販売管理とは、「誰が」「いつ」「何を」「いくらで」売り、代金を受け取るかといった、「モノ」と「お金」のすべての流れを、受注から納品・請求・入金まで一貫して可視化・管理する業務と仕組みを指します。従来は紙帳票やExcelでの運用が中心で、たとえば営業担当Aさんにしか分からない転記作業や、別部署との情報にズレが生じるケースも多く見られました。その結果、転記ミスや営業実績の把握遅れが起き、経営判断にも影響が及ぶことが少なくありません。
こうした課題を根本から解決するのが「販売管理システム」です。見積・受注・売上・請求・入金消込といった基本機能を核に、在庫・購買・顧客管理、売上分析などの拡張機能も備えます。クラウド型なら初期費用を抑え、スマホや外出先からも利用可能。社内業務の見える化とリアルタイム分析により、
- 経営層は月次売上や在庫状況を即時把握できる
- 営業担当はスマホで外出先から即時注文処理できる
- 経理担当は入金消込を自動化できる
など、各部門の負担を大幅に軽減できます。
この記事では、販売管理システムの注目機能(見積・受注・請求・入金・在庫・分析)と導入メリットを整理し、製品を選ぶ際のポイントと共におすすめの販売管理システム(全34製品/2025年6月時点)を厳選して紹介します。
機能で比較「販売管理システム」おすすめ製品一覧
目次
販売管理システムの基礎知識
企業が商品やサービスを提供する際、「受注から納品、売上処理、請求・入金管理」に至るまでのプロセス全体を統合的に管理する業務が販売管理です。この業務は、売上データの正確な把握や在庫管理、部門間の連携に不可欠であり、また、手作業の工程ではミスや遅延が発生しやすいポイントでもあります。
こうした課題を解決する手段として活用されるのが「販売管理システム」です。その基本的な役割と機能、さらに他の業務システムとの連携も含めて深掘りして解説します。
販売管理システムとは?
販売管理システムとは、見積作成から受注登録、出荷処理、売上計上、請求・入金処理まで、販売業務の一連の流れを一元管理するITシステムです。さらに、商品の入出庫状況や在庫の把握、顧客情報の管理などもシステム上で行えるよう設計されています。
販売管理業務は、顧客対応・在庫・生産・会計など多岐にわたる部門と密接に連動しているため、販売管理システムはこれらの業務システムとスムーズに連携できることが重要です。最近では、クラウド型で提供される製品も多く、中堅・中小企業でも導入しやすくなっています。
販売管理システムと連携できるシステムの例
販売管理システムは、以下のような業務システムとデータ連携することで、企業全体の業務効率化や情報の一元管理を実現します。
連携できるシステムの例 | 概要 |
顧客管理システム(CRM) | 顧客情報・問い合わせ履歴・取引履歴を管理し、営業活動の最適化に活用 |
生産管理システム | 生産計画に基づく工程や原材料の使用状況を管理し、在庫・出荷と連携 |
財務会計システム | 販売データをもとにした仕訳生成や財務諸表の作成を支援 |
物流管理システム | 商品の入出庫、配送状況、在庫移動などの物流情報を管理 |
契約管理システム | 契約内容・請求タイミング・更新日管理など、販売プロセスと連携 |
顧客管理システム(CRM)との連携
CRM(顧客管理システム)は、企業の業種・担当者情報、商談履歴、過去の購入実績などを一元管理し、営業戦略の立案や顧客対応の精度向上に貢献するシステムです。
販売管理システムとは、売上記録や受注情報を連携し、商談から請求・回収までをスムーズに結びつけます。
生産管理システムとの連携
生産管理システムは、原材料の調達、生産工程の進捗管理、製品の完成・出荷までを管理します。
販売管理システムと連携することで、受注情報をもとにした適正な生産指示が可能となり、在庫過多や欠品のリスクを軽減できます。
財務会計システムとの連携
財務会計システムは、仕訳・勘定処理・決算資料の作成を担う業務基盤です。
販売管理システムから出力される売上・入金・仕入データと連携することで、手入力を削減し、会計処理の精度とスピードを高められます。
物流管理システムとの連携
物流管理システムは、商品の入出荷・在庫移動・配送追跡などを統括するシステムです。
販売管理システムと連動することで出荷指示や在庫状況がリアルタイムで共有され、正確な納期管理と配送の可視化を実現できます。
契約管理システムとの連携
契約管理/帳票管理システムは、契約書の作成・締結・保管に加え、契約期間の管理や自動更新の設定などを行います。
販売管理システムと連携することで、契約条件に基づいた請求処理や支払タイミングの自動化が可能になります。
販売管理システムの主な機能
販売管理システムには、業務の効率化とデータの一元管理を支える多様な機能が搭載されています。ここでは、特に中堅〜中小企業にとって重要度の高い「販売管理」「在庫管理」「購買管理」の3機能について、役割と特徴を解説します。
販売管理システムの機能 | 概要 |
販売管理 | 見積作成から受注・出荷・売上・請求・入金までの販売プロセスを管理 |
在庫管理 | 商品・原材料の入出庫と在庫数をリアルタイムで把握・記録 |
購買管理 | 発注・仕入・支払などの購買業務を可視化し、適切なタイミングでの調達を支援 |
販売管理:取引の全体像を一元管理
販売管理機能は、顧客への見積作成から受注登録、商品やサービスの出荷、売上計上、請求処理、そして入金確認に至るまで、販売活動全体を一貫して管理します。
すべての取引履歴がデータ化されることで、売上実績の集計や傾向分析が容易になり、経営判断に活用できる情報基盤を構築できます。さらに、他部門との連携が必要な業務も、リアルタイムで情報共有が可能となります。
在庫管理:精度の高い在庫把握を実現
在庫管理機能は、商品や原材料が倉庫に入庫された時点から、出荷や社内使用によって出庫されるまでの全プロセスを記録・管理します。
在庫数はシステム上で常に最新状態に更新されるため、営業部門・調達部門・生産部門など関連部署が共通の情報をもとに業務を遂行できます。欠品や過剰在庫を防ぎ、在庫回転率の最適化にもつながります。
購買管理:調達業務を見える化し、安定供給を支援
購買管理機能は、商品や原材料の発注・仕入・支払に関わる一連のプロセスを管理します。発注先とのやりとり、納期管理、仕入予定などを可視化することで、調達のタイミングやコスト管理を最適化できます。
販売管理と連携することで、販売見込みに応じた調達計画が立てやすくなり、事業全体のバランスの取れた運営に貢献します。
販売管理システムの主な種類
販売管理システムは、対応業種や導入目的に応じて複数のタイプに分類されます。自社の業務プロセスや成長フェーズに合った種類を選ぶことで、導入効果を最大化できます。代表的な4タイプの特徴は以下の通りです。
販売管理システムの種類 | 概要 |
汎用型 | 業種を問わず、基本的な販売・在庫・請求業務に幅広く対応 |
複数業種対応型 | 特定業種向けの機能パッケージを選択し、柔軟に構成可能 |
特定業種特化型 | 業界固有の商習慣やワークフローに特化して対応 |
販売管理特化型 | 小規模事業やサービス業向け。在庫管理を含まず低コストで運用可能 |
汎用型:幅広い業種に対応するスタンダードタイプ
汎用型は、製造業・卸売業・小売業・IT業など業種を問わず活用できる汎用的なシステムです。見積・受注・請求・在庫管理など、標準的な販売業務をカバーしつつ、必要な機能を選択的に利用できます。初期コストを抑えながら導入したい企業に適しています。
複数業種対応型:業種ごとのパッケージも用意
複数業種対応型は、特定業界向けに最適化された機能パッケージが複数用意されており、自社の業務に合わせて構成を柔軟にカスタマイズできるタイプです。
たとえば、食品業向けの賞味期限管理や、建設業向けの現場別原価管理など、業種別のニーズにも対応します。導入までのスピードも比較的早く、業界標準の業務フローにすぐ対応できる点がメリットです。
特定業種特化型:業界特有の商慣習に深く対応
特定業種特化型は、業界ごとの商習慣や法令対応、独自の取引フローなどに最適化されたシステムです。
たとえば医薬品業界のロット・製造番号管理、建設業界の出来高請求対応など、一般的な汎用システムではカバーしきれない要件にも対応する機能を持つ/設計されている製品が多いです。業種特有の管理体制や社内プロセスがある企業にとって特に親和性の高い選択肢です。
販売管理特化型:シンプル構成型
販売管理特化型は、在庫を持たないサービス業や小規模事業者を対象とした簡易型システムです。受注・請求・入金といった販売管理の機能に絞ることでシンプルな操作性で運用負荷が低く、コストも抑えられるメリットがあります。
初めて販売管理システムを導入する企業や、ミニマムな運用を求める事業者にすすめられます。
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販売管理システムの導入の主なメリット
販売管理システムを導入することで得られるメリットをご紹介します。
- 業務の負担を軽減できる
- 情報を一元化できる
- データを活用できる
業務の負担を軽減できる
販売管理システムを導入すれば、従来、手作業だった入力や書類作成の大半を自動化できます。作業の手間を大幅に減らせるだけでなく、入力ミスや記録漏れといったトラブルの防止にも繋がります。
情報を一元化できる
販売管理システムは、商品や原材料の販売や仕入れ、それにともなう在庫の変動をシステム上で一元管理できます。販売や仕入に関係するすべての情報が部門をまたいで集約されるため、正確な情報の共有がタイムラグなくできるようになります。
データを活用できる
システムに集約された商品や原材料の販売に関するデータは、経営分析や販売計画の立案などに活用しやすくなります。受注や販売数の予測から仕入数を算出するなど、省コスト化につながるデータ分析が可能です。
販売管理システムを選ぶポイントと導入時の注意点
販売管理システムは、自社の業務内容や課題に応じて最適な製品を選ぶことが重要です。ここでは、選定時のチェックポイントと、スムーズに導入を進めるための注意点を紹介します。
販売管理システムを選ぶ3つのポイント
- 自社業種・業態に適した機能があるか
- 既存システムと連携できるか
- 提供形態(クラウド型 or オンプレミス型)
自社業種・業態に適した機能があるか
すべての販売管理システムが、どの企業にも適しているとは限りません。例えば製造業なら生産連携や在庫のロット管理、サービス業なら請求管理に強い製品など、自社の業種や業務特性にフィットした機能を備えたシステムを選ぶことが最初のポイントです。
必要な機能が過不足なく備わっているかを見極め、特定業種対応型や業務特化型の製品も候補に入れましょう。
既存システムと連携できるか
すでに財務会計システムやCRM、生産管理ツールなどを導入している場合は、それらとスムーズに連携できる販売管理システムを選定するのが賢明です。
CSVインポートやAPI連携など、データの互換性や連携方式を確認し、業務間の情報断絶を防ぎましょう。既存の仕組みを活かしながら、全体最適を図ることが可能になります。
提供形態(クラウド型 or オンプレミス型)
販売管理システムには、大きく分けて以下2つの主要な提供形態があります。それぞれに特徴と向き不向きがあるため、自社のIT体制や導入目的に応じて選びましょう。
クラウド型(SaaS) | ベンダーがインターネット経由で提供。初期費用が抑えられ、短期間で導入可能。リモートワーク対応や自動アップデート、サブスク型料金体系が主流。小〜中規模事業や分散拠点に最適。 |
オンプレミス型 | 自社サーバに構築。業務に合わせて高度なカスタマイズが可能。導入コストや管理工数は増えるが、社内運用ルールが厳しい業界や大企業に向いている。パッケージソフトのインストール型もこれに含まれる。 |
現在はクラウド型が主流であり、特にSaaS型販売管理ツールは拡張性・保守性・コスト予測の面でメリットが多く、導入のハードルも低い点が支持されています。
販売管理システム導入時の注意点
販売管理システムを導入する際は、単にツールを導入するだけでなく、「現場が無理なく使いこなせる状態」を目指すことが重要です。
- 現場の混乱を防ぐ段階的導入を
- 社内の理解と教育を並行して進める
現場の混乱を防ぐ段階的導入を
手作業に慣れた現場にいきなりシステムを導入すると、オペレーションの混乱や抵抗感が生まれる可能性があります。まずは無料トライアルやデモ環境で使用感を確認し、徐々に業務へ馴染ませる段階的なアプローチがおすすめです。
社内の理解と教育を並行して進める
システムの活用が業務効率化につながることを現場にも理解してもらうために、導入前の説明会や操作トレーニングの実施は欠かせません。操作マニュアルの整備やQ&A対応窓口を用意しておくと、定着がよりスムーズになります。
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