基地局カバーは半径70キロまで可能――イー・アクセスが推すTD-SCDMA方式
現在総務省がおこなっているIMT-2000高度化方策作業班において、イー・アクセスは米Navini Networks社の開発した「TD-SCDMA(MC)」方式を提案している。
既報のとおり、イー・アクセスはこのTD-SCDMA(MC)方式で定額のモバイルブロードバンドサービスを提供したい意向を明らかにしているが、今回このTD-SCDMA(MC)の生みの親ともいうべきNavini社の執行役副社長兼CTOのDr. Guanghan Xu氏と、イー・アクセス新規事業企画本部の諸橋知雄氏にお話をうかがった。
他の「高度化」方式との違い
TD-SCDMA(MC)が、TDD方式でこれまで注目されていた「TD-CDMA」と異なるのは、大きく分けて「スマートアンテナの採用」「マルチキャリア化」「上り通信の同期」の3点。
このうち「スマートアンテナ」というのは、原理的にはイージス護衛艦に搭載されている「フェイズドアレイアンテナ」と同様のもの。複数のアンテナユニットの入出力を集めてデジタル処理し、端末のある方向を狙って電波を送受信することができる。通常のアンテナの全方位への発信と異なり、干渉を抑えることができる。“新方式のアンテナ”ということで気になるコストについては、「スマートアンテナということでどんなに高いかと思っていたが、ビックリするほど安い」(諸橋氏)ということで、スマートアンテナを採用したことでTD-SCDMA(MC)がコスト的に不利になることはないようだ。
マルチキャリア化は、使用する帯域をさらに分割して使用する方法。方式名の後ろに付いている「(MC)」はマルチキャリアの略だ。マルチキャリアの採用により、マルチパスによる影響を抑えることで通信速度を安定させることができるという。
無線通信では、電波がビルや山などで反射すると、基地局と端末の間に複数の電波の経路(パス)ができてしまう。この「マルチパス」が起きると、それぞれの経路の距離が異なることから、一つの信号がちょっとずつ時間のずれた状態でやりとりされるため、無線通信の品質に影響が出る。テレビのゴーストと同じ現象だ。
実際には、マルチパスが発生すると一部の周波数帯に影響が出るのだが、マルチキャリア化することによって、影響を受けない帯域だけ使って通信を続行できるため、シングルキャリア(帯域全体を分割せずに使う方式)よりも安定性が確保できるという原理。実際には、TD-SCDMA(MC)では、5MHzの帯域を10に分割して使用している。
広いカバーエリアと柔軟なサービス
Naviniによれば、基地局のエリア半径は48kmまで可能で、アメリカではプロトコルを調整して70kmでのサービスを行った経験もあるという。Xu氏によればTD-CDMA方式は半径7km程度ということなので、TD-SCDMA(MC)とTD-CDMAでは1基地局のカバーエリアには面積的に50倍近い開きがあることになる。基地局あたりのカバーエリアが広ければ、人口密集地以外での導入コストが引き下げられるため、エリアの拡大はしやすそうだ。
また、TD-SCDMA(MC)はTDD(時分割多重)方式のため、上り帯域と下り帯域の通信速度比の変更がしやすいというメリットもある(上りと下りに割り当てる時間配分を変えればいい)。このためたとえば、ビジネス時間帯は「上り下り1Mbps(上りと下りを1:1に設定)」に、夕方以降はホームユースに向いた下り重視の「下り1.5M/上り512k(下りと上りを3:1に設定)」といったサービスも、基地局側の設定だけで実現可能だという。
総務省のIMT-2000高度化方策作業班でどのような方向性が示されるかはわからないが、今後のモバイルブロードバンドの動向は要注目といえそうだ。
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
防衛省の「クーラー300台」投稿動画でビックカメラのトラックが注目を集める 同社「販売用の在庫を迅速に提供」
-
2
「文スト」スマホゲーム、きょう告知→あす終了 突然のサ終にユーザー混乱 運営元の廃業で
-
3
ドコモ、ahamoを30→40GBに増量 8月1日から 料金据え置きの新キャンペーン
-
4
“ダサい”不評の「ドコモの銀行」、従来のアプリアイコン選択可能に 「ご意見・ご要望も踏まえ」
-
5
イオンモール熊本のドローン捜索、状況を現場キーマンに聞いた 撮影を阻んだのは……
-
6
「楽天ドライブ」アプリから「データ漏洩」「ハッキングした」通知? 運営元「緊急調査中」「通知を開かないで」
-
7
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
8
タムロン、ソニーからの買収提案認める 特別委員会を設置して検討
-
9
熊本「通れた道」マップ、トヨタが公開 ホンダも「通行実績情報マップ」
-
10
光学25倍ズームのソニー「RX10 V」はもう“レンズ一体型α” 1台で何でも撮れそうな万能感に浸れるぞ
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR