のスピードと柔軟性だ。市場環境変化のスピードは年々加速し、いまや1週間のタイムロスでもビジネスチャンスを逃しかねない。とりわけ営業スタッフなど“現場スタッフ”が日常的に業務データを閲覧・分析し、次のアクションへの手掛かりが得られる環境が求められている。

 今回、DTSが発表した「BI NavigationStudio」はそうしたニーズに対応し、すでに数百社への導入実績を持つBI製品「データスタジオ@WEB」と、日立製作所の業務ポータル製品「uCosminexus Navigation Platform」を連携。組織における業務の流れやノウハウを、画面上のフローやガイダンスに置き換えて見える化し、業務手順・ノウハウの標準化、共有化を実現するuCosminexus Navigation Platformと組み合わせることで、画面上のガイダンスに沿って“誰でも高度な分析が行える”BIツールに仕上げた。

 具体的には、顧客の過去の購買情報・購買履歴から優良顧客を抽出する「RFM分析」、管理対象を任意の重要度順にA、B、Cの3ランクに分けて重要度に応じた管理を行う「ABC分析」、全顧客を購入金額の高い順に10等分し、その売り上げ構成比を分析する「デシル分析」という3つの分析手法のガイダンスをデフォルトで実装。ユーザー自身が自社の業務環境に合わせて独自の視点で分析したい場合も、分析フローを自由に作成できる。

写真 「BI NavigationStudio」を支える「データスタジオ@WEB」の機能概要。社内の基幹システムのデータを、アクセス権限を確実に管理しながら、容易に活用できる環境が整う

 また、データスタジオ@WEBは、認証機能、アクセスログの記録、参照権限管理機能などの各種セキュリティ機能をもともと装備している。これにより、「BI NavigationStudio」でも、現場スタッフが基幹システムに蓄積されたデータを使って、柔軟かつ“安全に”高度な分析が行える。加えて、クライアントPC側はWebブラウザさえあれば利用できるWebアプリケーションとして提供するため、導入の手間を抑えられるほか、ネットワークにつなげられる環境さえあれば、いつでもどこからでも分析環境にアクセスできる利便性、機動性も特徴としている。価格は300万円からとして導入の敷居も下げた。

「分析スキルのメニュー化」で、BIの潜在需要に対応 

 ただITシステム全般に言えることだが、製品導入で気をつけなければならないのは、「機能の優秀性」と「現場への定着」は別問題ということだろう。特に昨今は複数のベンダからBI製品がリリースされ、中には非常に高度な機能を持つものもある。だが、いかに優秀な製品でも、ユーザー部門のスタッフは、業務には直接関係がない労力が求められる点で、システムが変わることを嫌う傾向が強い。ここに新システムの導入、リプレースの1つの問題があるわけだが、DTS ビジネスソリューション部 横溝雅彦氏は、この点について、「“現場にとっての使いやすさ”に注力したのは、その価格設定も含めて、“導入のしやすさ”と“導入後の定着”の両方に配慮したためだ」とコメントする。

写真 DTS ビジネスソリューション部 アライアンスビジネスチーム マネージャーの横溝雅彦氏

 「従来も一部の企業はBIツールを進んで導入してきたが、企業全般を俯瞰すると、例えば300人以上/年商100億円規模の中堅クラス全体の中では、3割ほどの導入にとどまると言われている。これはBIのニーズがないわけではなく、分析スキルがない、スキルを持つ人材がいないといった理由から導入に踏み切れないことが主因。よって、まずはそうしたBI導入へのスキル面、コスト面での敷居を下げ、潜在ニーズに応えることが多くの企業のビジネスチャンス獲得につながると考えた」

 特にBIを持たない企業の場合、分析はコンサルティング会社などに任せているケースも多い。だが従来のように、ユーザー部門からの要請を受けてIT部門が基幹システムからデータを切り出し、社外に分析を依頼するといった方法では、市場変化のスピードに対して時間が掛かり過ぎてしまう。そうした方法では、現場を知るユーザーならではの視点が分析に反映されにくく、ある一定のフォーマットに沿った静的な分析結果にもなりがちだ。また、各ユーザーが自前のデータベースとしてMicrosoft Office Excelを使っている例も多いが、Excelは個人使用を前提としたツール。最新データの共有や、データの鮮度管理の面では問題が生じやすい側面もある。

 「だが、そうした中でも市場環境と自社の状況は刻々と移り変わっていく。特に現場のユーザーには、環境変化に応じて柔軟に分析した“動的なデータ”が必要だ。そこで日立製作所と協力して『分析スキルのメニュー化』を行うことで、ユーザー自身が随時、基幹システムに眠っている最新・単一のデータソースを使って、主体的に分析できる環境を整えた」

まずは分析に主体的に取り組む土壌作りが大切

 BI NavigationStudioの使用シーンも数多く想定されるという。「例えば流通・小売業では販促支援の一環として、本部で販売履歴データなどを集計・分析し、支店にデータを渡しているケースが多い。だが実際には、各支店ごとに個別の地域特性や販売特性がある。その点、本製品では自身のエリアの販売特性を肌感覚として知っている各支店のユーザーが、本部の基幹システムに蓄積された最新のデータソースを使って、独自の視点から分析が行える。従来よりも有効な施策の手掛かりをよりスピーディに獲得できるはずだ」(日立製作所 情報・通信システム社 ゼネラルマーケットビジネス統括本部 松山一氏)

写真 「BI NavigationStudioを通じて、新たなビジネスの可能性を提案していきたい」として使用シーンのバリエーションを語り合う、日立製作所 情報・通信システム社 ソフトウェア事業部の佐々木高信氏(写真右)/ 松山一氏(中央)/日立製作所 情報・通信システム社 ソフトウェア事業部の金子篤志氏(左)

 一方、経営層や中間管理層にとっては、一種の経営ダッシュボードとしても役立つ。例えばABC分析を使って、複数あるプロジェクトのうち、部門全体の実績を低下させているプロジェクトはどれで、そのプロジェクトの実績を低下させている要因は何か、といった具合にデータを細かい粒度まで掘り下げていき、実績低下の真の原因をピンポイントでつかむことも可能だ。

 横溝氏は、「企業内には日々、大量のデータが蓄積されていくが、基幹システムで管理しているデータのほんの数%しか使われていないと言われている。こうした中で大量データの有効活用が叫ばれているわけだが、まずは各従業員が自身の回りにあるデータを、主体的に活用できる環境、習慣を作ることが大切だと思う。従来、分析というと敷居が高いものだったが、そうしたBIにまつわる既成概念にとらわれず、本製品を日常的に使うことで、ぜひ業務効率化や収益向上に役立ててほしい」と話している。

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