
(iStock/B4LLS)
物流業務の高度化・複雑化が進む中、WMS(倉庫管理システム)は在庫管理や入出庫業務を効率化する上で欠かせない存在となっています。企業が安定した供給体制を維持し、顧客満足度を向上させるためには、正確かつリアルタイムな倉庫運営が求められます。その中核を担うのがWMSです。
本記事では、WMSの基本的な仕組みや機能から、AIやIoTなど最新技術との連携による活用法までをわかりやすく解説します。また、導入・運用時に押さえておきたいポイントも紹介し、WMS導入を検討する企業に向けて実践的な情報を提供します。併せて、おすすめのWMS製品(全6製品/2025年6月時点)も厳選してご紹介します。導入の検討材料としてぜひご活用ください。
目次
WMS(倉庫管理システム)とは?
WMS/倉庫管理システム(Warehouse Management System)、日本語で「倉庫管理システム」は、倉庫内の在庫、入出庫、ピッキング、棚卸し、さらにはロケーション(保管スペース)の効率化を行うITプラットフォームです。リアルタイムで在庫の移動状況を把握し、物流のプロセス全体を最適に制御します。
導入の主な効果として、ピッキングエラーの大幅削減や在庫不足・過剰の予防、出荷スピードの向上などが挙げられます。WMSは、正確な作業指示や在庫自動更新、バーコード/RFID連携によって、ヒューマンエラーを抑制し現場の効率を高める役割を担います。
WMS/倉庫管理システムの主要機能
WMS(倉庫管理システム)は、倉庫内の在庫管理・物流業務を最適化するために設計されたITソリューションです。本章では、WMSが備える代表的な機能を解説します。
- リアルタイム在庫追跡機能
- 入出庫管理機能
- ピッキング支援機能
- ロケーション管理機能
- 棚卸し支援機能
- トレーサビリティ管理機能
- マスタデータ管理機能
リアルタイム在庫追跡機能
WMSの中核機能の1つが「リアルタイム在庫追跡」です。商品の入荷・出荷、移動や棚卸しといった動きをリアルタイムで反映し、倉庫内の在庫状況を常に最新に保つことができます。この機能により、在庫の過不足を防ぎ、正確な在庫管理が可能になります。
入出庫管理機能
入荷予定の登録、検品、ロケーション(棚)への配置、出荷指示・ピッキング・梱包・出荷まで、すべての入出庫業務を一元管理します。作業指示書のデジタル化やバーコード/QRコード対応により、ミスを削減し、作業のスピードと正確性を高めます。
ピッキング支援機能
WMSは、作業者がどの順序でどの棚から商品を取り出すべきかを最適化する「ピッキングルート」機能を持ちます。ハンディターミナルや音声ガイドと連動することで、誤出荷のリスクを低減し、ピッキング効率を向上させます。
ロケーション管理機能
倉庫内の棚位置(ロケーション)ごとに在庫を管理し、商品がどこにあるかを即座に特定できるようにします。WMSは、ABC分析や動線最適化に基づいて保管位置の自動最適化を行うことも可能です。
棚卸し支援機能
バーコードリーダーやハンディ端末と連携し、棚卸し業務を効率化します。定期棚卸しや循環棚卸しに対応しており、作業者による手入力ミスを抑え、棚卸し精度を向上させます。
トレーサビリティ管理機能
ロット番号やシリアル番号による履歴管理を行い、商品がいつ・どこから入荷し、どこに保管され、いつ出荷されたのかを追跡できます。食品や医薬品、精密部品などの分野では、特に重要な機能です。
マスタデータ管理機能
商品マスタ、取引先マスタ、ロケーションマスタなどの管理機能を備えており、WMS全体の運用を支える基本情報を一元的に管理できます。
倉庫管理システムのメリット
WMSの導入は、企業に多くのメリットをもたらします。以下は、WMSの主なメリットです。
- コスト削減を実現する
- 顧客満足度の向上が期待できる
- ビジネスの柔軟性を強化できる
- 競争力を強化できる
コスト削減を実現する
WMSは、作業効率の向上と在庫精度の改善により、コスト削減を実現します。例えば、ピッキング作業の効率化により人件費を削減できます。
顧客満足度の向上が期待できる
リアルタイムでの在庫追跡と適切な在庫管理により、納期遅延のリスクを低減し、顧客満足度を向上させます。
ビジネスの柔軟性を強化できる
WMSは、変動する市場の需要に迅速に対応するための柔軟性を提供します。これにより、サプライチェーン全体の最適化を図ることができます。
競争力を強化できる
WMSは、物流業務の効率化とコスト削減により、企業の競争力を強化する役割を果たします。これにより、企業は市場での競争優位を維持することが可能です。
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倉庫管理システム(WMS)導入の意義
WMSは、企業の物流効率を大きく高めることで在庫精度や納期管理の精度を高めます。正確な在庫情報を提供することで、適切なタイミングでの補充や出荷が可能となり、在庫不足や過剰在庫といった問題を解消します。また、納期遅延のリスクを低減し、顧客満足度を向上させることが期待されます。
さらに、最新のWMSはクラウドサービスやAI、機械学習などの先端技術と連携しており、ますます高機能化しています。これにより、企業は変動する市場の需要に迅速に対応し、サプライチェーン全体の最適化を図ることができます。
倉庫管理システム(WMS)の主要な種類
WMSにはいくつかの種類があります。ここでは、主要な種類とその違いを説明します。
オンプレミス型とクラウド型
- オンプレミス型:自社サーバへシステムを構築し、導入するタイプ。初期費用は高いものの、高度なカスタマイズとデータの完全な所有が可能。大規模な倉庫運営や特定のニーズに合わせたカスタマイズが必要な場合に適している。しかし設計から導入、運用、メンテナンスやアップデートには一定以上の高度な知識と専門のITスタッフ、それらのコストが必要となる
- クラウド型:月額料金制で初期費用が低く、迅速な導入が可能です。中小企業や変動するビジネス環境に柔軟に対応したい企業に適している。常に最新バージョンの機能を利用でき、インフラ管理も含めてシステム運用をベンダー(製品のサービス事業者)へ多くを委ねることができる一方で、データは外部(社外の)サーバへ保管されることになることから、データの所有に関しては慎重な考慮が必要となる
フル機能型とモジュール型
- フル機能型: 在庫管理から出荷管理、分析機能までを含む包括的な機能を提供します。大規模な倉庫運営に適しており、すべてのプロセスを一元管理する必要がある企業に効果的
- モジュール型: 基本機能から低価格にスタートしつつ、必要に応じて追加機能を取り入れていける柔軟性がある。小規模な企業や特定の業務に特化した運営に適しており、段階的に機能を拡張できる
倉庫管理システム(WMS)の選び方と導入前のチェックリスト
WMSを選定する際には、以下のポイントを考慮することが重要です。
- 1.企業のニーズとリソース
- 2.予算とコストパフォーマンス
- 3.業務の複雑さと拡張性
- 4.システムの連携性
- 5.社員トレーニングとサポート体制
- 企業のニーズとリソース: 高いカスタマイズ性とデータの完全保有を求めるならオンプレミス型、初期投資を抑えつつ迅速な導入を求めるならクラウド型が適しています
- 予算とコストパフォーマンス: 初期費用とランニングコストを把握し、コスト対効果を見極めます
- 業務の複雑さと拡張性: 必要な機能の充足度と、将来的な事業拡大に備えた拡張性を確認します
- システムの連携性: 既存の基幹システムや他の業務システムとどのように連携するかを確認します.
- 社員トレーニングとサポート体制: 操作方法や運用ルールの徹底を図り、サポート体制が充実しているベンダーを選びます
導入前には、システム要件、データ移行の手順、社員トレーニング計画、サポート体制の確認などを含むチェックリストを作成し、準備を進めることでスムーズなシステム導入を実現できます。
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