
ビジネスのスピードや多様化が求められる今、「現状のERPでは変化に追いつけない」と感じる方が増えています。そんな悩みに応えるのが「コンポーザブルERP」という新しい選択肢です。必要な機能だけを自由に組み合わせられるため、自社の業務や成長戦略に合わせて柔軟にシステムを作り変えることができるのが特徴です。従来型ERPでは難しかった現場ごとの最適化やコスト削減、スピーディーな業務改善も実現しやすくなります。
この記事では、従来のERPとは何が違うのか、コンポーザブルERPが注目される背景やメリット、導入時の注意点、導入ステップまで解説します。
なぜERPおよびクラウド型製品の需要が高まっているのでしょう。本記事では、世界および日本におけるERP製品のシェア率と市場規模、導入のビジネスメリットから、あなたの会社に向くクラウド型ERP製品選びのポイントを詳しく解説します。

目次
コンポーザブルERPが必要とされる理由
ビジネスの成長スピードがますます求められる時代に、多くの企業が「今の基幹システムでは変化に追いつけない。でも大掛かりなシステムなので何かしようにも何もできない」と悩むようになっています。業務プロセスの見直しや新サービスの導入を検討したくても、既存のERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)では、改修のたびに多大な時間やコストがかかってしまう。そんな状況を打破する新たな選択肢が「コンポーザブルERP」です。
コンポーザブルERPは、従来型ERPに対して必要な機能をコンポーネント単位で組み合わせて自社に合わせてカスタマイズできる仕組みで設計されています。コンポーザブル(Composable)」とは、「構成可能な」「組み合わせ可能な」という意味です。機能、あるいは業務・工程単位で、ビジネスの成長や変化に素早く対応したいシーンに対応できることを大きな特徴に据えます。
- 従来型ERPの課題解決が期待されている
- デジタル変革(DX)の進展に欠かせない柔軟性がある
従来型ERPの課題解決が期待されている
従来のERPは、会計や人事、生産、販売などの業務機能を1つのシステムでカバーする「一体型パッケージ」が主流でした。
この仕組みは情報を一元管理し、業務の標準化には役立ちましたが、その反面で次のような課題がありました。
- カスタマイズやアップデートのたびに大きなコストや工数が必要になる
- 一部の機能を変更したいだけでも、システム全体に影響が出てしまう
- 外部ツールや新しいサービスとの連携が進めにくい
- 特定ベンダーの技術や製品に縛られる「ベンダーロックイン」が起こりやすい
- システム障害時に影響範囲が広がりやすい
このような背景から、コンポーザブルERPには従来型ERPの課題を乗り越える柔軟性が求められています。
デジタル変革(DX)の進展に欠かせない柔軟性がある
DX(デジタルトランスフォーメーション)が企業の成長戦略で重視されるなか、業務のスピーディーな見直しや新サービスの早期立ち上げ、法改正などへの素早い対応が不可欠になりました。従来型ERPは変化へ迅速に対応できない──、代えたくても、変わりたくてもなかなか対策しにくい硬直的な状況が課題でした。そのため、IT部門が「どうすれば実現できるか」を積極的に考え、スピード感を持って事業部門をサポートできる基盤が必要とされているのです。
この1ページで解決!クラウドERPの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイントを徹底解説
コンポーザブルERPの特徴:必要な機能だけ自由に組み合わせできる
コンポーザブルERPの最大の特徴は、「必要な機能を選んで組み合わせられる」ことです。従来のように全てが一体となったパッケージを導入するのではなく、自社や部門の状況に応じて最適なモジュール(機能単位)やサービスを選び、柔軟に組み合わせることができます。これにより、事業の成長や変化、現場の声に合わせて拡張・変更がしやすくなります。
| 従来型ERP | コンポーザブルERP |
| 一体型・密結合 | モジュール型・疎結合 |
| カスタマイズや拡張が難しい | 追加・入れ替えが容易 |
| 初期投資が大きい | 必要な分だけ投資しやすい |
| ベンダーロックインが起こりやすい | 複数ベンダーの組み合わせも可能 |
モジュール単位で追加・交換ができる
コンポーザブルERPは、会計や人事、販売管理など、必要な機能をモジュール単位で導入できます。いらないモジュールは削除できるので、常に現場に合ったシステム構成を維持できます。例えば、最初は会計と販売管理だけ導入し、後から人事や生産管理の機能を追加する、といった段階的な導入が可能です。
より便利なサービスやツールが見つかった場合は、今まで使っていたモジュールを簡単に交換できるので、常に最適な状態を保ちやすくなります。
マイクロサービスやAPI連携を活用できる
コンポーザブルERPでは、「マイクロサービスアーキテクチャ」という設計手法が活用されています。
これは、一つの大きなシステムではなく、小さく独立した「サービス」を組み合わせて全体を作る方法です。それぞれのサービスは独立して動くため、一部を改良したり、新しいものに入れ替えたりしても他への影響を抑えられます。
API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)は、異なるシステム同士をつなぐ“共通のルール”です。API連携により、他社のサービスや最新のSaaS(クラウド型サービス)とも柔軟につなげられます。
企業は自社の基幹業務と外部サービスを組み合わせ、より効果的な業務基盤を作ることができます。
コンポーザブルERPを導入することで得られるメリット
コンポーザブルERPには、多くのメリットが期待できます。「どんな企業にも使える柔軟な業務基盤」として、幅広いビジネスの現場で価値を発揮します。
- ビジネス変化へ素早く対応できる
- コスト削減につながる
- 運用・保守がしやすい
- イノベーションを取り入れやすくなる
- 業務ごとの最適化と現場主導の改善ができる
ビジネス変化へ素早く対応できる
コンポーザブルERP最大の強みは、ビジネス環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できることです。例えば新しい事業やサービスを始める際や、組織の再編、法改正といった場面でも、必要な機能だけをすばやく追加したり、既存のモジュールを一部だけ入れ替えたりできます。これにより、従来型ERPでは数カ月から年単位ほどかかっていたシステム改修も、コンポーザブルERPであれば数週間という短い期間で実現できるようになります。
コスト削減につながる
従来のERPは、必要のない機能まで一括で購入・導入せざるを得ず、どうしても余計なコストがかかりがちでした。一方、コンポーザブルERPは「本当に必要な機能だけ」を選んで導入できるため、初期投資を抑えやすくなります。運用や保守の面でも、モジュールごとにメンテナンスやアップデートができるので、全体の手間やコストを抑えられます。
さらに、追加で必要な機能については、比較的安価なクラウド型のサービス(SaaS)や外部ツールを活用しやすいため、無駄な開発費用やライセンス料をかけずに業務拡張が進められます。結果として、限られた予算の中でも業務改善を続けやすくなります。
運用・保守がしやすい
モジュール単位で独立して動作するアーキテクチャを採用しているため、日々の運用や保守作業がシンプルになります。特定のモジュールをアップデートしたい場合でも、他の部分に影響を与えることなく実施できるケースが多く、安心してシステムを維持できます。
また、障害やトラブルが発生した場合でも、問題の箇所を素早く特定しやすくなります。被害範囲が限定されるので、全体のシステムが止まってしまうリスクも減らせます。事業継続性を重視したい企業にとっては大きな安心材料となるでしょう。
イノベーションを取り入れやすくなる
新しい技術や外部サービスと連携しやすい/させやすい点も、コンポーザブルERPの大きなメリットです。APIを活用することで、AIやIoT、RPAといった先端テクノロジーも、既存の業務システムに柔軟に組み込めます。
たとえば、RPAと連携すれば、請求データの自動入力や外部サイトからのデータ収集など、今まで手作業だった部分も一気に効率化できます。これにより、現場の業務効率や生産性も大きく高まります。
また、外部サービスとの組み合わせにより、これまでになかった新しい価値やビジネスモデルを生み出す土台も作れます。
業務ごとの最適化と現場主導の改善ができる
コンポーザブルERPは、部門ごとや業務ごとに最適な機能だけを導入できるため、画一的なシステム導入による「妥協」が少なくなります。
例えば、営業部門は自分たちに合った顧客管理ツールを選び、経理部門は会計業務に特化したモジュールを活用するなど、現場に寄り添った業務環境を作ることが可能です。さらに、ノーコードやローコードといったツールとの相性も良く、現場担当者自身が自分たちで小規模なアプリケーションを作ったり、業務フローを改善したりできます。
ERP導入のメリットについては「ERPのメリットは?」もご覧ください。
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コンポーザブルERPの導入計画で注意するポイント
たくさんのメリットを持つコンポーザブルERPですが、導入の際にはいくつか注意点もあります。失敗を避け、スムーズな運用を目指すために、あらかじめ理解しておきましょう。
- システムの複雑化・ブラックボックス化に注意
- 組織内の合意形成・優先順位付けが重要
- セキュリティリスク対策も不可欠
システムの複雑化・ブラックボックス化に注意
コンポーザブルERPは自由度が高い分、組み合わせるモジュールやサービスが多くなると、システムの全体像が把握しづらくなってしまう可能性があります。もし管理やドキュメントが追いつかなくなると、誰も全体像を理解していない「ブラックボックス化」しやすくなります。
このような状況を避けるには、システム全体の構成図や各サービスの仕様、API連携のルールなどを日々最新の状態で保つことが重要です。さらに、新たなサービス導入時には事前に設計・運用ルールを明確にしておく必要があります。
組織内の合意形成・優先順位付けが重要
各部門が自分たちの使いやすいシステムやツールを選びやすいのはメリットですが、全体最適の視点を欠くと、部門ごとにバラバラなシステムが増え、全社でのデータ共有や連携に支障が出ることもあります。
そのため、導入プロジェクトの初期段階で、経営層や関係部門の担当者を交え、目的や優先順位についてしっかり合意形成を図ることが大切です。どの業務課題から取り組むか、どの機能を優先的に導入するかを明確にし、プロジェクトが迷走しないよう管理することが必要です。
セキュリティリスク対策も不可欠
コンポーザブルERPでは、外部サービスやAPI連携が増えるため、従来よりもセキュリティ対策の重要性が高まります。各モジュールやサービスが、自社のセキュリティ基準を満たしているかを事前にしっかり確認しましょう。
また、複数のシステムを横断してユーザーIDやアクセス権限を管理する場合は、ID管理を一元化できる仕組みを用意し、通信の暗号化や多要素認証など、基本的な対策も徹底することが求められます。セキュリティは一つでも弱点があると全体のリスクにつながるため、定期的な監視と見直しが欠かせません。
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コンポーザブルERPの導入ステップ
コンポーザブルERPの導入は、思いつきや流行で始めるのではなく、戦略的に計画を立てて進めることが重要です。ここでは、導入を成功させるために押さえておきたい基本の流れをご紹介します。
- 導入目的と優先順位の明確化
- 現状業務とシステムの課題整理
- 最適なモジュールやサービスの選定
- システム全体の設計・連携方法の検討
- 段階的な実装とテスト、運用体制づくり
導入目的と優先順位の明確化
まず最初に、「なぜERPを刷新したいのか」という導入目的をはっきりさせましょう。業務効率の向上や新規事業の立ち上げなど、目標を具体的に設定し、関係者で共有することが出発点となります。
現状業務とシステムの課題整理
次に、今使っている業務やシステムのどこに課題があるのか、しっかり洗い出しましょう。手間のかかっている作業や、データの不整合など、現場の声をもとに現状を把握します。
最適なモジュールやサービスの選定
導入したい領域や解決したい課題がはっきりしたら、必要な機能を整理し、それに合ったモジュールやクラウドサービス(SaaS)を選びます。ベンダーの信頼性やサポート体制、APIの対応状況もチェックしておきましょう。
システム全体の設計・連携方法の検討
複数のモジュールやサービスをどのように連携させてシステム全体を動かすか、設計図を描くイメージで整理します。データのやり取りやAPI連携のルールなど、細かな部分まで確認しておくことが大切です。
段階的な実装とテスト、運用体制づくり
最後に、一度に全社導入するのではなく、まずは小さな単位から実装とテストを行い、効果や使い勝手を検証します。うまくいけば徐々に範囲を広げ、同時に運用や保守の体制も整えていきます。
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コンポーザブルERPで業務基盤を最適化し、DX推進をより強固なものにしよう
システムを変えることで業務そのものが進化する――そのきっかけがコンポーザブルERPです。
現状のERPや業務基盤に「変化への追随が難しい」「もっと業務ごとに最適化したい」と感じたら、まずは一部の業務領域からスモールスタートで検討を進めてみてはいかがでしょうか。自社の現場の声やビジネスの成長戦略を反映しやすいこの仕組みは、これからのDX推進・業務変革の“切り札”となりえます。
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