顧客の囲い込みに、ITが不可欠となる教育業IT担当者のための業務知識講座(9)(1/2 ページ)

学生や社会人受講者という直接の顧客だけではなく、そのためのお金を投資する保護者や企業といった“真の顧客”も存在する教育業界。さまざまなニーズをくみ取り、顧客を確実に維持・拡大する上ではIT利用が不可欠となる。

» 2012年05月09日 12時00分 公開
[杉浦司,@IT]

“顧客”の獲得競争が激しい教育業界

 少子化や晩婚化などの影響を受け、教育業界では顧客となる子供や学生の数が年々減少しています。その一方で、教育業界は昨今の不景気の中にあっても底堅い需要に支えられていることも事実です。少子化によって子供1人にかける費用が上昇しているほか、社会人や高齢者など新たな顧客層が登場しているためです。

 教育関連のIT利用について言えば、通信教育やeラーニングの利用者の急増が注目されます。特にeラーニングは、インターネット接続環境さえあれば利用できることや、スマートフォンでも利用可能など使い勝手が良いことから、サービスが年々充実しつつあるようです。競争激化による低価格化の動きさえ出ています。

 今回は、このように需要は確実にありながら、ある意味では小売業以上に顧客の維持・拡大が難しい、教育業について紹介します。

教育業における“顧客”は誰か 〜誰のための価値創造か〜

 教育業における顧客は他の業種と違って少々複雑です。直接の顧客は子供や学生ですが、真の顧客はその後ろにいる親であるためです。資格取得やビジネススキル向上のために教育サービスを受けている社会人の場合、お金を出しているのは本人の他、保護者や企業の人事部門、あるいは経営者であったりする可能性もあります。

 さらに、忘れてはならないのが国による支援です。具体的には「雇用保険の被保険者、または被保険者であった者」が厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講して修了した場合に、ハローワークが学費の20%(上限10万円)を補助してくれる「教育訓練給付制度」というものがあります。

 このように、直接、間接のさまざまな顧客層の目を意識して、サービスを開発・提供しなければならないところに教育業界の1つの難しさがあります。

教育業における組織の使命は何か

 教育業における組織の使命は人材育成です。これは「人材育成というニーズを社会全体が要請しているため」と言えます。福沢諭吉が『学問のすゝめ』の中でその重要性を説いたように、人が育つことは社会全体が存続する上で不可欠なことなのです。

 しかし、「人材育成」と言っても、商売のための単なる大義名分にしてしまっている例も少なからず見受けられるのが現実です。例えば、資格取得講座や英会話教材などの中には、詐欺まがいの悪質なものも存在しています。“人づくりによって社会を発展させる、国をつくる”といった崇高な理念によって自らを厳しく律し、高品質の教育サービスを、可能な限りリーズナブルなコストで提供することが、教育業者には常に望まれているのです。

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