麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」
2016年はDACの当たり年! 麻倉怜士の「デジタルトップ10」(前編)(1/4 ページ)
年に1度の総決算、「デジタルトップ10」の季節が今年もやってきた。オーディオもビジュアルもさまざまな展開を見せた2016年だが、麻倉怜士氏にとって今年はDACが豊作だったようだ。そんな2016年の麻倉怜士的10大ニュース(+α)を、今回も前編、中編、後編の大ボリュームでお届けする。まず前編は第10位から第6位まで。麻倉氏が持つ業界の“閻魔帳”には、果たしてこの1年でどのようなトピックがつづられたのだろうか。
麻倉氏:毎年恒例のデジタル業界カウントダウンを今年もやりましょう。年の瀬は各種メディアが一年の総決算としてグランプリを発表したりカウントダウンしたりしますが、それは複数の評者による平均値の高さを並べる、時代を表す公平なものです。このカウントダウンはそのテのものとは違う、私の主観的なインプレッションによる極私的ランキングになります。2004年10月から始まった本連載ですが、年末のデジタルトップテンは2005年からなので数えて今回で11回目です。
――ジャンルを問わない無差別級カウントダウン、それでは始めましょう。
10位:ティアック「NEW VINTAGEコンセプト」
麻倉氏:ではここから本題に入りましょう。第10位に推すのはティアックのNEW VINTAGEコンセプトです。コレに関しては以前に詳述しているのであまり細かく話しませんが、ポイントは新しいジャンルを創造することで新規ユーザーを獲得するという点です。
保守的なイメージのあるティアックは現在、リブランディングで会社の価値を高めている最中であり、先進的なイメージを構築しているところです。その一環として従来にはなかったカテゴリーを提案したのが、依然取り上げたCD、ネットワーク、アンプが一体となったオールインワンコンポなのです。
麻倉氏:従来もCD+アンプやネットワーク+アンプという組み合わせはないわけではなかったですが、今回で重要なのはズバリ音質。そのためにハイエンドブランドであるエソテリックの技術やノウハウを上手く取り入れました。ティアックグループの中でもエソテリックブランドは音質的にもイメージ的にも抜群に高いです。私的には「音の余韻に美がある」といったところでしょうか。
――名前だけもってくる安直なブランド戦略とは一線を画すというのが極めて重要な点ですね、ティアックの本気度合いが伺えます。
麻倉氏:音を突き詰めるオーディオマニアは必然的に単体コンポーネントへ向かい、業界はそういったニーズを満たす製品を頑張って開発してきました。ですが「音楽は大好きだけどオーディオ趣味はあんまり」というミュージックラバーに対してのアプローチがおろそかになってしまい、利便性を無視して細分化し、徹底的に音を突き詰めるか、利便性のために音を妥協するかという二者択一をユーザーに迫っていたのです。システムコンポ的な取り回しの良さと、高級オーディオ的な音の良さという2つを兼ね備えるものはありませんでした。
これに関してはティアックの先進的な新しい価値追及もさることながら、私はこのジャンルは業界全体で取り組むべきであるとして評価をしました。つまりオーディオファイラーではない音楽ファンのための受け皿が、今までまったくなかったのです。このニーズに一番近い製品に「Aura note」がありましたが、ハイレゾ黎明(れいめい)期の2006年に出てきたこの製品はちょっと古くなってしまいました。しかし海外、特に英国のアンプメーカーではオールインワンが定番ジャンルの1つで、きちっとしたアンプを持っているところでもオールインワンを真面目に作っています。そういう意味では音楽ファンに向けた、デザイン・操作性・音という三拍子そろったものは求められているのではと分析できるのです。
――文化的に見てもイギリスでこのジャンルが支持されているというのは重要です。産業革命に乗って世界の覇者となったイギリスは、戦後の大英帝国衰退に伴って「英国とは何だろう」という哲学的な問いにさらされ続け、文化の重要性を深く受けとめてきました。その中でビートルズが生まれ、毎年9月のBBC PROMSラストナイトでは「威風堂々」をはじめとする数々の愛国歌が大合唱されるなど、音楽が自分たちの拠り所となることを理解しています。そんなイギリスで重宝されるジャンルですから、やはり音楽文化にとっても重要であることが伺い知れますね
麻倉氏:ビックカメラなんかで「ネットワークオーディオには興味があるけれど、ITリテラシーを求められそうでちょっとハードルが高い」という声を多く聞きます。やはり良い音が思ったように簡単に再生できるというのが必要なのです。それをカタチにしたのがティアックのNEW VINTAGEなのです。
このネーミングもなかなか面白いですね。ティアックそのものがヴィンテージブランドで、昔からの技術やイメージがありますが、それだけでなく「新しい技術を活かしながら新しい価値を創っていこう」というところで、これは是非応援したいと評価をしました。まだ市場には出てもいないですが、このプロジェクトを発端としたジャンルが今後の音楽の拠り所となる事を大きく期待したいです。
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